3.最果ての地に追放になって、一年ずれていることに気付きました
前世、地震の時、結構揺れたけれど、私はなんとか大丈夫だった。
私は一人で家にいたけれど、避難しなければいけない地震だとは思ってもいなかった。
ゆっくりと寝ていたベッドから起き上がると本棚の本が全部落ちていた。
これを直すの大変だなと思った。
そう、私はその時はまだ大地震というイメージがなかった。
その時だ。
スマホがいきなりビービー鳴り出した。
画面には緊急津波警報とでかでかと出ていた。
私はいつものことだろうと思ったけれど、一応避難しようと立ち上がった。
服とかを着替えて防寒具を着ると、非常食の乾パンをナップサックの中に入れて私は廊下に出た。
廊下もいろんな物が倒れていたけれど、なんとかそれを乗り越えて、階段を苦労して降りた。
玄関で散らばった靴の塊の中から自分のスニーカーをなんとか見つけて、それを苦労して履いた。
そして、外に出ようとした。
「あれ?」
でも、出れなかった。
玄関の扉が開かないのだ。
そんな馬鹿な……
私は必死に扉を動かそうとしたが、びくともしなかった。
こんなところまで降りてこずに、二階から脱出したら良かったのかもしれない。
でも、私の運動神経では無事に脱出できたとは思えないけれど……
その時だ。何か急に真っ暗になったと思った時だ。家が大きく揺れて大音響と共に、何故か水しぶきが飛んで目の前に靴箱の巨大な扉が私の顔面に激突した……そこからの意識がなかった。
そこで死んだんだと思う。
それ以降の意識がなかった。
優しかったお父さんやお母さん、それに旺雅兄ちゃんにもう一度会いたかった。
お兄ちゃん達は私の遺体を見つけられただろうか?
私が涙にまみれた時だ。
目を開けたら目の前に優しい旺雅兄ちゃんの姿が見えた。
「旺雅兄ちゃん」
私が声を出すと
「愛韻、大丈夫だからな」
お兄ちゃんが手を握り返してくれた。
夢なんだと思う。
でも、私はもう一度お兄ちゃんに会えて良かった。
「ごめんねお兄ちゃん。逃げられなくて」
私は声を出すと再び目を瞑っていた。
「何を言っているんだ。愛韻が悪いんじゃない。その場にすぐに駆けつけられなかった俺が悪いんだ」
何か旺雅兄ちゃんが言っていたようだが私には良く聞こえなかった。
どのみち夢の中の事だ。
私はよく聞いていなかった。
次に目が覚めた時だ。
何故かぐらぐら頭が揺れていた。
「アイン!」
私の目の前に心配そうなお兄様の顔がドアップで現れて私はドキッとした。お兄様は脳筋の割に見目はとても麗しいのよ!
「痛い!」
慌てて起き上がろうとしてお兄様の石頭に頭をぶつけてしまった。
お兄様はそれでなくても妹の私が見ても綺麗な顔をしていて、いきなりその顔がドアップで現れると心臓に悪い!
そして、石頭も止めてほしい。
私はおでこを押えて悶絶した。
「大丈夫か?」
一方ぶつかられたお兄様はびくともせずに、心配そうに私を覗き込んでくれていた。
でも、この顔はまさしくお兄様だ!
本当に私の元に帰ってきてくれたんだ!
私は嬉しくなった。
でも、少し待てよ……
そんな簡単に許していいのか?
今まで私に散々塩対応してくれたお兄様を、そう簡単に許してはいけないだろう!
私の心の声が叫んでいた。
「お兄様!」
私はきっとしてお兄様を睨み付けた。
「アイン、今までお前を蔑ろにして本当に申し訳なかった」
お兄様が私を膝枕しながら私に頭を下げてくれた。
私は上げた拳が振り下ろせなくなった。
「メリンダの傍にいると何故かアインが悪い娘だと頭が勝手に流されてしまって、俺にとって何よりも大切なアインを蔑ろにしてしまって本当に申し訳なかった」
お兄様は頭を下げてくれた。最も膝枕されているから、私の顔の近くにお兄様の見目麗しい顔が来て、私は赤くなった。
「でも、何故メリンダの傍にいたのに、今回は私を助けに来てくれたの?」
私は誤魔化すために話題を代えた。
「あのボケナスのエドワードが俺のアインのきれいな顔を蹴り飛ばしてくれただろう! 俺の命よりも大切なアインの顔を蹴るなど絶対に許されないことをしてくれたその瞬間だ。俺に駆けられた魔法か何かがバリンと割れて吹き飛んだんだ。俺はいても立ってもいられなくなってアインを助けに飛んでいった」
お兄様は私をぎゅっと抱き締めてくれた。
「本当に申し訳なかった。俺が正気だったらあのような狼藉を働いたエドワードを絶対に許さなかった。通常ならばその場で八つ裂きにしていたのだが、まだ頭が完全に正常に戻っていなかった。次会ったら絶対にあのボケナスをアインの前に土下座して謝らせる。そうかその場で八つ裂きにする。それで許してくれ」
お兄様が何かとても物騒なことを言ってくれたが、私はお兄様が、私の所に帰ってきてくれただけで良いのだ。お兄様に色々と思うところもあったが、私はお兄様を許すことにした。
「アデライン様!」
その時だ。馬車の扉が開いて、私の専属侍女のセイラが飛び込んできた。
「良かったです。アデライン様がお気づきになられて。あのまま気付かれ無かったら、オーガスト様を許さないところでした」
セーラはお兄様を睨み付けていた。
「セイラ、良かった、無事だったのね」
確かゲームでは侍女まで出て来なかったが、あのままダンブリーズ公爵家はお兄様が継いで私の侍女達の多くは追放されるはずだった。
特に私が婚約破棄されたなんて知った日にはセイラは王子達に反抗して下手したら捕まるのではないかと私はとても心配していた。
「セイラ、アインはまだ完全によくはなっていない。興奮させるのは良くないだろう」
「しかし、無事に起きられたのですからここからは私がお嬢様の面倒を見ます」
「まだ、危険が去った訳ではない。アデラインは俺が護る」
お兄様がそう言うと、何か言いたそうなセイラをお兄様は馬車から追い出そうとした。
「そんな、オーガスト様!」
セイラは反抗しようとしたが、お兄様の前に無力であつという間に外に放り出されていた。
「お兄様、この馬車はどこに向かっているの?」
動き出した馬車の中で私が聞くと、
「南部の最果ての地と呼ばれている湿地帯に向かっている」
なんでも、私は破落戸に聖女に襲わせようとした罪で、南部の高温多湿の湿地帯、別名最果ての地に追放されたのだそうだ。
「最果ての地?」
私は何かが引っかかった。
最果ての地って確か聖女がとある食物を開墾して育てるイベントがあった。
ああああ!
私はもう一つ気づいてしまった。
そもそも私が断罪されるのはお兄様やエドワードの卒業パーティーの時のはずだった。
でも、私が断罪されたのはそれよりも一年も早い、エドワードの側近で一年上のブラッド・ランガム枢機卿の卒業パーティーだった。
ええええ! これはどういう事なの?
私は一年も早くに断罪されたの?
そもそも、メリンダが転入するのはこの卒業パーティーの後のはずなのだった。本来なら今の時期はまだ王子とメリンダは出会ってもいなかったはずなのよ。
でも、現実には既に転入しているし、私は1年も早く断罪されたのよ。
何故か判らないけれど、全てが一年早くなっている。そして、本来は破落戸どもにおもちゃにされて殺される私がその最果ての地に追放になってしまった。
お兄様の護衛付きで。
どうしてこうなったかは判らないけれど、でも、これならなんとかやりようがまだあるのかもしれない。
お兄様が帰ってきてくれたから無敵だし……
絶対にメリンダ達に仕返ししてやる!
私は心に誓ったのだった。
ここまで読んで頂いて有難うございます。
続きは明日です。








