水竜退治で駄目にした田んぼはお兄様が責任持って直してくれることになったはずなのに……
「ギャーーーー、お米が……お米が」
お兄様に斬られた水竜は、私が育てた苗の植えてある田んぼの上に倒れ込んでくれた。
苗代で「大きくなあれ」「丈夫になあれ」と祈りながら苦労して種籾を蒔いて、急速に大きく育った苗を騎士団の皆が田植えしてくれた稲が全滅した!
何で、まだ田植えの終わっていない何も植えていない大量の田んぼがあるのに、何故狙ったように田植えの終わって順調に育っている田んぼの上に落ちるかな!
お兄様もお兄様よ!
水竜を倒すなら、何もないところで倒しなさいよ!
「ああああ、せっかく私が必死に頑張って植えた稲が……」
私の悲鳴を聞いて、皆慌てだした。
「いやあ、すまん、アイン。水竜が言うことを聞かなかったから」
飛んで来たお兄様が訳の判らない事を言ってくれたが、
「信じられない!」
私はお兄様を睨み付けたのだ。
「そもそも水竜が言うことをきく訳ないでしょ! 言うことを聞く魔物なんてドラちゃんくらいよ」
「さようでございます。私は空気を読む魔物ですから」
私の言葉に頷くとあっという間にドラちゃんは消えてくれたんだけど……
私の前にいると不味いと思ったんだろうか?
ドラちゃんには酷い事したことないのに!
信じられない!
私は更にムカムカした。
まあ、ドラちゃんは良いわ、悪いのはお兄様よ!
「どうしてくれるのよ、お兄様! 私が高熱出るまで頑張って蒔いた種籾がやっと育って、騎士団の皆が必死に田植えしてくれた稲をめちゃくちゃにしてくれて!」
私が私の前に跪いたお兄様を見下ろして叱責すると
「おい、すげえな、領主様は! あんな化け物を一撃で倒された騎士様に対して忖度も無しに怒鳴りつけるなんて」
「ひょっとしてこの国で一番強いのは領主様か」
「そんなのお姉ちゃんに決まっているじゃない!」
村民とメイが何か話してくれた。
「そこ、何か言った?」
「「「いえ!」」」
メイや村民はあっという間に静かになった。
でも、私が国で一番強いと言われても、嬉しくない!
私の怒る気も少し失せてしまった。
「判った。アイン。俺が責任もって元通りに戻すから」
結局、お兄様の言葉に私は許すしかなくなった。
でも、私は抜けていたのよ。お兄様が種籾を蒔いても、私がやるみたいに育たないってことが……
それから中断していた祭りが再開した。
「お姉ちゃん。このもちもちしたのがあのお米なの?」
「領主様、この白く輝ているのが、あの家畜の餌だった米ですか?」
「信じられませんな」
炊いたご飯を見せたら皆、一応に驚愕してくれた。
おかまから出来たご飯は粒が立っていて、とても美味しそうだった。
「あれ、本当に美味しい」
「なんか甘くないですか」
「これはパンよりも余程美味しいですな」
更にはご飯を振る舞ったら、皆本当に美味しいと喜んで食べてくれた。
「家畜の餌を食べるって言うから、どんな酷いもの食べさせられるのかってとても心配していてたけれど、本当に美味しいね」
メイが皆の心を代弁してくれたし……
「何を言いだすんだ、メイ。御領主様、私はそのようなことは思っておりませんでしたぞ」
村長は慌てて否定してくれたが、メイの言ったのは事実だと思う。
領主の言うことは聞かなければいけないけれど、どんな不味いものを食べさせられるんだと心配してきたに違いない。
だから想像したよりも不味くなかったから美味しいと言っているんだ。
まあ、それにおかずは水竜のステーキも付けたし……
みんな、こんな美味しいものは食べたことがないと言ってくれたが、ちょっと固かったように思うのは私だけだろうか?
まあ、お貴族様の私と違って、庶民はめったにお肉は食べられないそうだ。
家畜を育てても大半は今までは山向こうの街まで売りに行っていたそうだから。
「わあい、お肉だ。嬉しいな!」
メイ達なんて飛び跳ねそうな勢いだった。
私はセイラ達に指示して、水竜のお肉を参加してくれた皆にも分けてあげた。
「本当によろしいのですか? 御領主様」
村長達はとても恐縮していたが、
「大丈夫よ。こちらにはまだまだあるから」
「ありがとうございます」
鷹揚に言う私に村長達はとても喜んでくれた。
「お姉ちゃん、ありがとう」
メイが満面の笑みを浮かべてくれた。
私はこの地の領主なのだ。
この子達の笑顔を守らないといけないと初めて思った。
「アデライン様。あの子の言葉を直させないでいいんですか?」
セイラ達は不満そうだったが、
「良いのよ。私はあんな小さい子にまで御領主様とか言われたくないわ」
「しかし、村長もオーガスト様を領主って言いますし、領主の権威というものが」
セイラが指摘したが、
「別に良いじゃ無い。この中で一番偉いのはお兄様だし、お兄様が何も言わなければ問題ないでしょう」
「それはそうですが……」
こういうことに一番煩いのはお兄様なのだ。
そのお兄様がメイには「お兄ちゃん」と呼ばれて喜んでいたから良いだろう。
翌日私はお兄様に拝み倒されて、作り直した苗代に種籾を蒔いていた。
お兄様が全て直すってことだったのに!
「種籾はアインが蒔いてくれないと俺ではあんな素晴らしい苗には出来ない」
そう言われたらやるしかなかったんだけど……
結局、それからも増産計画のために、種籾は私が蒔くことになったんだけど……なんだかな!
ここまで読んで頂いてありがとうございます
チートのアインの力を目一杯使います








