お兄様が叩き斬った水竜は田植えした田んぼの上に倒れてくれました
「ギャオーーーー!」
再度水竜が雄叫びした。
そして、ゆっくりと川を遡上してくるみたい。
「きゃーーーー!」
「竜よ!」
「逃げろ!」
村民達が慌てふためいた。
ドカーン!
「静まれ!」
そんな中、お兄様が軽く爆裂魔術を中空に放出すると叫んでくれた。
皆ピタッと皆止まる。
「村長。村民の避難を」
「はい、しかし、どちらに?」
お兄様の指示に村長が戸惑った。
「ここからなら館で良いだろう。ホレス、貴様の隊で案内しろ」
「俺がですか? 俺も戦いたいんですが……」
「愚か者! あのような雑魚、俺様が一撃で仕留めてくるわ」
「えっ、オーガスト様がやるんですか? 作物に被害出さないでくださいね」
そう、私もそれが一番心配だ。お兄様が負けるなんて思ってもいないけど、周りが被害に遭うのが怖い。
「しかし、水竜など、いくらオーガスト様と言えども倒せるのですか?」
村長が心配そうにお兄様を見上げると、
「村長、知らないのか? オーガスト様は公爵領に現れた暗黒竜をも一撃で倒されるほどの腕前のこの国最強の騎士だ」
「そうなのですか?」
村長は頷いたものの、信じられないみたいだった。
まあ、お兄様は規格外だから。
それに筋肉もあるが筋肉ムチムチには見えないし、見目もとても麗しい貴公子なのよ!
まあ本当の高位貴族令息だし……
筋肉盛々のバージルみたいな感じではない。
でも、最強騎士なのは身をもって私は知っている
「お姉ちゃん。お姉ちゃんはどうするの?」
メイが尋ねてきた。
「えっ、私はここでお米を守るわよ」
私は言い切った。
お兄様の爆裂魔術か何かの反動で余計な物が飛んで来たらお米が飛ばないように守らないと!
「じゃあ、メイもここにいる!」
「メイ、御領主様にご迷惑をおかけしてはいけません」
お母さんがメイに注意していた。
「えっ、やだ。ここにいる!」
メイは言い張ったが、
「メイちゃんはお父さんとお母さんと一緒に館に行って。お兄様がすぐに終わらせるから」
「すぐに終わるなら、ここにいても良いじゃ無い」
メイちゃんが反論してきた。
「えっ」
私は戸惑った。
確かにそうだけど、お兄様は何するか判らないから、できる限り離れた方がいいと思うんだけど……
「メイ、無理を言ってはいけません」
「でも、お兄ちゃんが一瞬で片付けるなら、逃げるだけ無駄じゃ無い」
お兄様をおじちゃんと言わないだけメイは見る目がある。
普通はおじちゃんって呼ぶんだよね。
領地で言われた時はお兄様は絶句していたけれど……
「いや、メイ……」
お母さんが更に言おうとして
「まあ、そうだな。別にそこにいても構わんぞ」
お兄様も頷いてくれたんだけど、本当に大丈夫なのか?
「ドラの助!」
「はっ」
いきなりドラちゃんが現れて皆ぎょっとした。
メイは私のスラックスの裾を握ってドラちゃんから隠れてくれたし……
「なんかあのおじちゃん怖い」
後でメイは教えてくれたけれど、まあ、ドラキュラだからね。普通は怖いよね……
「どんなことをしてもアインを守れ」
「御意」
ドラちゃんが仰々しく跪くんだけど……そんな言葉どこで覚えたんだろう?
ひょっとしてセバスに礼儀作法を叩き込まれているのかもしれない。
最近公爵家の陰の一員として良からぬことに参画しているみたいだし……
「ギャオーーーー」
水竜が大分迫ってきた。
あと少しで私達が耕した田んぼだ。
その手前で騎士団の連中が弓矢やファイアーボールで水竜を攻撃しているが、水竜はびくともしない。
「ふんっ、雑魚が我らの開墾地を目指すとは許さん」
お兄様がいつの間にか宝剣ムラサメを握っているんだけど……
こんなところからやるんじゃなくて、すぐに水竜のところに向かってよ!
「お兄様、待って……」
私が止めようとしたが遅かった。
「喰らえ!」
お兄様がムラサメでソニックブレードを叩きつけていた。
衝撃が一気に飛んで水竜に襲いかかる。
でも、その前の堤防が割れて水があふれ出したんだけど……どうするのよ?
「きゃっ!」
その上、ソニックブレードをお兄様が使った反動で衝撃の風がこちらにも襲いかかってきて、精米したお米が吹き飛ばされだして、慌てて私はその上に覆い被さった。
まだ大半のお米は守れて私はほっとした。
でも、せっかく攻撃したのに、ソニックブレードは遠すぎたのか、水竜に弾かれたのだ。
ドカーン!
ちょっと、一部が種籾蒔いた水田に命中したじゃない!
私は切れそうになった。
「ギャオーーーー!」
弾いた水竜も、やっとお兄様に気付いたみたいだ。
雄叫びを上げるとお兄様目がけて川を上りだした。
「ふんっ、雑魚が、俺に刃向かうのか」
お兄様は不敵な笑みを浮かべてくれたんだけど、これ以上ここで戦わないでよ!
私がそう叫ぼうとした時だ。
お兄様は駆け出してくれた。
そうよ、向こうで戦いなさいよ。
本当にお兄様が戦うと被害が大きいのよ。
でも、何をトチ狂ったのか、水竜が上陸してくれたのよ。
私が種籾を蒔いた水田の前だ。
えっ?
私が唖然とした時は遅かった。
その水竜目がけてお兄様が斬りかかったのだ。
ズバッ
「ギャーーーー!」
一瞬だった。
首を斬られた水竜はゆっくり倒れたのだ。
私達が騎士団の皆が植えた田んぼの上に!
「ギャーーーー! お米が、お米が!」
私の悲鳴が田んぼ中に響いたのだった。
せっかく寝込むまで頑張ったアインのお米が……
続きは今夜です








