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国境警備隊長の独り言 今まで俺様に従順だったダンブリーズの奴らがいなくなって、国境守備隊は潰走しました

 俺様はガーバン子爵だ。

 騎士としてずっとこの北の国境を守ってきた。昔はノルディンの蛮族どもが暴れて大変だった。本当に命がいくつあっても足りないと思えるほど激戦だった。そのノルディン族も俺様に恐れをなしたのか、近頃は静かになってきた。


 最近は警備の途中にカードゲームが出来るほどだ。


 本来はいけないのだが、総司令官は俺様だ。それに俺様は子爵様なのだ。爵位持ちの騎士など俺様以外にはほとんどいないはずだ。

 たまに規律にうるさいダンブリーズの騎士達がうるさく言ってきたが、俺様は無視した。ダンブリーズの奴らもそれ以上は何も言って来なかった。

 まあ、俺様は王子殿下の覚えめでたいガーバン子爵様だ。ダンブリーズの奴らも爵位持ちがいるかもしれないが、いてもせいぜい男爵止まりだろう。

 子爵の俺様に逆らえる奴など誰一人いないはずだ。



 そんなある日だ。

 俺は国境の砦の国境警備隊の隊長室で部下達とカードゲームをしていた。


 基本的に国境の砦の城門や城壁の警備は後からやってきたダンブリーズの奴らがしていた。

 元々いる国境警備隊の俺達は本部で待機だ。

 俺達はダンブリーズの奴らがやられた後に出撃する予備兵力というか、最後のとっておきの精兵だった。


 だから、基本的な戦闘は全てダンブリーズに任せていた。


「ガーバン隊長。ダンブリーズの奴らが遠征に出るみたいですぜ」

 部下の一人のジムが慌てて国境警備隊の隊長室に入ってきた。


「ノルディンの奴らの動きが怪しいのか? 俺は何も聞いてないが、貴様等は何か聞いたか?」

 俺は部下達を見回した。

「いいえ」

「何も聞いてませんぜ」

「変ですね。ノルディンの奴らが変な動きをしているとは聞いてませんよ」

 部下達が皆首を振ってくれた。


「ジム、そういう事だ」

 俺はジムに向かって首を振っていた。


「しかし、奴らは俺達に城門と城壁の警備を頼むと依頼してきたんでさ。それも早急に砦から出るみたいですぜ。どうします?」

 ジムは慌てていた。嘘を言っているようにも見えない。


「仕方がない。俺がバージルの所に行って出撃を止めさる」

 俺はジムの顔をうんざりとして見ると立ち上がった。


 ダンブリーズの部隊の隊長のバージルは頑固だから一度こうと考えを決めたら中々結論は変えまい。部下が行っても言うことを聞くはずはない。王子に任命された警備隊長の俺様が直接駄目だと命じれば言うことを聞くはずだ。


 俺はこの時まではまだ余裕だった。

 外套を取ると部下達を引き連れて砦の中の一角にあるダンブリーズの奴らの宿舎に向かった。

 そこでは兵士達が急いで出発の準備をしていた。


「おい、バージルはどこにいる?」 

 俺はその中の一人に聞いていた。


「貴方は誰だ?」

 その騎士らしき男はあろうことか俺を胡散臭そうに見てくれた。


「おいおい、貴様新入りか?」

「そうだ。閣下はこの砦の警備隊長様だぞ」

 部下達が色をなして怒りだした。


「ああ、警備隊長のくせにカードゲームで遊んでいる役立たずか」

 しかし、男は平然と俺達の悪口を言い出してくれた。


「き、貴様、俺はガーバン子爵様だぞ」

 むっとして俺が言い返すと、

「それがどうした? あの辺境の地にあるガーバン領だろう? ちなみに俺も子爵なんだが」

 男が言い返してきた。

「嘘をつけ」

「貴様に嘘をついてどうなる? 我らはこのグレナン王国、建国の当時から武のダンブリーズと言われたダンブリーズ騎士団だ。当然これだけいれば子爵や男爵はゴロゴロいるぞ。

 ちなみに俺の名はハリー・ケイマンだ。二代前の近衞騎士団長が我が祖父だ。名前位聞いたことがあるだろう?」

 男の言葉に俺は唖然とした。阻止取り巻き達も唖然としていた。


「おいおい、ハリー、そんなに虐めてやるな」

 そこにやっと話のわかるバージルが来た。


「良かったバージル」

 俺はほっとした。


「いかがされたのですか? 警備隊長?」

「その方等が出撃すると聞いたのでどういう事か聞こうと思ったのだ」

 俺はまだバージルと交渉すれば出撃を止められると思っていた。


「警備隊長は聞いておられないのですか?」

 バージルは驚いて俺を見てきた。

「その方から何も聞いていないから慌てて来たのだが」

 俺は少しむっとしてバージルを見た。


「王家からも何も?」

「ああ」

 バージルは不思議そうに俺を見てきた。


「じゃあ、何故我々この国最強のダンブリーズ騎士団がこの地にいるのかも知らないのですか?」

「ああ」 

「はああああ」

 俺が頷くとバージルは盛大にため息をついてくれた。


「元々我々がこの地にいるのは10年前に我が領地の姫と第一王子殿下が婚約されたことに端を発しています」

「ダンブリーズの姫と言われるとあの我が儘で聖女様を害しようとしたので、王子殿下から婚約破棄されて断罪された悪役令嬢のアデラインのことか」

 俺がそういった瞬間だ。


 ダン!

 と言う大きな音とともに俺の顔の横をハリーが投げた短剣が飛んでいった。


「我が姫様を貶めるな。次は無いぞ」

 俺の喉元にはバージルが抜いた剣が突きつけられていた。


 ジャーーーー

 俺はあまりのことに失禁していた。


 コクコクとバージルに頷くしか出来なかった。


「その婚約の時の王家からの依頼でこの地に我らは来たのだ。我らはその盟約に則って10年前にノルディン族の主力を撃破して以来、煩いノルディン族を沈黙させていた。ここまでは判るか」

 バージルは剣で俺の喉を軽く突いてくれた。

 俺はコクコクと頷くしか出来なかった。


「なのに、何故か第一王子は我が領地の姫との婚約を破棄してくれた。王家の方から盟約を破ってくれたのだ」

 俺はバージルの言葉に唖然とした。


 今まではバージルは俺達を立ててくれていた。出撃も大半はダンブリーズの者達だけでこなしてくれていた。

 それもこれもあの悪役令嬢と王子の婚約があったからだとすると、もしそれが無くなってダンブリーズの奴らが働くなったらどうなる? それ以前にここにいなくなれば…………

 俺は顔面蒼白になった。


「いや、しかし、この前ここに視察に来られたエイブラム・ダンブリーズ殿は騎士団をずっと常駐させるとおっしゃられていたぞ」

 そうだった。今のダンブリーズ公爵はエイブラム殿だ。俺はほっとした。


「貴公は何を言っているのだ。エイブラムなど単なる公爵代理で子爵に過ぎん。我ら騎士団の主はオーガスト様だ。そのオーガスト様からすぐに来いと昨日に連絡があったのだ」

「な、何だと」

 俺はその言葉に唖然とした。


「閣下、出撃準備整いました」

 その時に後ろからバージルとよく似た若造が顔を出した。


「いや、待ってくれ、バージル殿。俺は直ちに王家の指示を仰ぐから、少し待ってくれ」

 俺は必死に頼み込んだ。

「不要だな。我が主からはすぐに来いと指示を受けている。例え王家といえども、それを止めることは出来まい」

 そう言うとバージルは自分の馬に乗ってくれたのだ。


「いや、待て、これは国境指揮官としての命令だ」

 俺は必死に言い張った。周りの部下達に合図したが、誰も俺の周りには寄って来なかった。


「ふんっ、この国最強のダンブリーズ騎士団の行く手を止められるのならば止めるが良い。全軍騎乗」


 ダン!

 騎士達が一斉に全員騎乗した。


 その威圧感は凄まじいものがあった。


 俺が止めるまでも無く王都へ向かう城門が勝手に開けられていた。

「ガーバン殿。すぐに王都に援軍を呼ばれる事じゃな。我らがいなくなるのはすぐにノルディンの奴らは嗅ぎつけるぞ」

 そう警告するとバージル達は堂々と砦から出ていったのだ。

 俺はそれを呆然とただ見送ることしか出来なかった。




 その後、俺は直ちに王都に援軍を依頼した。

 しかし、何故ダンブリーズの奴らがいなくなっただの、呼び戻せだの訳の判らない指示しか来なかった。


 そうこうしているうちにダンブリーズがいなくなっていることがノルディン族の奴らに判ってしまった。

 その後のノルディン族の攻撃は圧倒的だった。

 ここ10年間ほとんど実戦に出ていなかった兵士達は全く使い物にならなかった。

 兵士達の過半が殺されて、生き残った俺達は砦を捨てて、這々の体で何度も殺されそうになりながら逃げることしか出来なかった。

ここまで読んで頂いて有難うございました

やはりダンブリーズ騎士団がいなくなって国境の砦は1週間も持ちませんでした……

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私のお話、ここまで読んで頂いて本当にありがとうございます。

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しかし、その途端に態度を180度変えて迫ってくる第一王子をうざいと思うフラン。
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