お兄様視点 可愛い妹を傷つけてくれた王子から金貨1万枚と最果ての地の領主兼を分捕りました
俺は暗黒竜を叩き殺す位にはアインを大切に思っていた。
いや違う、アインのことは俺自身の命よりも大切だと俺は思っていた。
二度と再び妹を失うことは俺には耐えられないことだった。
なのに俺自身の修行が足りなかったんだろう。
聖女にしてやられてしまったのだ。
聖女メリンダ・エグモント、ピンク頭の淫乱聖女だ。免疫のない王子やその周りにいる高位貴族の令息にベタベタと振れて、奴らを虜にしていた。特にその大きな胸は絶大な力を発揮していた。
引っ掛かる奴らを俺は馬鹿にしていた。
最初は俺もメリンダのことなど、なんとも思っていなかった。
いや、むしろ俺の可愛い妹の婚約者であるエドワードの傍をうろつく不届き者だと認識していた。
当然最初の対応は塩対応だった。
エドワードは一応は俺の妹の婚約者だから無碍には出来なかったが、妹を泣かすなら叩き潰すと心に決めていた。
そんなだからメリンダは最初から俺の頭では敵だと認定していた。
だから、虜になるわけはなかった……
なのに、なのにだ。
俺はメリンダに癒やされてしまったのだ。
最初は教室だった。
メリンダが転けて俺に抱きついてくれた。
「俺様に触れるな!」
俺はそう叫ぼうとして、言葉が出なかった。
頭がぼうっとして、言葉が発せなかったのだ。
と言うか大きな胸を背中に押しつけられて、俺は真っ赤になっていた。
変だ!
胸なんて小さなアインの胸の大きさで十分だ良いと思っていたのに!
何故メリンダのデカパイを押しつけられて、赤くなる?
後で判ったのだが、メリンダの胸を俺の体に押しつけられると、メリンダを叱責したり反対しようとすると頭の中にもやがかかりそれが出来なくなる。
メリンダは聖女と言うよりも胸から魅了を発する妖怪だった。
俺はその妖怪メリンダによって蜘蛛の糸に絡め取られてしまったのだ。
そして、命より大切なアインよりもメリンダの方についてしまった。
本当に最悪だった!
それからは俺はふらふらとメリンダについていき、学園と王宮で生活するようになった。
ますますアインと疎遠になってしまった。
そして、疎遠になればますますメリンダの俺に対する影響力が大きくなってくれた。
俺はメリンダに魅了されて、アインに対してもきつく理不尽に当たってしまった。
最悪の男になってしまったのだ。
「お兄様!」
と万全の信頼を俺に向けてくれていたアインに対して、
「貴様はメリンダが平民だからといって虐めるなど最低だな!」
俺はそんな酷い態度を取っていた。
それもこれも俺を魅了してくれたメリンダのせいだ!
俺はあと少しでアインを破落戸どもに襲わせるところだった。
そんな事をしたと後で知れば、俺は俺自身を許せなかっただろう。
暗黒竜ですら叩き斬った俺様がメリンダの魅了にかかってしまうなど、本当にどうしようもなかった。
断罪の時だ。
何をトチ狂ったのか俺様のアインの足を、ビリーが引っかけて転かせてくれた。
本来なら、そのアインを助けて、ビリーのクソボケを殴り倒す、いや、剣で叩き斬ってやらねばならなかったのに、俺は何もできなかった。
その上、転けたアインの顔を、あろうことかエドワードが蹴飛ばしてくれたのだ。
しかし、アインの美しい顔が、血まみれになって蹴飛ばされたのを見た瞬間だ。
津波に呑み込まれる愛韻の姿がフラッシュバックした。
パリンッ
その瞬間、今まで俺様を縛りつけていたメリンダの魅了が弾け飛んだ。
次の瞬間、俺は血だらけになって蹴り飛ばされたアインをこの手で受け止めていた。
俺は傷ついたアインをこの手でギュッと抱きしめていた。
「俺の可愛い妹を傷つけたのは誰だ?」
そして、氷のような冷たい声で王子とビリーを睨み付けてやったのだ。
アインを蹴飛ばしてくれたエドワードと、最初に足を引っかけたビリーが、ぎょっとした目で俺を見てくれた。
でも、俺はまだ完全に復活していなかった。
俺が完全に正気だったらアインに敵対した奴ら全員を宝剣ムラサメで叩き斬っていたと思う。
俺の可愛いアインに手を出してくれたのだ。怒りの鉄槌を下すのは当然だったろう。
しかし、まだ、メリンダの呪いが多少は残っていたようだ。
「オーガスト様。いかがなされたのですか? 私はその悪役令嬢のアデラインに破落戸をけしかけられておもちゃにされるところだったのですよ」
妖怪が何か言いだしてくれた。
「そうだ。オーガスト。メリンダはアデラインに傷物にされようとしたのだぞ」
エドワードが勇気を振り絞ったのか、何かほざいてくれた。
愚かな奴らだ。俺の怒りの炎に油を注ぐとは……
「俺の妹を勝手に呼び捨てにするな!」
俺は二人を睨み付けていた。
「「ヒィィィィ!」」
エドワードとビリーは俺の殺気をもろに喰らって失禁していた。
二人のスラックスが尿と便で汚れていた。
匂いも少しする。
汚い奴らだ。
俺の威圧位で失禁するとは……
怒りが少し失せた。
「ふんっ、確かにアデラインが悪いところもあったろう。しかし,エドワード、元々アデラインという婚約者がいながらその女とイチャイチャしていた貴様も悪かろう」
俺の言葉にエドワードは何も言い返せなかった。
残念だ。言い返したて来たら怒りにまかせて叩き斬ってやったのに!
「オーガスト様!」
そこで妖怪婆が俺に近寄ろうとしてくれた。
そのデカイ胸を俺に押しつけて再び魅了にかけようとしたんだろう。
「寄るな! 女! それ以上アデラインに近づくと命の保証はせんぞ」
俺はメリンダを睨み付けた。
でも、さすが妖怪だ。俺の威圧を受けてもびくともしない。エドワードやビリーなら失禁していただろう。
「すまぬ、アデライン。お前をこの様な目に逢わせて」
俺はこんな時に一応アインに謝っておいた。
許してくれるとは思っていなかったが、血だらけの顔が痛々しい。
俺は再び怒りがわいてきた。
でも、俺の言葉になんとアインが頷いてくれたのだ。
俺は少しほっとした。
ここでアインが許してくれなかったら、元凶のメリンダとエドワードとビリーは斬って捨てる所だった。
まあ、今はアインを抱えている。
「絶対に後で仇は取ってやるからな。ここは我慢してくれ」
俺は気絶して目を瞑ったアインに約束した。
そして、このままアインを抱えて出て行こうとした。
「どこに行く、オーガスト、アデラインは最果ての地に追放だぞ」
その俺様に向かってエドワードが言い放ってくれた。
「何だと!」
俺は怒りのあまり振り返った。
「メリンダに破落戸を使って襲おうとしたら最果ての地に追放すると決めたであろうが」
そう叫ぶエドワードに俺が近付くと、
「ヒィィィィ」
エドワードが腰砕けた。
俺の怒りの形相に気付いたのだろう。
「エドワード、貴様とアインの婚約は王家とダンブリーズ公爵家との契約だ。その婚約者がいながら淫婦メリンダと淫らな関係にあったのは重大な契約違反だ。仕方が無い。慰謝料金貨一万枚と最果ての地の領主をアデラインにするという事で許してやろう」
俺は寛大だった。
「な、何だと、何故そうなる?」
エドワードがすぐに認めれば良いのに反抗してくれた。
「貴様。俺のアインの顔を傷つけた罰でここで処刑してやろうか」
俺はアインを片手で抱え直して宝剣を抜き放っていた。
「ヒィィィィ、止めろ、オーガスト、判った貴様の言うことを聞く」
「ビリー、即座にその旨書いた契約書をこの場ですぐに作れ」
「えっ、そんな事が」
「宰相の息子だろうが、それくらい出来るだろう」
「ヒィィィィ、判りました」
俺が剣先をビリーに向けるとビリーは契約魔術の紙を取り出してくれた。
そして、俺はビリーにその旨を魔道具のペンで契約魔術の紙に書かせて、エドワードに無理矢理サインさせた。
その紙を受け取ると、俺はアインを抱いてその場を去ったのだ。
お兄様の魅了解けるの巻でした。
続きをお楽しみに!








