聖女視点 農民を動員して米作りをすることにしました
もうこうなったら絶対に生意気な宰相の鼻を明かしてやるんだから!
私達は急いでエドワード様の執務室に帰ったのよ。
「ビリー、宰相は酷くないか? か弱いメリンダに開墾しろっていうのは」
「本当だよな。アデラインは罪人だったから、開墾させるのもありかもしれないが、メリンダ様は歴とした聖女様だぞ。その聖女様を農婦のように働かせるなんて」
エドワード様に続いてブラッドも私の肩を持って憤ってくれた。
「うーん、父は言うことは厳しいので、申し訳ありません」
ビリーが一応謝ってくれたけれど、息子に謝ってもらってもどうしようもない。
問題は如何に宰相を納得させるかだ。
「まあ、良いわ。ビリーにはその分働いてもらうから」
「何なりと申しつけ下さい」
私の言葉にビリーは頷いてくれた。
「メリンダ。開墾するって、どこを開墾するんだ?」
エドワード様が尋ねてくれた。
「稲は田んぼで育てるから、水の沢山あるところが良いわ」
「ということは湖のそばか?」
「川でも良いのですか?」
「沢山水があればどこでも良いわ」
私の言葉にエドワードとブラッドが考え出してくれた。
「このグレナン川の流域はどうだ?」
「小麦の産地よね」
エドワード様の言葉に私は頷いた。
「何だったら、農民から土地を接収するか」
「しかし、エドワード様、接収は不味くないですか?」
エドワード様の意見にビリーが反対した。
「父親に反対されるからか?」
エドワード様が顔をしかめた。
「いや、そういう訳ではありませんが……」
ビリーは声が小さくなった。
「しかし、メリンダの予知によると今年は大雨で小麦が壊滅的な打撃を受けるんだろう? 接収して米作りをする方が農民のためになると思うが」
エドワード様が良いことを言ってくれた。
接収するのは一時期だけだ。米が出来て今年の飢饉を乗り越えられたら来年には返せば良い。
「エドワード様。接収しても耕す人間がいないではないですか?」
ビリーが反対する。
ビリーは何でも反対するんだから!
何が何でも申しつけ下さいよ!
私は少しむっとした。
「エドワード様。接収するのでは無くて、そのまま農民に命じて米を作らせれば良いのでは無いですか?」
そこにブラッドが良い意見を出してくれた。
「それもそうだな」
「ブラッド、それは良い考えだわ」
エドワード様と私はブラッドの考えに賛成した。
「しかし、エドワード様。農民が果たして言うことを聞きますか?」
またしてもビリーがケチを付けてくれた。
「ビリー様。あなた様のお言葉を先程から聞いていると、反対することしかおっしゃいませんのね」
私は嫌みを言った。
「いえ、決してそのような事はありません」
ビリーが慌てた。
「ビリー、グレナン川流域の領主は今は俺だ。領主の俺様の言うことは聞くだろう」
自信満々にエドワード様が断言した。
「聞かなければその時は土地を接収すれば良いのではありませんか」
ブラッドまで提案してくれた。
本当にその通りだ。
「メリンダ、米の種籾は大聖堂にあるのか?」
「まだ運んでいる途中だと思いますわ」
今回私は最果ての地にはいかなかったので、農民達から家畜の餌用の種籾を接収するのでは無くて、王家御用達の商会に頼んで手配したのよ。
間もなく王都に到着するはずだった。
「じゃあ、行き先をグレナン川流域に変更してくれ」
「間に合うかどうか聞いてみますわ」
「間に合わなければ王都から運ばせれば良いだろう」
「でも、メリンダ様。父に開墾すると言われた件はどうされるのですか?」
ビリーは忘れていたことを思い出させてくれた。
「ビリー、メリンダに農夫のまねごとをさせるのか?」
エドワード様の機嫌が悪くなった。
「しかし、聖女様がお約束されたことですから」
せっかく忘れていたのにビリーは律儀だ。
「本当に融通が利かないな、お前は」
エドワード様は呆れていた。
「この山地の麓を開墾すれば良いんじゃ無い?」
私はグレナン川の上流域を指した。
「ああ、そこなら何もないから良いんじゃないか?」
「しかし、森を開墾するのは大変ではないですか?」
「農民達を徴収して働かせれば良いだろう」
「それは良い考えですわ」
エドワード様が良いことを教えてくれた。どのみち小麦はちゃんと出来ないんだ。それなら開墾に農民を動員しても良いはずだ。私は一も二もなく頷いた。
「しかし、エドワード様、農民が素直に働くかどうか」
「ビリー、貴様、本当に反対しか出来ないのだな?」
ブラッドがビリーを睨んだ。
「言うことを聞かないのならば聞かせれば良いだろう。俺が騎士団を連れていく」
エドワード様が解決策を見つけてくれた。
「近衛騎士団を連れて行かれるのですか」
ビリーがぎょっとした顔をした。
「そうだ。近衛騎士団は蛮族相手には難しくても、農民相手なら十分に力を発揮するだろう」
「しかし、国王陛下が頷かれますか?」
「ふんっ、父は病に伏せっている。神の啓示によって騎士団を動員すると言えば何も言わないだろう」
エドワード様が私をみてくれた。
「お任せください。陛下の賛同を得るために大司教から話をしてもらうようにお話ししますわ」
私はエドワード様に頷き返した。
「…………」
なんかビリーが呆然と立ち尽くしているんだけど、開墾は最低限で形だけやればいいから、そこまで気にすることは無いのに!
私は農民が聖女の私の受けた神託を聞いて、進んで米を作り出すと当然のに如く思っていたのよ!
嫌がるなんて夢にも思っていなかった。
アイン達は騎士団を動員しましたが、聖女は農作業に忙しい農民達を動員しようしています。
果たして農民達は小麦を作るのを止めて米を作ってくれるのか?
続きをお楽しみに!
次はアインサイドに戻ります








