公爵代理視点 騎士団を赤い悪魔から引き離し、その大事にしている役立たずの妹を自分の妾にすることにしました
俺様は王宮の前の広場に馬車から降り立った。
王宮前の広場の周りの野次馬達が俺を見る。
さあ、俺様を称えるのだ!
「あの、うだつの上がらなそうな貴族は誰なの?」
俺は最初の俺様に全く配慮していないその言葉にプッツン切れた。
ここが公爵領なら、言った平民は市中引き回しの上、打ち首獄門だ。
ここが王宮だから出来ないが……
「しいっ、あの方はダンブリーズ公爵家の方のはずよ」
「ダンブリーズ公爵家の方って、持つと見目麗しい方ではなかったの?」
「確か、暗黒竜も捻り潰したっていう、大力の持ち主だってきいたけれど」
「でも、どうみても、そんなに強いようにては見えないぞ」
「確か、暗黒竜を倒したのは若さまで、あの方は代官かなにかじゃない?」
「なあんだ、代官か?」
俺はその言葉に完全に斬れてしまった。
「貴様ら、俺様はダンブリーズ公爵家当主、エイブラム様だ。もっと敬え!」
俺様は思わず、叫んでいた。
「やばい、逃げろ!」
周りの平民達は蜘蛛の子を散らすようにあっという間にいなくなった。
「エイブラム様、ここは王宮です。落ち着いてください!」
俺の侍従が必死に俺を止めようとしてくれた。そういえばここが公爵領ではなくて、王宮だと思い出した。
「ウホン!」
俺は唖然としている王宮の迎えの侍従の前で咳払いした。
「ダンブリーズ公爵代理様、ようこそいらっしゃいました」
誰が、代理だ! 俺は歴とした公爵本人だぞ!
俺はその侍従に大声で叫びたかった。
実際は呼び声に頷いて侍従について、歩き出しただけだったが……
俺様は今日、第一王子エドワード様に呼ばれて、王宮にわざわざやってきたのだ。
俺の名前はエイブラム・ダンブリーズ、現ダンブリーズ公爵様だ。
異母弟が暗黒竜にやられて亡くなった時に、跡継ぎのその息子のオーガストがまだ成人していないということで、急遽オーガストの代わりに俺様が呼び出されて、公爵代理に就任したのだ。
まあ、異母兄の子供は脳筋のオーガストと養子にもかかわらず魔術もほとんど使えない役立たずのアデラインしかいなかった。
そんなどうしようもない奴らにこの由緒あるダンブリーズ公爵家を任せる訳には行かない。
脳筋のオーガストは周りからは『赤い悪魔』と恐れられているようだが、俺から見ると脳筋の単細胞だ。それが公爵領を治められるとは到底思えない。養子なのに魔術さえ使えない役立たずのアデラインは更に無理だ。
やはりここは由緒正しい公爵家の血筋を引く俺様が後を継ぐべきなのだ。
何しろ俺様の母は平民の魔術師である母から生まれた異母弟と違って、宰相を輩出しているキップフォード伯爵家の出なのだ。
元々俺様の方が異母弟よりも公爵にふさわしい!
今は公爵代理だが、いずれ俺様が真の公爵になる日も近いはずだ。
一時期はオーガストが次期王である第一王子の側近になって俺は冷や汗をかいたが、そのオーガストが第一王子に婚約破棄されて断罪されたアデラインと一緒に最果ての地に追放されたと聞いた。
ついに俺様の時代がやってきたのだ。
今回の呼び出しも俺様をダンブリーズ公爵に叙する為の呼び出しだろう。
俺はそう信じきっていた。
「ダンブリーズ公爵代理様」
係の者が俺の名を呼んでくれた。
扉が開いて俺は王子の執務室に入った。
「これはエドワード殿下におかれましてはご機嫌麗しく」
俺は膝を折って挨拶した。
「何もご機嫌などはよろしくないわ」
しかし、俺はいきなりエドワード第一王子殿下の白い視線を浴びてしまった。
どうしたというのだ?
俺は王子の横の宰相の息子のビリー・キップフォード伯爵令息を見た。
「エイブラム、貴様知らぬとは言わせんぞ」
俺の様子に更に殿下はお怒りになられた。
何かしてしまったか?
シカシ、俺にはとんと思いつかなかった。
「貴様のところのダンブリーズ騎士団の事だ」
王子は俺を睨み付けてきた。
「ああ、国境も平和になったので、帰って良いと国境警備隊長から指示を受けたと騎士団長のバージルは申しておりましたが」
「愚か者! そんな指示は王家からはしておらんわ」
殿下の叱責を浴びたが、俺様はそのようにきいていたから仕方が無いではないか!
「貴様の所の騎士団がいきなりいなくなったから我が国境の守備隊はノルディン族の攻撃を受けて壊滅、砦は占拠されてしまったのだぞ」
「何とさようでございましたか」
俺は驚き呆れた。
我が騎士団はこの国最強の騎士団で、国境で睨みをきかしていると聞いていたから帰ってきておかしいなとは思ったのだ。
まさか王家に無断で帰還したとは思わなかった。
「何がさようでございましたかだ。どうしてくれるのだ、エイブラム?」
第一王子に言われても俺にはよく判らなかった。
しかし、これは俺様が正当な公爵に叙せられるチャンスかもしれん。
「ならば直ちにダンブリーズ騎士団を北方の砦に向けまして直ちに砦を奪還いたしましょう」
「そのようなことが出来るのか?」
俺の言葉に疑い深そうに第一王子が俺を見てきた。
ここが切所だ。
俺はここぞとばかりに話し出した。
「我が公爵家では今はオーガストが跡継ぎだと申す者も多くて、中々統制が取れていないのが現状でございます。殿下から私目をダンブリーズ公爵に叙していたたければ、そのような者達を一喝、騎士団を直ちに砦に向かわせます」
俺は自信満々に主張した。
「しかし、ダンブリーズ公爵家の跡取りはオーガストではないのか?」
第一王子は渋ってくれた。
「殿下、オーガストは王家の命にも従わずに最果ての地でアデラインを匿っております。ここはエイブラム殿にダンブリーズ公爵家をお任せした方が、丸く収まるのではありませんか?」
聖女が俺様を援護してくれた。
そうだ、あと一息だ。
「うーむ、そうだな。エイブラム。貴様を公爵にすればダンブリーズ騎士団を掌握できるのか」
「当然にございます」
俺は胸を叩いた。
俺様が公爵になればいくら騎士団の面々がオーガストを慕っているとはいえ、王命を奉じた俺様には従わざるをえないだろう。
あの生意気なオーガストが俺様が公爵になったと知ったら悔しがるだろう。
その奴の目の前で王命によって騎士団を奴から引き離してやるのだ。
地団駄踏んで悔しがってくれるだろう。
ついでにあいつが大切にしている王子に捨てられて役立たずのアデラインを俺の妾にしても良いかもしれない。
あいつは胸も無く魔術も使えない役立たずだったが、顔かたちだけは整っていた。どこの馬の骨とも知らぬ女だが、俺の妾にしたら飾りにはなるだろう。
俺がその案を話すと、
「あのアデラインがお前の妾になるのか」
一瞬王子は嫌そうな顔をしてくれた。
「エドワード様。私に悪事を企んでくれたアデラインを許すのは癪に障りますが、エイブラム様があの女をしつけて頂けるのならば良いではありませんか」
しかし、聖女が俺の考えを後押ししてくれたのだ。
「しつけるのは私の得意でございまして、必ずや生意気なアデラインをしつけて見せます」
俺は殿下にはっきりと確約したのだ。
ふん、言うことをきかなければ鞭で叩けば良いのだ。
俺様にかかればあっという間にあの役立たずも役に立とうと言うものだった。
可愛がっていたアデラインが俺様の妾になった時のオーガストの悔しがる様子が俺の目に浮かんできた。
ふん、オーガストめ、見ていろよ!
俺様はやる気満々だった。
ここまで読んで頂いて有難うございます。
騎士団はエイブラムの言うことをきくのか?
アデラインの運命や如何に?
続きは明日です
お楽しみに!








