ご飯は本当に美味しい2 かまどで火を使ったら火傷してしまってお兄様が氷を出して冷やしてくれました
お兄様と騎士のホルス達がもみすりと精米に精を出してくれているのを見ていたら、1時間なんてあっという間に過ぎてしまった。
精米したお米を水に浸して取りあえず水分を吸収させた。
お兄様は低温で2時間位浸した方が良いんじゃないかと言いだしたけれど、ここでお兄様に冷やすために氷魔術を使ってもらう必要もないだろうと取りあえず、常温で1時間おいておいた。それに氷魔術なんて使える人はなかなかいない。
私はいつでも誰でも美味しいご飯を食べてもらいたいのよ。
ここからかまどに火を入れて炊飯だ。
『はじめちょろちょろ中ぱっぱ、じゅうじゅう吹いたら火をひいて、ひと握りのワラ燃やし、赤子泣いてもふた取るな』
私は飯炊き歌を思い浮かべた。
「何ですか、その歌は?」
ホルスが尋ねてきた。
「えっ、声に出ていた?」
「はい」
しまった。下手な歌をホルス達に聴かれてしまった。
「東洋で歌われているご飯を炊く時の歌なのよ」
私は赤くなって必死に言い訳した。
「どういう意味なんですか?」
「ご飯を炊く時の火加減の歌で、始めちょろちょろということで、始めは弱火で火を起して、中ぱっぱは沸騰したら、最大火力にするのよ。そして、じゅうじゅう鍋から噴き出したら火を弱めて、10分くらいしたら最後に一握りの藁を燃やして、それで終わり。
かまどから外して、赤ちゃんが泣いても10分くらいおいておくの。蓋は最初から最後まで取ってはいけないって歌よ」
「凄いですね。アデライン様」
「そこまで博識だとは思いませんでした」
私の説明にホルス達が感動してくれていた。
ふっふん、家族でキャンプに言った時に、旺雅お兄ちゃん達が歌っていたので覚えたのよね。お兄ちゃんの受け売りだけれど、私が覚えたことには違いない。
なんかお兄様のこちらを見る目が白いんだけど……何でだろう?
まあ、私は転生者で前世の知識が残っているから、ずるいような気はしたけど……
「でも、こんな知識をどこで覚えられたんですか?」
「えっ、それは……学園の図書館とかで学んだのよ」
私はとっさに誤魔化した。
「図書館ですか? 我が家の図書室にも殆ど足を運ばれなかったお嬢様が?」
セイラに突っ込まれてしまった。
勉強はつまらないから嫌だと散々家庭教師を我が儘言って困らせていた私だ。
セイラはそれを一部始終見ていて注意もしてくれた。館の図書室なんて殆ど行ったこともないのはセイラ達も把握していたはずだ。これはやばい!
「ふんっ、学園に行ったら必要に迫られて図書館通いもしたのよ」
私は必死に誤魔化した。
「まあ、お嬢様の成績は超低空飛行でしたからね。もっと前からそれに目覚めてくれていたら、もっと成績も良かったと思いますが……」
セイラの嫌みが胸に痛い。
仕方が無いじゃない!
前世の知識を思い出したのが断罪された時なんだから!
「ふんっ、今は勉強の話よりもご飯を炊くことでしょう」
私は必死に誤魔化した。
それを皆生暖かい目で見てくれているんだけど……
まあ、今までは我が儘お嬢様全開だったから、騎士達には私は馬鹿だと思われていたのかもしれない。
これからも前世の知識を元にして、この最果ての領地を豊かにしていこう。
私は心に誓ったのだ。
「じゃあ、火をつけるわね」
私が火打ち石で火をつけようとした時だ。
カチッ
音がしたけれど付かない。
あれ?
カチッ
もう一度やるが付かない
そう言えば、私皆の付けるのを見ているだけで、お嬢様だから使ったこともなかったんだ。
皆の見ていたら簡単そうだから使えると思ったのに!
私不器用だから使えないの?
こんなんだったら一回誰も見ていないところで練習するんだった!
私は後悔した。
「アイン、場所代われ」
お兄様が私の横に来てくれて、私は仕方なしに横に退いた。
そして、お兄様が火打ち石を使うと思ったのに、いきなり無詠唱で火魔術で火をつけてくれたのだ。
ボッ
と一気に薪が燃えだしたんだけど……
「ちょっとお兄様。始めちょろちょろって言ったでしょう! いきなり全開にしてどうするのよ」
私がお兄様に怒ると、
「アイン、始めちょろちょろは少し古いぞ。今の研究では水に浸しさえすれば最初から全開でいってもいいそうだぞ」
「ええええ! そんな事無いわよ。昔他の人にも始めは弱火だって教えられたし」
旺雅兄ちゃんは私に何回もそう教えてくれたのだ。
「そいつは古いんだよ。今はデンプンを逃がさないように最初から全開でいくのがよいそうだぞ」
お兄様は全く私のいうことを聞いてくれなかった。
旺雅兄ちゃんが嘘教えることはないのに!
むっとして私はお兄様を見るがお兄様はどこ吹く風で無視してくれた。
うーむ。
聖女の胸に夢中だったのをまだ許していないのに!
私はむっとした。
その私に無言で場所を代ってくれたんだけど、今更どうしようもなかった。
「絶対に上手いから」
お兄様は言ってくれるんだけど、聖女と一緒にやったんだろうか?
私はますますムカムカしてきた。
ジューーーー
鍋が吹きこぼれた。
「アイン、沸騰したお湯が噴き出したぞ」
お兄様が注意してくれた。
「言われなくても判っているわよ」
火を弱くするには、あれ? ガスコンロなら弱火にしたら良いけれど薪はどうするんだっけ?
私は戸惑った。
弱くするには薪を少なくすれば良いか?
私がまきに手を伸ばして取ったんだけど。
「熱い!」
思わず薪を離していた。
「何しているんだ」
慌てたお兄様が薪を取って、それを火の中にもう一度くべてくれた。
「えっ、でも」
「弱火にするんだろう」
「うん」
お兄様がトングを使って薪を横に退けてくれたんだけど……
なるほど鍋から遠ざけたら、鍋にあたる火が少なくなって火が弱くなるんだ。
私は勉強した。
「アイン、手を見せろ」
「えっ」
私の了解を得る前にお兄様が私の軍手を外してくれた。
「少し火傷しているじゃないか!」
「大したことないわよ」
「馬鹿者! だから火は触るなって散々注意してきたのに」
そう言えば火打ち石を使えないのはお兄様が使わせてくれなかったからだ。
「今回はやりたそうだったからやらせたら、またこれだ」
お兄様はブツブツ文句を言いながら、
「これで冷やしておけ」
氷を出してくれて、私に持たせてくれた。
氷なんかとても貴重だからこんな事に使わなくても良いのに!
過保護なんだって!
皆の視線が生暖かいんだけど……
氷が冷たくて気持ちよかった。
「有難う。お兄様」
「気にするな」
私がお礼を言ったらお兄様はぶっきらぼうに答えてくれたけれど、いつもは物静かだけれど、やたらと私に過保護なお兄様だった。
私はお兄様の横で熱で熱くなりながら燃える火をじっと見つめていた。
アインに過保護なお兄様でした。
終わらなかった。
続きをお楽しみに!








