畦作りで私の土魔術はまたしても役立たずでした
私はお兄様が聖女の大きな胸に魅了されて、私を無視したことが中々許せなかったが、開墾の作業は待ったをしてくれたなかった。
開墾地は取りあえず焼き畑ならぬ焼き田をしたので、今度は畦を作って、田んぼの境をはっきりとして水が漏れないようにしなければいけない。
畦は10メートルかける100メートルの地を一反にして作って行くことになっていた。
途中に水路も入れて、セバスが設計してくれたのよ。
後はそれを作るだけだ。
騎士団は最強の作業員だった。
騎士団は計10個大隊あるので一個大隊で1区画担当という事でお兄様が10区画にわけてくれた。
各大隊の責任区間を決めていけばきちんとやってくれるだろう。
「ようし、畦の作り方は任せろ」
どこで習ったのか、お兄様は自慢げに言いだしてくれた。陰が目印に畦の4隅に杭を打ってくれたのでその杭を基準にしてお兄様が率先して大隊長達を使って周りの土を起こして掘って人の歩ける位の畦を作っていってくれた。
お兄様が畦を山盛りしてくれたところを陰が固めていく。
「粘土状の土なので水に少し練って固めたら良いんじゃ無いかな」
「なるほど、水に濡らせば良いんですね」
私の言葉に横で見ていたホレスが感心して頷いてくれた。
「ホレス、アインに近すぎるぞ」
そこにいきなり不機嫌そうなお兄様が注意してきたんだけど、
「近すぎることはないでしょ。私は聖女みたいに胸をお兄様に押しつけていないんだから」
むっとして私が睨み付けると、お兄様は青くなって、
「いや、アイン、それはだな……」
「ふんっ!」
お兄様が言い訳しようとしたが、私は無視した。
「あっはっはっ、暗黒竜も逃げ出すオーガスト様もアデライン様には勝てないんですな」
バージルが笑い出してくれたが、
「おい、バージル笑い事じゃないんだぞ」
お兄様がむっと睨み付けていたが、
「まあ、喧嘩されるということはそれだけ仲が良いという事でよろしいではありませんか? のう、セイラ」
私の横にいるセイラにバージルが同意を求めてくれたが、
「傍にいるお世話係はお二人が喧嘩されたらもう大変です」
セイラが肩をすくめてくれたんだが……そんな大きな迷惑はかけていないはずよ……うん!
私は首を振った。
「本当ですな。俺にまでとばっちりが飛んで来て大変ですし」
ホレスまで言いだしてくれたんだけど……とばっちりって何よ?
私は少しむっとした。
「ふん、雑談はそこまでだ。時間がないから、直ちに各部隊に分かれて畦作りにかかってくれ」
「「「はい!」」」
お兄様の言葉に騎士達は皆一斉に頷いて作業地に散っていった。
「ようし行くぜ!」
皆身体強化してスコップ片手に畦を作る者が大半だった。
「ようし、今度こそ私の出番よ」
私は土魔術で畦を作る気満々だった。
「あのう、アデライン様。やるだけ無駄かと」
セイラが私を残念そうに見てくれたが、この前あれだけやったのだ。肥料にするために土を削るのも頑張ってやったはずだし、大分出来るようになったはずだ。
「出でよ、畦道!」
私は大声で叫んだのよ。
ポコッ
幅30センチ長さ3メートル位の畦道が出来ていた。
今度は幅が30センチもあるのだ。これは大きな進歩だと思う。
「見て見て、セイラ、できたじゃない!」
私がセイラに自慢したら、
「あのう、アデライン様、高さが少し足りないのではないかと思いますが」
セイラが残念そうに指摘してくれた。
そうだ、高さは相変わらず1センチ位しかなかったのよ。
うーん、でも幅が30センチと30倍になったのに!
でも、これじゃあ全然使えないじゃないのは事実だ。水入れたら一瞬で水没してしまうし……
「なるほど。土魔術を使うのですね」
ホレスが感心して頷いてくれた。
「よし、俺も出来るかどうかやってみますよ」
「ホレス、すぐには難しいと思うわよ」
私は一応ホレスに注意してあげた。
「判ってますって。でも、やるだけやってみます」
ホレスは腕まくりすると、
「イデよ、畦道!」
詠唱してくれた。
ドン
私が驚いた事に、高さが30センチ、幅30センチ長さ1メートルの、立派な畦道が出来たんだけど……
「アデライン様、出来ましたよ」
「す、凄いです、ホレス様!」
横で見ていたセイラが感激していた。
「嘘!」
私は唖然とした。
ええええ! 何なのよ、これは?
必死にやった私の畦道は高さが1センチで、少しやっただけのホレスの畦道が高さ30センチって……私の自信が木っ端みじんに砕け散った瞬間だった。
私は頭を抱えてしまった。
「まあまあ、アデライン様、こんな事もありますよ。ホレス様は土魔術もお得意だと思いますし」
「そうですよ。アデライン様。アデライン様の畦道は長さが3メートルもあるじゃないですか。俺のはたった1メートルしかありませんから」
ホレスはそう言ってくれるが、こいつの一番得意な魔術は確か火魔術のはずだ。
それに対して私が唯一使える魔術が土魔術なのに……
私は泣きたくなった。
「出でよ、畦道!」
それもホレスはやる度に畦道の長さが延びていくんだけど……
ホレスはあっという間に10メートルの長さの畦道を作れるようになって引く手あまたの人気者になってくれたんだけど……
「良いのよ、良いのよ」
私はいじけた。
「おい、アイン、いつもの目印作ってくれ」
お兄様はおそらく落ち込んだ私を慰めてくれようとしたんだと思う。
でも、私はそんな風に取れる大人の心は持ち合わせていなかった。
「何よ! お兄様の馬鹿!」
私は持っていたノートをお兄様にぶちまけて、駆け出したのだ。
本当に許せない!
完全に切れていたのよ。
そんな私を遠くから監視している人影があるのに私は気付かなかった。
駆け出したアイン。
次は迫るアインの危機です
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