稲刈り祭りしようとしていたら、海から水竜が現れました
その日は完全には治っていないので、寝たり起きたりを繰り返した。
翌日は大分ましになって、現地を見に行ったりした。
まだ田植え前の田起こししただけの田んぼの中に、金色に輝く穂を満載した稲がたわんでいる光景はなんともシュールだった。
そして、翌日になった。稲刈りの日だ。
1反分の田んぼになったお米を皆で刈って、せっかくだからその場で食べてお祝いしようという事になったそうだ。
名付けて『稲刈り祭り』
まあ、収穫祭みたいな物よ。
と言っても育てだしてから1ヶ月も経っていないんだけど……
せっかくだから村人達も呼んで盛大にお祝いしようという事になって、結構な大人数が集まったの。
皆鎌を持ってきてくれた。
「お姉ちゃん。来たよ」
メイが私を見て駆けた来ようとした。
「メイ、駆けてはいけませんよ」
メイは早速お母さんに怒られていた。
「領主様、本日は我々を呼んで頂いてありがとうございます」
村長がお兄様に頭を下げているんだけど……
「村長。この最果ての地の領主様は我が妹のアデラインだ」
お兄様が首を振って私を見た。
「さ、さようでございました。申し訳ありません、アデライン様」
村長は慌てて私に頭を下げてくれた。
「良いのよ。お兄様はいずれダンブリーズ公爵家を継ぐ公爵様になるんだから。妹の私よりも先に挨拶するのは当然の事よ」
私は首を振って村長を見た。
私の反応に村長はほっとしたみたいだった。
記憶の戻る前の私だったら、大騒ぎしたかもしれないけれど、今は前世の記憶もあるし、私を恐れる必要は無いわ。
周りには村の人達も結構いた。
「アイン、領主なんだから皆に挨拶する必要があるだろう」
「えっ、でも、こんなところで挨拶しても皆私を見られないわよ」
お兄様の言葉に私が反論すると、
「大丈夫だ。俺が抱き上げてやる」
「キャッ」
私の承諾も聞かずにお兄様が一気に私を抱き上げてくれたのよ。
「皆の者、今日はよくここに集ってくれた。こちらの我が妹、アデライン・ダンブリーズがこの最果ての地の領主だ。そして、今は土魔術の使い手『お米の聖女』様としての方が有名だろう。諸君等が譲ってくれた家畜の餌用の米をアデラインが育てた稲がこちらだ。見てもらえばわかるように種籾を蒔いてから稲刈りまでが一週間とかからずにここまで大きく育ったのだ」
「おおおお」
「すげえ!」
「凄いお姉ちゃん」
「さすが『お米の聖女』は違いますな」
お兄様の言葉に皆が口々に私を褒め称えてくれたんだけど。
「ではその『お米の聖女』アデラインから言葉をもらおうではないか」
「「「おおおお!」」」
騎士達が雄叫びを上げてくれたんだけど……
なんかめちゃくちゃ恥ずかしい。
「ラストヴィレッジの皆さんと、騎士団の皆さん。この地の領主のアデラインです」
私は言葉を句切って皆を見た。
メイは私に手を振ってくれているし、好意的な視線も感じるが、村の人々の中には胡散臭い目で小娘が何を言っているという感じの人達もいた。
でも、これからグレナン王国は天候不順による凶作が襲い、その後、飢饉に向かうのよ。
だから、私はこの地で少しでも多くのお米を作って、飢饉で死ぬ人を減らしたかった。そのためには村の人達の協力が必要だ。
「この温暖で湿潤な気候の最果ての地は小麦を作るよりも絶対にお米を作った方が良いと思います。でも、皆さんのの中にはお米は家畜の餌だからと忌避される方が大半でしょう。
そんな方にも今日はこれから稲刈りをして、脱穀して取れたてのお米の美味しい食べ方を実演したいと思います。
一度偏見無しに食べてください。ご飯は絶対に美味しいと思いますから。
じゃあ、早速始めたいと思います」
私はそう言うとお兄様に頷いた。
お兄様が私を稲の穂の垂れた田んぼまで連れて行ってくれた。
「よし、では行くぞ。稲の根元から5センチくらい上で刈るんだ」
お兄様がそう言って稲を束ねて持つと、スパッと刈ってくれた。
「さあ、アインもやってみろ」
私は前世も思い出しながら、スパッと切ろうとして、切れなかった。
「固い!」
そうだった。前世もすぐには刈れなかったのよ。
前世は病弱で体力も無かったし……
結局旺雅兄ちゃんに代ってもらったのよ。
でも、今世はそこまで酷くないはずだ。
私は手に持つ稲の数をお兄様の半分くらいにした。
「もう一度。もう少し力を入れて」
お兄様の言うとおりに力一杯やったら
ズバッと稲が刈れた。
「やったわ。お兄様」
「良くやったな」
私が喜んでお兄様を見ると周りから拍手が起こった。
「ようし、各自分かれて少しだけでも稲刈りを楽しんでくれ」
お兄様の声に皆が騎士団の指示の下に分かれて稲刈りを始めてくれた。
私とお兄様は急遽鍛冶屋のゼウスが作ってくれた千歯扱きに向かった。
千歯扱きはたくさんの細長い鉄の歯を並べ、穀物を歯と歯の隙間に挟んで引いて脱穀する農具だ。
お兄様が温風で稲ごと乾かしてくれた。
普通は2週間くらい天日で干してから、脱穀するのだが、今日は稲刈りしたお米をすぐに食べたいと私が我が儘言ったからお兄様とセバスが色々と考えてくれたのよ。
お兄様が自分の分と私の分を掴んで鉄の歯の隙間に稲の穂先を入れて、引き抜いてくれた。籾だけが籠の上に落ちる。籾が付いたままの小さな穂先が多く出るので、さらに唐棹で何度も叩いて籾を分けるの。
そのもみを前にしたように臼の中に入れてもみすりするのよ。
お兄様が縦杵でついてくれた。
そのまま精米までしてくれる。
千歯扱きも5台置いていて次々に脱穀していく。
騎士達が使い方を村民に教えていた。
その後もみすりして精米だ。
慣れた騎士達がどんどん精米していってくれる。
人が多いのでドンドン捗った。
これで今日も美味しいご飯が食べられる。
私は食べる気満々だったのよ。
でもその時だ。
「ギャオーーーーー!」
何かの吠える声が聞こえたのよ。
「何事だ?」
お兄様が尋ねると、
「オーガスト様、大変です。海から水竜が現れました」
バージルが大変なことを報告してきたのよ。
行きなり現れた水竜。
稲刈り祭りはどうなるのか?
続きは明朝です








