疲れて田んぼの中で寝ていたお兄様を起こしたら抱きしめられてキスされてしまいました
私は私に知らせずに勝手に私を囮として使ってくれたお兄様に対して、ぷっつん切れた。
お兄様には一人でこの地区の残りの全てを田起こしをしないと二度と口をきかないと脅したのよ!
怒った私は、お兄様を無視して、そのままその地区の残りの部隊を全て連れて隣のバージルの大隊の所に行ったわ。
「お米って家畜の餌だと侮っていましたが、工夫すれば食べられるようになるんですね」
この前、私の焚いたご飯を食べて少しやる気になったセイラと一緒に田起こしを頑張ったのよ。
セイラは服まで侍女服から作業着に替えていて、今までとやる気からして全然違った。
でも、セイラがやる気になったのは良いんだけど、 私の護衛を兼任しているからか、セイラは騎士達と同じように鋤を使っても体力的に平然としているんだけど……
普通は疲れるんじゃないの?
馬の轡を取ってただ歩いているだけの私の方が、疲れて「そろそろ帰ろう」と誘ったのに、「まだまだ大丈夫です」と反論してくれて、余分にもう一反分歩かされることになってしまったんだけど……
やっと終わって私は疲れきって、このまま帰ろうとした時だ。
「そう言えばオーガスト様はまだやっておられるんですかね」
言わなくても良いのに、ホレスが口に出してくれた。
疲れ切った私は、お兄様のことなど完全に頭から飛んでいた。
「ふんっ、お兄様は問題ないと思うわ。体力だけは馬鹿にみたいに沢山あるんだから」
私はもう歩きたくないのでそう答えたら、
「ええええ! アデライン様、オーガスト様に冷たいんじゃないですか?」
ホルスに言われてしまった。
「そうかな?」
私が首をかしげると、
「胸が大きい聖女を捨てて、胸の無いアデライン様の元にわざわざ帰ってきてくれたんですから、お迎えくらい行ってあげても良いんじゃ無いですか?」
セイラが余計な一言を言いだしてくれた。
「胸が無くて悪かったわね」
私がむっとしてセイラを睨み付ける。
そうだ、お兄様はあのむかつく聖女の大きな胸に惹かれて私を見捨てたのよ。
あれくらいで許すのは甘くない?
私が考え出した時だ。
「まあ、アデライン様がオーガスト様に対してお怒りになるのはもっともです。
でも、最後の最後にアデライン様の所に帰ってきてくれたのですから」
セバスがそうお兄様の肩をもってくれた。
「まあ、オーガスト様にあんな理不尽な命令できるのはアデライン様くらいですから、端で見ていると楽しいのですが、少しはオーガスト様にも優しいところを見せられるのも良いのでは無いですか?」
バージルまでしみじみと言われ、
「そうだよ。お姉ちゃん。私もお兄ちゃんと喧嘩した事はあるけれど、最後はちゃんと許してあげるよ」
今日わざわざ、私達に差し入れをもってきてくれた、ラストヴィレッジの村長の孫のメイにまで言われてしまったんだけど……
私は疲れ切っているのに……
まあでも仕方が無い。
迎えに行くか!
「判ったわよ。行けばいいんでしょう」
私は疲れ切った体に鞭打ってお兄様のいるだろう所目がけて歩き出した。
でも、いくら近付いてもお兄様らしき人影が見えないんだけど……
「あれっ、先に終わって館に帰ったのかな?」
私が声に出して言うと、
「オーガスト様がアデライン様を置いて帰られるなんてことはないと思いますけれど」
セイラが否定してくれた。
「そんな事無いわよ。昔はよく置いていかれたもの」
お兄様が私を見捨ててダンジョンに行ったことや訓練に行ったことは多々あったのよ。
「それはアデライン様が危険だと思われたから、あえて連れて行かれなかったのでは?」
セイラはそう言ってくれたが、絶対に私が足手まといになるからだ。私を置いて館に先に帰っていることは十二分に考えられた。
そうか、私が足手まといだと思われたかだ……
「アデライン様があまりにも冷たいから、聖女様の所に戻られたとか」
私はセイラの言葉に唖然とした。
それは十分に考えられる。
考えたらお兄様は少し前まで聖女の大きな胸に魅了されていたのよ。
聖女が良からぬことを企んで、知らぬ間に王家の陰が何かアイテムを持って来ていたのかもしれない。
それを使って再度魅了された可能性があった。
「お兄様!」
私は慌てた。
今お兄様にここから聖女の元に戻られるとやばい。
お兄様は1000年も生きてきた吸血鬼のドラちゃんですら手下にするくらい強いのよ。
そんなのが聖女に寝返ったら私は断罪、抹殺ルートへまっしぐらだ。
こんなんだったらもっとお兄様に優しくしておくべきだった。
「お兄様!」
私が必死になってお兄様を探し出した。
「アデライン様。あちらです」
セイラが目敏くお兄様を見つけてくれた。
「えっ、あ、あそこね」
お兄様は田起こしをした土の上に大の字になって寝ていたのよ。
「良かった」
私は慌ててお兄様のところに駆け寄った。
「だから言ったでしょう。オーガスト様がアデライン様を置いて帰ることは無いって」
セイラがどや顔で話してくれたが、元々貴方が聖女のところに帰ったかもしれないと言い出したんじゃない!
私はそう叫びたかった。
「お兄様!」
私が慌てて駆け寄ってもお兄様はグウグウ寝ているんだけど……
「お兄様! 起きて! 帰るわよ」
私がお兄様を揺る動かすと、
「おお、俺のアイン!」
お兄様が私をそのまま抱きしめてくれたんだけど……
「ちょっとお兄様!」
お兄様はまだ寝ぼけているみたいだった。
私がお兄様に抱きしめられながらお兄様をちゃんと起こそうとした時だ。
「アイン、とても可愛いぞ!」
お兄様はあろうことか私の唇に自分の唇を押しつけてくれたのだ。
え、ええええ!
私、今ファーストキスしている!
私は真っ赤になって固まってしまったのよ!
お兄様と期せずしてファーストキスしてしまったアインでした……
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