三日間高熱で寝込んで起きたら、私が田植えした分がもう花を咲かせたと聞いて驚きました
「アイン! アイン大丈夫か!」
私は意識を失った後でお兄様に揺すられていた。
延々に!
それで無くてももう体力も何もかも終わっているのに……揺らさないでほしかった……
前世、私の遺体を見た後お兄ちゃんはこんな風に揺らしたんだろうか?
あの津波の後、私がどうなったかは知らない。
気付いたらあの地震の後にいた。
「やばい逃げないと」
私は今度は機敏だった。
すぐに二階の窓から外に出ようとした。
でも、高いし、こんなのどうやって飛び降りるの?
私には絶対に無理だ。
私がオロオロしている間に遠くの波が急激に大きくなってきた。
港の近くだった我が家は堤防を越えてくる津波が見えた。
もう終わりだ。
「愛韻!」
えっ、旺雅兄ちゃん!
そちらを見ると山手からお兄ちゃんがこちらに駆けてくるところだった。
「お兄ちゃん! 私はほって逃げて!」
「何を言っている。早く飛び降りろ」
「そんな、無理よ!」
私はすぐに飛び降りられなかった。
その時に家が波に呑み込まれたのよ。
「きゃーーーー」
「愛韻!」
そのショックで私は下に落ちてそれをお兄ちゃんが抱き留めてくれた。
でも、私達は次の瞬間間に波に呑み込まれたのよ!
「愛韻!」
「旺雅兄ちゃん!」
私達は抱き合った。
前回は一人寂しく死んだけど、今回は旺雅兄ちゃんも一緒だ。
そのまま意識を失った。
「愛韻! 愛韻! 大丈夫か?」
私は揺すられて目が覚めた。
「旺雅兄ちゃん!」
良かった……旺雅兄ちゃんは無事だったんだ!
あれ? でも、髪の色が赤い……
ということは別人!
「お兄様!」
私はぱっと目が覚めた。
周りを見ると最果ての村の屋敷だった。
旺雅お兄ちゃんだと思ったのに……お兄様だった。
やっぱり夢だ。
まあ、お兄ちゃんを巻き込まなくて良かった、死んだのが私だけで……
お兄ちゃんは元気にしているんだろうか?
ふと気になった。
声が旺雅兄ちゃんそっくりだったけれど、お兄様が旺雅兄ちゃんの転生だとか都合の良いことはおこりそうにない。
そのお兄様が私の手を握ってきた。
「良かった、アイン、目が覚めて! 3日間寝たきりだったんだぞ」
お兄様は私の手を握り込んで説明してくれた。
「えっ、3日間も?」
私は目を見開いた。
「すまん。俺がアインを無理させすぎた」
お兄様が謝ってくれた。
そうか、田植えを一反分やらないといけないと結構無理させられたのよ。
「本当ですよ。オーガスト様。アデライン様は貴族令嬢で騎士では無いんですからね。なのに、あんな無理をさせて」
横からセイラがお兄様を睨んでくれた。
「本当です。オーガスト様。アデライン様とあなた様は違うんですから」
セバスもお兄様を叱ってくれた。
「いやあ、本当に悪かった。アインの土魔術が素晴らしいと判って、周りの皆にもアインがどれだけ凄いか知らしめようとしたんだ。二度とエイブラムにも役立たずと言わせないためにもな」
「お兄様!」
私はお兄様の言葉に感動した。
そうだ。二度と伯父様に役立たずなんて言わせないんだから!
「『お米の聖女』伝説も作らないといけないからな」
「『聖女』伝説はいらないから」
お兄様が余計な一言を言ってくれて私の感激は飛んでしまったが……
「いや、既にアデライン様の『お米の聖女伝説』は加速しておりますぞ。王都からバーモント商会の会頭のハリーが参って、アデライン様の植えた稲を見て感激しておりましたからな」
セバスが教えてくれたけれど、バーモント商会と言えば王都でも指折りの商会だ。我が家のお抱えでもある。そんな商会の会頭が自ら来たんだ。
「でも、稲の育ちはどうなの?」
「凄いぞ、アインの植えた苗の生長が更に早くなって、今日は花が咲いたんだ」
「えっ、花が咲いたってもう咲いたの? とても早くない?」
私は目を見開いた。
「アインが種籾を蒔いただけでも早くなっていたのが、更に加速したんだ」
お兄様が言うには田植えから70日くらいたってから穂が出てくるのに、3日で出穂したらしい。
「明日には水抜きして、明後日には稲刈りをしようという事になって今は公爵領から移住させた鍛冶屋がてんてこ舞いで道具を突くっているところだ」
脱穀の道具を作ってくれているそうだ。
でも、種籾まきから約一週間で刈り取りってどれだけ早いのよ!
そんなのでちゃんと美味しく出来るんだろうか?
「他の私以外が田植えした苗はどうなったの?」
私は気になっていたことを聞いていた。
「それは手分けして田植えしたぞ」
「ありがとう。それでそちらの成長具合はどうなの?」
「そっちはアインが田植えしたほど早くはないが、それでも早いぞ。田植えしてから10日位で刈り取れるんじゃないか」
お兄様がまた、とんでもないことを言ってくれるんだけど……
「そんなに早いんだ!」
私は驚いた。
種籾を蒔いてから2週間位で稲刈りって絶対におかしいと思うんだけど……
取りあえず、明日水を抜いて、明後日刈り取る事になった。
ちゃんと出来ているんだろうか?
私はとても心配だったが、疲れたのかまたそのまま寝てしまったのだった。
アインが田植えした稲は更に成長が早くなりました。
でも、出来はどうなんでしょう?
次回は稲刈りです。
お楽しみに!








