いやらしい目で私を見てくれた伯父の股間にお兄様の短剣が激突ましました
「何だと!」
エイブラム伯父様の上から目線にお兄様は激高した。
このままでは伯父様は一瞬で消炭にされてしまう。
こんなところでお兄様が爆発したらせっかくやった代かきが台無しだ。
下手したら開墾地が全て消炭になってしまうかもしれない。
それだけはどんなことがあっても避けないとといけなかった。
それに、まあ、こんな男と言えども、お兄様の伯父様だ。
消滅させたとなればお墓の中でお父様が少しは悲しまれるかもしれない。
「お兄様!」
私はお兄様に後ろから抱きついたのよ。
「あ、アイン!」
「私は大丈夫だから」
私はお兄様が暴発するのを防ぐためにぎゅっと抱きついた。
お兄様の体から怒りのオーラが少なくなった。
怒りが少し収まったのを知って私はほっとした。
「ほおおおお、相も変わらずアデラインはその兄に庇われているのか?」
伯父様は私の苦労も知らずにニタリと笑ってくれた。
ガマガエルそっくりに見えたんだけど、懸命な私は黙っていた。
お兄様は珍しく黙っていた。
おそらく怒鳴り散らすか私の前だから少し抑えた方が良いのか悩んでいると私はみた。
まあ、地球のためにはお兄様が黙っている方が良いんだけど……
「まあ、良い。バージルはいるか?」
伯父様は騎士団長を探した。
「ここにおりますが、公爵代理殿」
バージルは代理のところを強調した。
でも、伯父様はそこは無視して、
「その方もアデライン達に合わせて農民のまねごとか」
伯父様は呆れていた。
「何をおっしゃるのです。食料を作るのは領地にとっても国にとってもとても大切なことではありませんか」
バージルがむっとして反論してくれた。
「それはそうだが、そのようなことは農民どもに任せておけば良かろう。騎士は戦うのが基本だ。しかし、貴様、国の命に反して北の砦を勝手に撤退してきたそうではないか」
伯父様が指摘してきた。
そう、そこは私も良いのかなと思ってはいたのよ。
「何をおっしゃるのです。代理殿はご存じないのかもしれませんが、我らが国境を守っていたのは王家との盟約があったからです」
今度はバージルは代理としか呼ばなかった。
伯父様は少しむっとしたみたいだけど、
「では何故勝手に撤退してきたのだ?」
「王家が盟約を破ったからです」
「王家が?」
「さようでございます。我らが国境を守っていたのはアデライン様とエドワード殿下が婚約なさった時の盟約でございます。その婚約を王家が破棄したのです。当然我らも撤退するのが筋でございましょう」
理論平然とバージルは伯父様に反論してくれた。
「いや、しかし、いきなり撤退というのは……」
「そもそも、今回のアデライン様とエドワード殿下の婚約破棄について一方的に王家が破棄したと聞いております」
バージルは言い切ってくれた。
うーん、まあ、お兄様は私が蹴り飛ばされるまではメリンダのところにいたから、王家としてはお兄様の了解を取っているつもりだったのだと思うんだけど……
「しかし、アデラインがいろいろと聖女様を虐めていたんだろう」
白い目で伯父様は私を見てくれたが、前世の記憶が戻る前の私の行動を非難してくれてもなあと私は思った。
「アデラインはそのようなことはしておりません」
お兄様が言い切ってくれたんだけど……
破落戸どもを私が手配した気もする。よく覚えていないけれど……
でも、絶対にあれは王家の陰だったんじゃないかと思う。
向こうから登下校の最中に接触してきたし、あまりにも登場の仕方が唐突だったような気がする。
絶対に、私が嵌められたのよ!
「ふんっ、まあ良い。バージル、直ちに北の砦に向かって、占拠しておるノルディン族を排除するのだ」
いきなり大上段に伯父様が命じてきたんだけど。
そんなの騎士団がきく訳無いじゃない!
「これはこれは異な事を。我がダンブリーズ騎士団は全て本来の公爵家の後継者であるオーガスト様の指揮下にあります。代理殿には指揮権はないはずですが」
案の定、バージルは相手にもしていなかった。
「ふんっ、その公爵家当主に俺様がなることが決まったのだ」
伯父様は胸を反らして言いだした。
「えっ!」
私は思わず声が出てしまった。
「そんな馬鹿な」
「信じられん」
「あり得ませんな」
バージル達は全く信じていないみたいだった。
「何を言う、ここに書面があるぞ」
伯父様は懐から紙を取り出して、バージルに渡した。
「何々、ダンブリーズ騎士団をして北の砦を制圧すれば、その方にダンブリーズ公爵位を与えるって、代理殿。俺達はあんたの命令では動きませんぜ」
ホレスが伯父様を見下していた。
「何だと貴様。将来の公爵様に逆らうのか」
伯父様は怒り出したが、
「そんなことは公爵様になってから言って下さい。もっとも貴方が公爵になっても俺達は言うことは聞きませんが」
ちょっと、ホレス、言い過ぎだって!
私がそう注意しようとしたが、ホレスのいるところが遠すぎた。
「小僧何か言ったか!」
伯父様は激怒したけれど、その様子を騎士達は白い目で見ていた。
「ふんっ、貴様等、俺様の言うことをきかないと、騎士団を除名するぞ」
伯父様は言うことがむちゃくちゃだ。
「代理殿。越権行為は困るな。騎士を除名できるのは騎士団長だけなんだが」
バージルが呆れて言った。
そう、騎士団の騎士を除名できるのは騎士団長だけだ。
公爵といえども勝手に除名できない。
「貴様等、未来の公爵様の言うことが聞けないのか?」
「伯父上、見苦しいですぞ。騎士達は誰一人伯父上の言うことはききますまい」
呆れてお兄様が言い出した。
「おのれ、オーガスト、エドワード殿下からの命令だぞ。貴様、殿下の言うことを聞かないのか」
「勝手に契約を破棄してくれたのは王家だ」
お兄様が首を振ってくれた。
「よくそういう事が言えるな。ああ、そうそう、オーガスト、殿下は俺にこうも言ってくれたんだよ。犯罪者のアデラインを貴様の妾にしていいとな」
「えっ?」
なんで婚約破棄したエドワードが私の未来を決めてくれるのよ!
私は切れていた。
死んでもこのガマガエルの妾になんてなってやるものか
「アデラインは能なしだが、見た目だけはいいからな!」
伯父様はそう言って私をいやらしい目で見てくれたんだけど……私は怖気が走った。
その時だ。
「エイブラム!」
お兄様の怒声が響いた。
しまった。お兄様を抑えるのを忘れていた。
私が慌ててお兄様の手を掴もうとしたが遅かった。
怒り狂ったお兄様の手から短剣が飛びだしたのよ。
「ギャー!」
伯父様の悲鳴が田んぼの中に響き渡った。
伯父様は股間を押えて悶絶して倒れていた……
その傍に鞘を抜いていないお兄様の短剣が落ちていたんだけど……
まあ、短剣がどこに当たったかは言わないけれど、お兄様が激怒した割には被害は少なかったと思う。
お兄様の激怒の前に撃沈したエイブラム
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