聖女視点 宰相の反対にあったので自らお米を育てることにしました
「失敗したのですか?」
私はエドワード様から王家の陰がアデライン一行を襲って失敗したと聞いた時は驚いた。
「陰も言うほどのことが無かった。三度襲ったのだが三回とも失敗してしまったのだ」
私はがっかりした。
王家の陰に任せれば大丈夫だと聞いていたから任せたのに……やはりオーガストの方が強かったらしい。
オーガストにさえ体を許しておけば今頃はここにオーガストもいたのに……私は本当に後悔した。
まあ、仕方が無い。元々オーガストは監禁するくらいに妹のアデラインを溺愛していたのだ。
少し様子を見るしか無いわ。
「それよりもメリンダ。お米の件だが宰相達が良い顔をしない」
エドワードが話題を変えてきた。
そう、この『グレナンのピンクの薔薇』では今年、長雨の影響で小麦が枯れて飢饉が起こるのよ。
ゲームでは最果ての地で私がお米を育ててその飢饉を乗り切るんだったけれど、最果ての地はアデラインの追放の地にしてしまった。
その途中でオーガストに黙って襲ってアデラインを始末する計画だったから、私の中でも最果ての地で育てれば良いかと思っていたんだけど、元々最果ての地は遠いし、前世の日本と同じで夏暑くて最悪だと思っていたのよね。
だから、今回は王都近郊で米を大々的に育てる計画だったのよ。
確か小麦は長雨で枯れてしまうから、それなら水を多く使う米を育てれば良いと思ったのに!
「エドワード様、何故なのですか? 神は私に長雨になるから米を育てるようにと啓示されましたのに!」
私が両手を前で組んで上目遣いでエドワードをうるうる見ると、
「宰相は米など家畜の餌で人間の食うものではないと反対してきたのだ」
いまいましそうにエドワードは教えてくれた。
「何ですって! お米は神から与えたもうたものなのよ。それを宰相は否定するというのですか?」
私はいきり立った。
前世私はご飯が主食だった。それはパン食でも良いけれど、いい加減に飽きてきたところなのよ。ここらで米の飯が食べたいと思っていたのに、そのご飯を馬鹿にしてくれるなんて許せない。
「そうなんだ。どうなんだ、ビリー?」
「いや、馬鹿にはしていないと思うのですが……何しろ米は最果ての地では家畜の餌にしているということで父もいい顔をしなかったのではないかと思うのです」
エドワード様は宰相の息子のビリーに言い訳させたんだけど、家畜の餌って何よ!
「ビリー様。お米は我らグレナンの民が飢えなくなるように与えたもうた、神からの頂き物ですよ。それを家畜の餌に例えるなんてどういう事なんです?」
私はビリーを睨み付けた。
「いや、神を冒涜するということではないと思うのですが……」
ビリーが戸惑ってくれた。
「家畜の餌に例えることが十分に冒涜しています。米は東洋では人の主食なのですよ。神は我がグレナンの民が飢えるのを見るのに忍びなく聖女の私に託されましたのに……宰相の反対に遭ってしまうなんて」
私は涙を押える振りをした。
「メリンダ、大丈夫か?」
エドワード様が私の肩を抱いてくれた。
「いえ、民が飢えるのを見るのが耐えられなくて」
私が泣き出すと、
「おお、メリンダ。泣き止むんだ。ビリー、貴様の父親だろう! なんとかしろ!」
「エドワード様。なんとかしろと言われても」
「酷い、ビリー様は民が飢饉で苦しむのが良いと言われるのですね」
「いや、そうは言いませんが……再度父に話してみます」
ビリーが頷いてくれた。
そうよ。最初からそう言えば良いのよ。
本当にどいつもこいつも役立たずだ。
お米さえちゃんと育てれば、飢饉はなくなるのよ。
まあ、他の人がどうなっても良いけれど、出来れば飢饉で亡くなる人が少しでも少なくなった方が良いだろう。私はそう思っていたのよ。
私は慈悲深い聖女様なんだから!
「何ですって! また、宰相に断られたですって?」
私はビリーを睨み付けた。
「申し訳ありません。メリンダ様。父がどうしてもうんと頷きませんので」
「どういう事だ、ビリー。貴様聖女メリンダがこれほど頼んでも無理なのか?」
「父はやはり米は家畜の餌だと申しまして、私では中々説得できませんでした」
「判ったわ。私が説得に行きます」
仕方なしに私はビリーに言ってやったの。聖女自ら出向けば、宰相も頷くだろう。
「宰相、米が家畜の餌だから育てられないとはどういうことなんだ!」
エドワード様が私の代わりに最少を怒鳴り付けてくれた。
「殿下、私は何も家畜の餌だから断ったわけではありません」
宰相が頭を押さえてくれた。
「じゃあ、何だ? 今年は長雨で小麦が枯れて飢饉に成るとメリンダは神から啓示を受けたのだぞ。その対策として米を神から授かったのだ。貴様は神からの啓示を疑うのか?」
「そうはもうしておりません。ただ、米は元々暖かい地方のものだと聞いております。この涼しい地で育つのですか? それに米は水を大量に使うと聞いております。それだけの水がどこにあるのです?」
「長雨になって小麦がかれるほどなんだから水は沢山あるだろう?」
「しかし、今はどちらかと言うと水不足で雨乞いの祈祷の依頼が各地から来ているのです。聖女様も行かれたのではないですか?」
そういえば金持ちの侯爵領に雨乞いでエドワード様と行った記憶があった。じきに長雨になるのだから、適当にやれば良いだろうと、主にエドワード様と婚前旅行を楽しんだのよ。
宰相にいくら頼んでも埒があかなかった。
「そこまで言われたら、聖女様が開墾なされればよいではありませんか? 何でも最果ての地に追放されたアデライン様は開墾して土地を耕しておられるとか」
「何だと、宰相、メリンダに農婦になれと言うのか?」
エドワード様が怒ってくれたが、確かにゲームではメリンダは土地を開墾して、米を育てるのだ。あんまりやりたくなかったけれど、仕方がない。
「わかりました。私が開墾して育てます」
私は宰相に宣言したのよ!
この生意気な宰相、ことのなった暁には絶対に首にしてやるわ!
私は心に決めたのよ!








