『お米の聖女』になって苗代の種籾蒔きを全てさせられそうになって疲れ切って座り込んでいたら、お兄様にキスされてしまいました
私は『お米の聖女』になってしまったんだけど……
お米の聖女って言うのもなあ……と思ってしまった。
うーん、何かもう一つな気がするんだけど……
お米の銘柄とかお米のスーパーとかと同じような気がするし……
「まあ、でも、アデライン様。土魔術でお米の稲を成長させることになった点については、とても良いことではないですか。これでもう二度と役立たずとは言われなくなったのでは」
セイラが私に諭してくれた。
「そうね。二度と叔父様にも役立たずとは言わせないわ!」
私はガッツポーズをした。
確かにそれは純粋に嬉しい。
私が祈った苗だけが生長したなんて!
学園の土魔術の権威のアーロン教授が私の土魔術が上達したというのは、こういうことだったんだ。
そこは本当に感激した。
「そうだぞ。アイン。『お米の聖女』なんて、素晴らしい称号ではないか」
お兄様もそう言ってくれるんだけど……ネームセンスがいまいちなんじゃないかと私は思う。
まあ、語彙力のないホレスが言いだしたのでこうなってしまったのでは……
と言うか絶対に脳筋のお兄様も同じ感覚だ!
どの道なら、『豊穣の女神』とか『育成の女神』と言われたかったんだけど……
『お米の聖女』なんて、家畜の餌を沢山作る、メリンダの二番煎じの聖女という感が満載なんだけど……
「『お米の聖女』か、アデライン様もご成長されましたな」
セバスなんて感涙してくれているんだけど……
そんなところにセンスがないなんて言える訳もなく、私は『お米の聖女』になってしまった。
よし、頑張ろうと私は思った。でも……
「アイン、お前はできる限り種籾を蒔くようにしろ」
ってお兄様に言われてしまったんだけど……
ちょっと待って……
種籾蒔くのはとても疲れるんですけど……
まあ、私が祈って蒔いた種籾は成長が早いみたいだけど……
「ふうっ!」
私は大きくため息をついた。
疲れ切ってしまったのよ!
一反分の種籾を蒔くのはとても大変なのよ!
私に取っては!
「アイン、どうした? まだたった一反じゃないか」
まだたった一反っていうけれど、体力馬鹿のお兄様は平然としているんだけど、私は騎士のお兄様と違ってか弱い貴族令嬢なのよ!
まあ、お兄様は畝を作っている間に私は休めたんだけど、最初だけは!
でも、お兄様が畝を作るスピードがドンドン上がっていて、今では私は殆ど休めないのよ。
私が種籾を蒔いている間にあっと言う間に隣の畝を作ってしまうし、その上、私が蒔いた上に土をかぶせてあっという間に私に追いついてくれるんだけど……
「まあまあ、オーガスト様。アデライン様は偉大な土魔術で、お祈りを捧げていらっしゃるのです。お疲れになられるのも仕方がないでしょう。何しろ『お米の聖女様』ですからな」
横で見ていたセバスが私を擁護してくれた。
『お米の聖女様』は止めてほしかったけれど……
「そうか、アインも日頃は使ったことも無い魔術を使って疲れているのか!」
お兄様が私を慈しむように見てくれた。
「しかし、困ったな、アインが蒔いてくれた方が圧倒的に成長が早いんだが……」
お兄様が残念そうに言ってくれるけれど、私が全部やるのは絶対に無理だから!
そんなのしたら死んでしまうわ!
「まあ、オーガスト様。全てをアイン様に頼るのも酷でしょう。残りは我々が頑張れば良いのです。アイン様には少しずつやってもらいましょう」
「まあ、そうだな」
セバスの言葉にお兄様は頷いてくれた。
「良かった」
私はほっとした。
やっぱりお兄様は私に全部させるつもりだったんだ!
体力馬鹿のお兄様は出来ても私には絶対に無理なのよ!
そんなのやる前から判っているじゃない!
私は少しむっとした。
まあ、でも、これで少しは楽できる。
私が安心した時だ。
「じゃあ、アイン、休憩できたんなら、次に行こうか」
お兄様が言い出してくれたんだけど……
「ええええ! 全然休めていないじゃない! もう絶対に無理」
私は子供だったら、その場に転がっていやだいやだと足をジタバタするところだった。
「仕方が無いな」
お兄様が優しい言葉をかけてくれた。
やった。これでやらなくてすむ。
言ってみるもんだ。
私がほっとした時だ。
チュッ
私の唇に生暖かい物が触れたんだけど……
ええええ!
お兄様にキスされた!
「ちょっとお兄様! 何をしてくれるのよ!」
私は真っ赤になって思わず立ち上がって叫んでいた。
「元気づけのキスだ」
「何が元気づけのキスよ! どさくさに紛れて何をしてくれるのよ! そもそもお兄様は私の実の兄なのよ! 兄妹間で何してくれるのよ!」
「でも、ほら、今まで死んだようになっていたのが、元気になって立ち上っているじゃないか!」
お兄様が言い出してくれたけれど、一体何なの! どこの兄妹に元気づけで唇にキスする兄妹がいるのよ! 欧米では当たり前なの?
私は怒り狂っていた。
「元気になったら次行くぞ」
でも、お兄様は怒った私を無視して次の苗代に連れて行ってくれたんだけど……
ぷっつん切れた私はムカムカしながら種籾を蒔いたのよ。
怒りすぎてそこの稲は爆発したみたいに広がって急激に育ってくれたんだけど、悪いのは私では無い!
私にキスしてくれたお兄様よ!
ぷっつん切れたアデラインでした。
爆発した稲って何なの?
作者が聞くな!
続きをお楽しみに!








