堤防の工事の差し入れに握り飯を握っていたら屋敷を襲撃されました
前世米作で一番困ったのは夏から秋にかけてやってくる台風だ。
台風の時は人の被害も大変だけど、稲の被害も大変なのだ。
風で稲が倒れてしまったら、すぐに起こさないといけないし、倒れたままだと青米・茶米・死米が増えてしまう。
更に洪水とか起こってしまったらそれこそ大変だ。
下手したら稲が全滅してしまう。
そうならないために、色々と動かないといけないのよ。
そして、目の前に現れた不吉な雲。
絶対に台風並みに碌な事をしてくれないと思う。
私達は取りあえず、慌てて屋敷に帰った。
ざあーーーーー
家に入った途端に、突風が吹いた。
ダダン
窓ガラスも大きく揺れた。
いや、屋敷自体が大きく揺れる。
ピカピカドシーン
「キャー!」
私は思わずお兄様にしがみついた。
雷だ。
雷は苦手だ。
「アイン、大丈夫だ」
お兄様が私を抱きしめてくれた。
私はほっとする。
今度は大粒の雨が降り出した。
ザーーーー
と土砂降りになる。
風もビュービュー言いだした。
「オーガスト様。ここに居られましたか?」
リビングで外を見ていたら、扉を開けてバージルが入ってきた。
「各部隊から5名を出して堤防と田んぼの警戒に当たらせます」
「そこは任せる」
お兄様が頷く。
「オーガスト様。堤防の増強工事がすんでおりませんが」
バージルが指摘してくれた。
第七大隊の担当箇所の土嚢がまだ積み上っていないのよ。
第七大隊がサボっていたのではない。第七は今外に出稼ぎに行ってくれていて、その穴を第八が埋めることになっていたんだけど、第八は他に新たな開墾も手伝っていて、ちょっと遅くなっていたのよ。
「よし、第八に直ちに増強工事を進めさせろ。でもまだほとんど終わっていないだろう。俺も手伝いに行く」
お兄様が言い出してくれた。
「じゃあ私も行くわ」
領主だから当然そういう時は行かないとと私は思ったのに、
「いや、アインは危険だろう」
お兄様が逡巡した後に首を振った。
「でも」
私は不安そうな顔をした。
「大丈夫だ、アイン。このような時に襲ってくる不届き者はいないはずだ」
お兄様が大きく頷いてくれたんだけど……
ええええ! まだ私って王家に狙われているの?
お兄様のそばにいるから水竜以降は気にしたこともなかったんだけど……
私はメリンダの思い出したくない顔を思い出していた。
ついでにメリンダがしなを作って大きな胸をお兄様に押しつけているところを思い出して眉を逆立てた。
「しかし、この天気では王家の陰が入ってくるのを完全には止められませんぞ」
バージルまで言いだしてくれた。
外は突風が吹いて大雨が降っているのが見えた。
こんな中に入ってくる者がいるとは思えなかったけれど、陰なら判らない。
「ドラの助」
「はっ、御前に」
いきなりドラちゃんがお兄様の前に現れて、バージルはぎょっとしていた。
「アインを守れ」
「外部からの侵入者を防がなくてよろしいので」
「来ても少数だろう。目的はアインだ。アインさえ守れれば問題ない」
お兄様はそう断言してくれた。
「ええ、でも、私はこの地の領主なのに」
私が文句を言うと
「領主の兄が動くのだ。問題はあるまい。外は危険だからお前は中を守れ。良いな」
そう言うとお兄様は慌ててバージル等と出て行った。
私は一人でリビングに残された。
ここに一人でいても心配だ。
心配なんてしていても何にもならない。
こんな時はどうすれば良い?
そうだわ。
前世はこういう時に女は握り飯の差し入れをしたんだ。
「セイラ、厨房に行くわよ」
「えっ、こんな時にお腹が空かれたんですか?」
セイラがとんでもないことを言い出したんだけど……
どれだけ私が食い意地が張っていると思っているのよ!
「何言っているのよ。おにぎり握ってお兄様達に差しるのよ。お兄様のことだから、飲まず食わずでずっと働いていそうじゃ無い」
「ああ、なるほど」
セイラは頷いてくれたが、公爵家の訓練は1日飲まず食わずの行進訓練も平気でやるそうだ。
サバイバル訓練なんて悲惨だとホレスが笑って教えてくれたが、腹が減っては戦も出来ないはずだ。
「行軍食があるはずですが……」
セバスはいい顔をしなかったが、行軍食ってあの不味い乾パンだろう。私はあれは嫌だ。たまに食べるのは良いけれど……
グスタフにその話をしたら、
「判りました。取りあえず米を炊けば良いのですな。幸いなことにアデライン様用の米が大量にまだありますから」
早速 料理長達が10キロたける大鍋もってきてくれて、3台の大鍋で炊き出してくれた。
炊けたら、次の大鍋をセットして炊き出した。人数が多いから炊くのも大変だ。
その炊けたご飯を蒸らし終わると木の入れ物に移す
それからまず私が握り飯の握り方を示した。
まず両手を水に入れて、塩を手に付けるとご飯を大きなしゃもじにとって手に載せて、
「熱い!」
思わずご飯を落としそうになった。
「そうですか?」
見よう見まねでマネしているセイラは平気な顔をしているんだけど……
ええええ!
体のつくりが違うの?
それとも私がか弱すぎるんだろうか……
そのままふうふう言って冷ますと、丸く握る。
でも、何故か私の握り飯は歪だった。
セイラの握り飯はまん丸なんだけど……何故に?
「アデライン様の性格が歪んでいらっしゃるのでは」
セイラはとんでもないことを言ってくれるんだけど……絶対にそれはない!
私の方がセイラより絶対に単純だし、素直なのに!
それに海苔を巻いて、おにぎり二個ワンセットでそれに漬物と一緒にして笹の葉で捲くのよ。
それを背嚢の中に入れていった。
ある程度出来たら第一陣として、お兄様のところに持っていくことにした。
「いや、アデライン様。今外に出られるのは危険ですから」
可愛いレインコースに身を包んだ私を見て、セバスが良い顔をしなかったんだけど……
ドカーン!
そこで屋敷のどこかで爆発音がしたのだ。
「きゃーーーー」
悲鳴が聞こえる。
「敵襲!」
大声が聞こえる。
やばい。
お兄様も騎士団も大半は工事現場にいる!
私は真っ青になった。
絶体絶命のアインの運命やいかに?
続きは今夜です








