苗代に種籾を蒔いたら、私が蒔いたところだけが成長が早くなって『お米の聖女』と呼ばれるようになりました
お兄様に暴発しなかった俺への褒美だと言われて、私は釈然としなかったんだけど……
逆に、私がキスしたらお兄様は暴発しないんだろうか?
私の唇はそんな安物じゃ無いと言いたかった。
でも、お兄様が次の場所に移動して、苗代を作った。
伯父様が乱入してきたので遅れていた分を取り戻すために、必死で働いたので、忙しさにかまけて結局うやむやのまま、その日は過ぎてしまった。
翌日だ。
少し前に芽出しの池の水を抜いて種籾を水の中から外に出していた。
種籾は麻袋を開けると少し芽が出始めていた。
よしよし、順調に芽出しは出来たみたいだ。
今日は、昨日と同じ苗代に各隊から選抜された面々が集まる。
今日は馬は無しだ。
皆、手作業でやるのよ。
「よし、今日はまず、苗代を完成させる。この柄振を使って、幅一メートルの畝を作るんだ」
お兄様はそう言うとグランド整備で使うトンボみたいな柄振を使って端の土を掘って、真ん中に盛っていく。
そして、今度はその幅に畝の両端を掘って真ん中に積んでいく。
両端に細い水路を残して畝が出来ていく。
我が公爵家の陰が畝の場所をマーキングしてくれているが、お兄様は畝を作るのがとても上手い。前世で旺雅兄ちゃんがやってくれたように次々にちゃんとした畝が出来ていくんだけど……でも一体どこで畝の作り方なんて習ったんだろう?
聞いたら図書館で読んだと言うに違いない。でも、図書館で習っただけでこんなに上手く畝を作れるのか?
騎士隊長や騎士の皆も皆見よう見まねでお兄様を真似て畝を作るが微妙に歪んだりして中々うまく出来ていない。まあ多少は目を瞑るしか無い。
それでも、1時間もすれば2反の苗代に20本の畝がなんとか延びた。
「最後はこれを平らにするんだ」
お兄様が畝の両端に作った溝を歩きながら柄振を使って盛った土を平らにならしてしていく。
他の騎士もそれを真似る。
なんとか、水の上に平らな畝が出来る。幅1メートル弱、長さ100メートルの畝が20本完成していた。
「じゃあここから種籾を蒔いていくわ。大体1センチ間隔になるように蒔いていくのよ」
私はそう皆に説明すると、1センチ間隔になるように種籾を蒔いていく。
そんなに上手く蒔けるかって?
そんなの目分量に決まっているでしょ!
「大きくあれ、丈夫になあれ!」
私は少し発芽した種籾にお願いしながら畝の上に蒔いていった。
「その上から土を軽く被せていくんだ」
お兄様が朝袋に入れた土を軽く被せていく。
「判った?」
途中で私は皆を見た。
「はい」
皆頷いてくれた。
「ようし、始めてくれ!」
お兄様の合図で皆一斉に種籾を蒔きだした。
「大きくなあれ、丈夫になあれ」
私が祈りながら残りの種籾を蒔く。
その後ろからお兄様が土を軽く被せてくれた。
私は1時間かけて100メートル、種籾を蒔いたのよ。
「はああああ、疲れた」
でも、それで疲れてしまった。
畦の上に座って私がため息をつくと、
「おい、アイン、まだまだやらなければいけない苗代は沢山あるぞ」
お兄様にお尻を叩かれて、私は次の苗代に連れて行かれたんだけど……
「少し位休ませてよ」
お兄様に文句を言ったら
「お前は俺が畝を作っている間は休めるだろうが!」
と言われてしまった。
まあ確かにそうなんだけど、それだけじゃ、足りないわよ!
その日は私は疲れ切って屋敷に帰った。
お風呂にセイラに入れてもらって、そのまま寝ていたんだけど……
「アデライン様! この後は夕食ですよ」
「セイラ、食事はいらないわ」
疲れ切ってそう言ったら、
「どうした、アイン、お前が食事をいらないなんて! 天地異変の前触れか? そうか良くない物を拾い食いしたのか」
血相を変えたお兄様が飛んで来たんだけど……
疲れ切っただけだと言い訳してもお兄様が信じてくれなくて、癒やし魔術師を呼びかねなかったので、私は仕方なしに食事だけは食べたのよ。
「いつもよりも少ないぞ」
って言われたけれど、本当に眠かったのよ。
でも、その日よく寝たからか翌日は早朝からバッチリと目が開いたわ。
そんなに働いてもいないのに、あんなに疲れるなんて、やっぱりもっと運動して体を鍛える必要があるんだろうか?
朝食の席で私が悩んでいると
「アデライン様、大変です」
ドラちゃんがいきなり現れたのよ。
私は驚いて、思わず食べていたパンを喉に詰まらせてしまった。
胸を叩くもがく私を見て、
「大丈夫か、アイン!」
お兄様が背中をトントンしてくれた。
「はああああ、生き返った。ドラちゃん、いきなり現れるのは止めてよね」
「申し訳ありません」
私の文句にドラちゃんが謝ってくれた。
「で、どうしたのだ、ドラの助?」
「それが一部稲が大きく育っている苗代がありまして」
「まあ、そういう苗もあろう」
お兄様が平然と言うが、
「いや、見た目ですぐに違いがわかりますから、すぐにお越し下さい」
ドラちゃんがあまりにも強く言うので、私達は急いで朝食を食べ終えると、種籾を蒔いた苗代に向かった。
「えっ?」
その苗を見て私は目が点になった。
一カ所だけ、もう5センチ位に苗が伸びているところがあるのだ。
最初皆で一緒に蒔いた中で、畝一つぶんだけ皆大きく育つ手いるんだけど……
「何でここだけ成長が違うんだろう」
一番端だけ明らかに生育具合が違うのよ。
「おい、ここってアインが蒔いた畝じゃないか」
「えっ、そう言えばそうね」
確かに私が蒔いたところだった。
「でも、そんな事は」
「アデライン様、あちらもそうですよ」
隣の私が種籾を蒔いたところも大きくなっていた。
そして、その隣も……
私が疲れ切ってセイラに代わってもらったところとは明らかに成長具合が違うのよ。
「ええええ、でもなんでだろう」
私が不思議そうに聞くと
「お前、土魔術が使えるだろう。それに種籾を蒔く時に祈っていただろう」
「そう言えばそうね」
よく見たら最後の方で疲れて祈らなかったところは、全然成長していなかった。
「凄いですね。アデライン様はお米の聖女様ですね」
ホレスが言いだしてくれたんだけど……
「ホレス、お米の聖女って何よ」
私は聖女って名前はメリンダを思い出すから嫌なんだけど……
「だって、アデライン様が祈られたところだけ、稲の生長が早いですから」
ホレスが説明してくれたけれど……聖女の名前は嫌なんだけど……
「そうだな。お米の聖女か?」
お兄様まで言い出してくれて、私の意志とは関係なしに、あっという間に『お米の聖女』と言う名前が広まってしまったんだけど……
ここまで読んで頂いて有難うございます
続きは明日です
お楽しみに!








