4.最果ての地の最後の村の村長が私を囚人と呼んだのでお兄様が切れてしまいました
グレナン王国は、気候が温暖で乾燥した風光明媚な土地柄で、小麦の穀倉地帯だった。秋になるとそこかしこで小麦色の絨毯が出来て、とてもきれいだった。
そうこの南部の最果ての地を除いて……
最果ての地はグレナン王国の最南端にあり、ジメジメした高温多湿地帯で、大半は湿地帯として放置されていた。
温度は夏は暑く30度を超え、よく雨も降り、小麦もほとんど育たなかい。
そう、グレナン王国では誰も見向きもしない住みにくい耕作放棄された広大な土地、それが最果ての地だった。
だから私の追放の地に選んだんだと思うけれど……
でも、待って!
ゲームでは聖女がこの耕作放棄された土地を神からのお告げで開拓して、私達のソウルフード、お米を育てるのよ!
何しろお米はこの高温多湿の気候が最適の食物なのよ!
一方、その年は北部では雨が良く降り、夏には冷害が起こり、小麦が大凶作になるのよ。
ゲームでは飢饉が起こりそうになった時に、聖女が作ったお米を大量に供給してそれを防いだのよ。
先見の明があると聖女がもてはやされると同時に、今まで聖女を貶していた私達が白い目で見られて、そこで私はエドワードの卒業パーティーで断罪されて殺されるのよ。
でも、一年前倒しで現れた聖女は、考えたら、まだ、何も良いことをしていないじゃない!
なのに馬鹿な私は断罪されて追放されたけれど……
何で?
でも、私は今や無知無能のアデライドちゃんじゃなくて、あのボケナス王子が私の顔面を蹴り飛ばしてくれたのお陰で前世の記憶を取り戻したから、有能なアデライドちゃんに成り代わったわ!
ここは絶対に米を作って仕返ししてやるんだから!
前世、兼業農家の娘の私は米の作り方は完全に頭に入っているのよ!
私はウキウキしながら最果ての地にあるラストヴィレッジに到着した。
最果ての地にある最後の村、なんともありふれた名前だ。
そう思いつつ、私はその村の村長の家の前で止った馬車から降り立った。
村は最果ての最後の村だけあって寂れていた。
人口数百人。服装もボロボロの格好しているし、家は掘っ立て小屋でボロボロだ。
とても貧しそうな村だった。
でも、私がこれからこの土地を黄金の大地に変えてあげるのよ!
「あっ、馬車だ!」
「本当だ!」
「貴族のお姉ちゃんが降りてきたぞ!」
「わああああ!」
どこにでも好奇心旺盛な子供達はいるものでボロ着を来た子供達があっという間に寄ってきた。
私達が珍しいんだろう。
普通はきれいな着物を着た貴族達は事もが来たら汚らしいと蹴散らすと思うが、我が家は武のダンブリーズ家、それはなかった。
まあ、お貴族様である私が珍しいんだろう。
何しろ私は今まではこの国に二人といない王太子の婚約者だったのよ。
私が心の中で自慢していた時だ。
「ねえ、お兄ちゃん。この女の人の髪の色が真っ黒だけど、聖女様に意地悪していた悪役令嬢アデラインじゃない?」
「え?」
私は女の子のその一言に唖然とした。
既にこんな最果ての地まで私の悪名が知られているなんて!
「本当だ、アデラインだ!」
「悪魔の女って噂だぜ!」
「おい、殺されるぞ」
「怖い!」
子供達が好き勝手に私の悪口を言いだしてくれて私が唖然とした時だ。
「貴様等、何か言ったか!」
地獄の閻魔様もかくやという声が私の後ろからした。
「「「「ヒィィィィィィィィィ!」」」
子供達は恐怖の悲鳴を上げて私の後ろを見上げた。
最初に私の悪口を言った女の子なんて、私のスカートを掴んで震えていた。
そう、私の後ろには怒り狂ったお兄様がいた。
「お兄様、子供相手に何を切れているのよ!」
私が慌てて止めようとした。
「申し訳ございません! 子供達が何かご無礼をいたしましたでしょうか?」
そこに慌てた村長とおぼしき男がこちらに駆けて来て、土下座しそうな勢いで謝りだした。
私にくっついていた子もその後ろについてきたお母さんとおぼしき人が女の子を私から引き離して、頭を下げさせた。
「この者達が俺の妹のアデラインに無礼なことを申したのだ」
怒り覚めやらぬ声でお兄様が叫んでいた。
「ちょっとお兄様、高々子供の言ったことじゃないの!」
私が窘めた時だ。
「そちらが今回送られてきた囚人のアデライン?」
「何だと、貴様、俺の妹に今、何と言った!」
村長の何気ない一言にお兄様は更に切れてしまっていた。
「も、申し訳ありません。町のお役人様からは囚人のあで…………ヒィーーーーー、いえ、囚人が連れて来られるから化け物屋敷で閉じ込めておくようにと命じられまして」
「何を聞き違いをしているのだ! 俺がエドワードから聞いたのは、アデライドをこの地の領主にするという事だ!」
「りょ、領主様でございますか?」
村長は唖然として私を見てきた。
私もそんなのは聞いていないんだけど……聖女に悪行の限りを企んだ私が、この地の領主になんて成れるの?
気絶した後にそう言うことになったんだろうか?
「そうだ。王太子のエドワードからこの地、最果ての地の領主に我が妹アデライン・ダンブリーズを任じるという言葉をもらってきた」
お兄様が胸のポケットから出した紙には、確かに震えながら書かせたと思われる王太子の署名があった。
絶対にお兄様はエドワードを脅したんだ。
でないとこんなのをあいつは絶対に認めなかったはずだ!
でも、領主にするって普通は陛下のサインがないといけないんだけど、この紙は有効なの?
まあ、こんな最果ての荒れ地はどうでもいいと思うけど……
「村長、俺達はドラクエ伯爵の屋敷跡にすむことになっている」
「えっ、あの化け物屋敷にですか?」
村長はぎょっとした顔をしてくれた。
「何を驚いている。今もアデラインを閉じ込めるとか申していたではないか」
「いや、あの屋敷には囚人を閉じ込めると聞いていたので……領主様が住まわれるような屋敷ではありません」
村長が否定してくれた。
「そんなにひどいのですか?」
私が思わず尋ねていた。
化け物屋敷って何なの?
本当にお化けが出てきたらどうしてくれるのよ!
「そうだよ。お姉ちゃん、あそこには化け物が住んでいるから、悪いことは言わないから、うちに泊まりなよ」
女の子が目の前のボロ家、いや違う、古くなって隙間風が入ってきそうな家屋を指差してくれた。
確かに貴族の私が泊まるには酷いかもしれないが、幽霊屋敷よりはましだ。
「そうか、化け物が出るのか、それは楽しみだ」
やぶ蛇だった。
お兄様はそんな話が大好きなのだ。
それは怒り狂ったお兄様の前には閻魔様も逃げ出すと思うけれど、普通の令嬢の私は嫌なのよ!
今までお兄様に付き合わされてろくな事は無かった。
でも、私が逃れられるわけはなく、
「じゃあ、アイン、行こうか?」
お兄様に連れられて、行きたくないのに私は化け物屋敷に連れて行かれたのよ!
誰か助けて!
私は心のそこから叫んでいたわ!
誰も聞いてくれなかったけれど……
ここまで読んで頂いて有難うございます。
化け物屋敷に果たして化け物はいるのか?
続きは今夜です。








