お兄様が私を無断で囮に使ってくれたので罰として一人で田起こしさせることにしました
「ドラちゃん!」
私は倒れたドラちゃんに駆け寄った。
ドラちゃんは真っ白い顔をしていた。
「大丈夫? ドラちゃん!」
「私に構わずお逃げください」
必死に泣き叫ぶ私に、ドラちゃんが息も絶え絶えの声で忠告してくれた。
「アデライン、覚悟!」
私に迫ってきた男が短刀を振り上げた。
やられる!
私が身構えた時だ。
私の前に大きな体が現れた。
ガキン!
私の前にお兄様が転移してきてくれて、剣で受け止めてくれた。
「お兄様!」
私は歓喜の声を上げた。
「おのれ、オーガスト! 貴様、エドワード様と聖女様を裏切ったのか?」
男は忌々しそうに言いだした。どうやら陰はお兄様の知り合いらしい。
「ふんっ、何を言う。俺はエドワードの傍にいる淫乱エセ聖女の化け物に魅了の術にかけられていただけだ。元々俺の心はアインと共にあるわ」
お兄様は笑ってくれた。
「エドワードと淫乱聖女に告げるが良い。俺のアインを傷つけた貴様等は許さんとな」
そう言うとお兄様は剣で男を叩き斬っていたんだけど……
告げるが良いって言っておきながら叩き斬るってどういう事?
それじゃあ告げられないじゃない!
もっともお兄様に常識は通用しないけれど……
「ぎゃーーーー」
男は真っ二つにされながら吹っ飛んだ。
でもその剣はその男の後ろで牙を首筋に突き刺していたドラちゃんも真っ二つに斬っているんだけど……
でも、何でドラちゃん復活しているの?
ええええ!
味方斬り?
私は唖然とした。
「というか、なんでドラちゃんは元気なの?」
「アイン、こいつは吸血鬼だろうが。殺されても死なないのは、この前にお前も見ただろう!」
お兄様に呆れられたけれど……そう言えばそうだった。
ということは先程は弓にいられてやられた振りをしていただけなの?
そういう事は前もって言ってよね。
本当に死んだと思ったじゃない!
私はむっとした。
他の男達はと気になって、さっきこちらに駆け出していた男達の方を見ると、皆倒れていた。
と言うか残った三人なんてジョージ達三人に今まさに吸血させられている所なんだけど……
ええええ!
いつの間にかジョージ以外に吸血鬼が増えているし……
これを見る限り、ドラちゃんが私について田起こしをしていたのは偽装だったの?
そうか、こいつら王家の陰を引きずり出すための囮だったのね!
私も知らない間に勝手に囮役をさせられていたんだ。
「酷い、お兄様、私を勝手に囮役にしたのね!」
私はお兄様を見た。
「いや、あの、アイン、囮と言っても、危なくなったら俺がすぐに転移で駆けつけただろう?」
お兄様が焦って言い訳してくれた。
「でも、前もって教えてくれても良かったじゃない! 信じられない!」
私はお兄様を睨み付けた。
「だから、前もってアデライン様にお話しした方が良いって言いましたのに! オーガスト様が『アインはポーカーフェイスが出来ないから言わなくて良いって』言われるから」
「馬鹿者、余計な事を言うな!」
ちゃんと教えてくれたドラちゃんをお兄様が叩いていたけれど……
「お兄様、どういう事?」
わたしがお兄様を睨み付けると
「いやあ、アインに秘密を話すとどうしても顔に出てしまうからな」
お兄様が偉そうに言い訳してくれたが、
「私も秘密を顔にださないくらい普通に出来るわよ。いつの話をしているのよ?」
「いや、前もダンジヨンに連れて行ってやった時、親父には秘密だぞって釘を刺したのに、お前は顔に出てバラしてしまったじゃないか」
「お兄様それは私が10歳の時でしょ。いつの話をしているのよ!」
もう私も大人なんだし貴族の令嬢なんだから、ポーカーフェイスくらいできるわよ!
私は完全に切れてしまった。
「お兄様!」
「はい!」
お兄様は私の言葉に気をつけしてくれた。
「お兄様はここから向こう全てを一人で田起こしするのよ! 馬なんて絶対に使ってはいけないからね」
私は命じていたのよ。
「えっ、アデライン様。それはさすがにオーガスト様であっても中々厳しいのではないですか?」
「良いのよ。お兄様は体力馬鹿なんだから」
庇おうとするドラちゃんに私は言い切ったのだ。
「いや、アイン、それは……」
「やらない限り私は二度とお兄様と口を利きませんから」
私に文句を言おうとしたお兄様に私は宣言した。
「えっ、そんな!」
「判ったわね」
ショックを受けた模様のお兄様に私は再度確認した。
「やれば良いんだな、高々これくらいの田んぼ、なんとでもなるわ」
お兄様はそう宣言すると、
「ウォーーーーー」
いきなり馬用の鋤を手に取るとそれで田起こしを始めたのだった。
凄まじいスピードで起こしていってくれるんだけど……
「お兄様、いい加減にしたらもう一度させるからね」
「うぉーーーー!」
私の言葉に叫びながらお兄様はUターンしていった。
これなら出来るだろう。
「皆、他の所を手伝うわよ」
私がホレス等を促すと、
「オーガス様を奴隷のようにこき使われるなんて」
「さすがアデライン様は違いますな」
「そこ、何か言った?」
「いいえ」
「何も」
セイラとセバスが何か言いあっていたので私が睨み付けたら、慌てて首を振って否定していたけど……
ここまで読んで頂いて有難うございました。
アインにこき使われるお兄様でした……








