とある農民(ドラちゃん2世)の独り言 疑ってきた仲間の血をすって吸血鬼にしました
王家からは邪魔なアデラインを早急に処分しろという指示が我ら陰に出ていたが、我らはそれに対して 何も出来なかった。
いや、やらなかったのではない。
王家の陰の主力を使って二回の襲撃を試みたのだ。
それがオーガストによって完全に防がれてしまったのだ。
その赤髪から『赤い悪魔』と我々に呼ばれるようになったオーガストの力は絶大だった。
俺も出来たらアデラインをなんとかしたかったが、アデラインの傍にはいつもそのオーガストがいて、手は出せなかった。
そう、俺は遠くから見ているしか出来なかった。
そんな諦めていた時だ。
何をトチ狂ったかそのアデラインが俺目がけて駆けてきた。
俺には信じられなかった。
鴨葱が向こうからこちらに駆けて来たのだから。
それもその護衛騎士のオーガストから匿ってほしいなんて、誘拐して聖女のところに連れて行ってほしいってことなんだろうか?
俺は歓喜に震えた。
そして、俺達が作った秘密の洞穴にアデラインを入れるのに成功した。
これで上手くいく。
俺は成功を確信した。
「あっはっはっ、本当にお前も馬鹿だな。オーガストの傍にいれば守ってもらえたものを。貴様に手が出せないからどうしようとモンモンとしていたら、そちらからかもがねぎを背負って歩いてきてくれたんだからな」
俺は任務が成功したと確信したのだった。
でも、俺は甘かった。
「さあて、どちらが鴨葱なんだか?」
俺の後ろから低い声がしたのだ。
「き、貴様、何奴だ。どうやって俺の後ろを取った?」
俺は唖然としていた。
俺は王家の陰の中でも後ろを取られたことがないことで有名だったのだ。
そんな俺様が知らぬ間に後ろを取られていた。
俺には信じられなかった。
「ふん、貴様とはもともと経験が違うのだよ」
男は自慢してくれた。
「な、何だと、王家の陰が公爵家の陰に負けたと言うのか……そんな馬鹿な」
俺には信じられなかった。
「くっそう!」
俺は短剣を握ると、ダメ元で後ろの敵に遅いかかったのだ。
「死ね!」
振り向きざま、男に突き刺したのだ。
やった。これで勝てたはずだ。何しろ短剣には毒を塗ってあるのだ。
普通の人間が耐えられるはずはない。
でも、男は何故か平然としていた。
更には、俺様もその男の牙が突き刺さっていた。
牙があるって何だ?
公爵家の陰は人体改造でもしているのか?
俺は敵が吸血鬼という魔物だとは想像だにしていなかったのだ。
「な、何でだ? 何故毒付きのナイフを刺して利かない?」
「ふん、貴様とは修行のレベルが違うのだよ」
「くっそう、無念だ」
俺は力尽きてそのまま倒れた。
「あっはっは。我輩に抵抗しようなど1万年早いわ」
男の高笑いが俺の死にかけの脳裏に響いた。
俺は無念だった。
しかし、次の瞬間だ。
ズバッ
凄まじい音ともに、俺様の体は真っ二つに引き裂かれたのだ。
「アイン! 大丈夫か?」
その声はオーガストだ。
赤い悪魔のオーガストまでやってきた。
もう絶対に無理だ。
俺は絶望した。
でも、何故俺は生きているんだ?
気付いたら真っ二つに斬り裂かれた体まで元に戻っているんだが……
俺はその男、吸血鬼ドラクエに吸血されて、吸血鬼になっていた。
更にはドラクエに吸血されたので、俺はドラクエの眷属になっていたのだ。
屈辱的なことにその後、オーガストとアデラインにまで頭を下げさせられた。
こ、この屈辱忘れるものか!
絶対に仕返ししてやる。
俺は心に決めた。
「おい、ドラの助2号。王家の陰のアジトはどこだ?」
「しるか……ギャーー! 俺の家です」
俺が白を切ろうとすると俺の体に激痛が走りるのだ。
ちょっと油断するとすぐに答えてしまう。
その上、知らない間にペラペラと王家の陰の秘密のアジトまで話しているんだが……
いや、これは本当に不味い。
「なるほど、そうかと疑っておりましたが、ニュートン商会も王家の陰の支配下にあったのですね」
セバスとか言う公爵家の陰の元締めが出て来て、俺は知っていることを洗いざらい話していた。
何故だ?
どうしてこうなった?
シリルからは三回目の王家の陰の襲撃計画が送られてきた。
先遣隊にトムとジェリーの2名がシリルの手紙を持って来たんだが、3日後に18名の陰と共に到着してタイミングを計ってアデラインを襲うというのだ。
「ジョージさん。このご飯って結構いけますね」
「本当だな。この米はどうしたんですか?」
トムとジェリーが尋ねてきた。
実際はアデライン様から貴方も食べてみてと渡されたのだが、そんな事を正直に話す訳にはいかない。
「いやあ、村の人に譲ってもらったんだよ」
そう、村の領主のアデライン様に譲ってもらったんだ。
嘘ではない。
「そうなんですか?」
「でも、変ですね。今日村長と話したら、米はどうしても食べる気にならないから村では食べることは無いって言っていましたよ」
ジェリーが不審そうに俺を見てきた。
「それは村長の勘違いじゃないかな」
俺が否定すると
「勘違いってそんな訳は……ギャッ」
いきなりジェリーが悲鳴を上げた。
俺の吸血鬼の瞳には後ろからジェリーに噛み付くドラクエが見えていた。
でも、トムにはそれが見えていない。
「おい、どうした?」
首を押えるジェリーにトムが駆け寄ろうとした。
行かす訳には行かない。
「ギャーーーー」
そのトムの首筋に後ろから俺が噛み付いたのだ。
まさか人間の男の首筋に噛み付くなんて、昔は想像だにしなかった。
俺は嫌だったが、でも、その血はとても上手かった!
「ジョージ、お前」
トムは振り向いて何か叫びそうになったが、それ以上声を出せずに倒れ込んでいた。
「ジョージ、出来るようになったじゃないか」
ジェリーの血を吸っていたドラクエが幌めてくれた。
でも、男の血を吸っても何も嬉しくはないのだが……
シリル達18名が訪ねてきたのはその3日後だった。
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