国境にいるはずの公爵家の騎士団が駆けつけてくれました
「本当にオーガスト様ったら、待てが出来ない飼い犬みたいに、あんなことをアデライン様にして」
朝食をお兄様に食べさせられて終えた私はプリプリ怒っているセイラに連れられて部屋に戻った。
「セイラ、いくらなんでもお兄様を犬に例えるのは、酷くない?」
私は思わず笑いそうになっていた。
「アデライン様、笑い事ではありませんよ。私も気をつけますが、オーガスト様には気を付けてくださいよ。決して気を許さないように! 夜中にいくら親しいとは言えオーガスト様がアデライン様のベッドに潜り込もうとしてきたら大声を上げてくださいね」
「うーん、でも、セイラ、私が寝ぼけて間違えてお兄様のベッドに潜り込むかもしれないし」
この前のドラちゃん騒動の時がそんな感じだったし、お兄様が間違えて私のベッドに潜り込む可能性よりも絶対に私が間違う可能性の方が高いと思う。
「アデライン様。いくら兄妹とはいえ、ベッドを間違うなんて普通はあり得ません」
「そうなんだけど……」
セイラに呆れられたが寝ぼけた時まで責任取れないのよね……
「アデライン様、いくら兄妹とはいえ普通はあり得ませんよ」
私を見てセイラは大きなため息をついてくれた。
「オーガスト様も男ですからね。間違いが起きないとも限りません」
「まあ、セイラ、お兄様も男って言っても私達は兄妹よ」
私が呆れてセイラを見たら、
「例え兄妹であってもです!」
セイラにきつく言われてしまった。
本当にセイラは心配性だ。私に胸なしとか言うお兄様は昔から私に辛辣なのに!
「本当にアデライン様はおねんねですからね」
何かセイラに酷い事を言われているんだけど……
「それでアデライン様。今日もこんな地味な服着られるんですか?」
私が選んだ薄い黄土色の色の服を見て、セイラがため息をついてくれたが、
「良いのよ。今日も作業するんだからこんな感じで」
足下も当然スカートで無くて乗馬服みたいなスラックスだ。
「まあ、この服装を見てオーガスト様も欲情されることは無いとは存じますが」
「当たり前でしょう。私のお兄様なのよ」
本当に色気のない妹だくらいは言われそうだけど、今は良いのよそれで! エドワードに振られた所だし、しばらく恋愛はこりごり何だから!
でも、やっぱり胸の大きさでメリンダに負けたからだろうか?
嫌なことを思い出していた。
セイラはそれでもお兄様も男だから気をつけた方が良いと言ってくれるんだけど、私を未だに子供扱して食べさせてくれるお兄様が私を女だとみることなんて絶対にあり得ないわよ!
案の定私を見たお兄様は何も言わなかったし……お兄様も聖女に夢中になっていたから絶対に胸の大きい女が良いのよ!
そのむかつくお兄様とセイラとセバスチャンと私の4人を乗せた馬車は開墾予定地に向かった。
最果ての地を流れているのが大河、最果ての川と呼ばれている。正式名称はラストリバーだ。
最果ての地は北側に高い山脈が聳え立っていて、ラストリバーはそこから流れてくる。
今は丁度雪解け水で多い。
川の水温はここまで流れる間に結構暖かくなっているがそれでも冷たい。ても、山の豊かな土壌の栄養も含んだ川の水は恵みの水なのよ。
この地にもこの川の水の恩恵を承けて昔は大きな村もあったらしい。
今では寂れた村が一つあるだけで、最果て川のデルタ地帯は何もない湿地帯として続いているだけだけど……いずれ豊かな穀倉地帯になるはずよ。
この何もない湿地帯を私が開墾して、むかつく聖女に成り代わってこの国の救世主になってやるんだから!
海に近付けば塩害もあると思うので、取りあえず、上流域全体に広がっている湿原を開墾する計画ことにしたのよ。
ここには広大な湿地帯が広がっている。
その上に生えている草などをまず燃やすことにした。
範囲を決めて、セバスが陰を使ってマーキングしてくれる。
ラストリバーの西岸に広がっている湿原が開墾範囲だ。
東をラストリバーが流れて、西には小さな小川が流れていた。
その間の広大な土地が開墾予定地だ。
端の所をこれ以上延焼しないように、お兄様達が鎌を抱えて草を刈ってくれた。
私も少し手伝おうとしたが、「アインは危険だから鎌は使うな」お兄様にあっさりと禁止されてしまった。
何よ、危険だからって、私は鎌を持っても周りの人に向かってむやみやたらに振り回したりしないわよ!
それは昔は、私の事を胸なしってお兄様が言ったから剣を持ってお兄様を追いかけ回したことがあったけれど、もうそんな子供でもないんだから!
私がブツブツ文句を言っていたら、
「その危険じゃないと思うんですけど」
「オーガスト様も相変わらずアデライン様に過保護ですな」
セイラとセバスが何か言ってくれていたけれど、意味がわからないわ!
川と小川の間は1キロくらいあった。
その間に延焼を止めるためとその後に使うために幅10メートル位の水路を造ろうという計画だった。
でも、ここにその水路を作るには人を動員しないと難しいのでは無いかと私は思っていた。
「大丈夫だ」
ってお兄様は言い張ってくれたけれど、お兄様が体力強化をかけて、陰数名と一緒に草を刈っても1時間で100メートルも進まなかった。この後に水路を掘らないといけないんだけど……
「お兄様、やっぱり村人にも手伝ってもらった方が良いんじゃないの?」
休憩の時に私が言い出した。
「そうは言っても村人も穀物の種まきとかの準備で忙しいだろう。家畜の餌の米の種籾もこちらが買い取ったんだから、代替品を手配しなければいけないし、無ければ作らないといけないんだ。こちらを手伝うのは難しいと思うぞ」
「でも、どうするのよ? 種籾は2週間も水に浸したら蒔かないといけないのよ」
私が問題点を指摘した時だ。
だっだっだっだっ!
遠くから馬の集団が駆けてくるのが見えた。
「えっ、エドワード達が追いかけてきた?」
私を捕まえに来た兵士達だろうか?
私は慌ててお兄様の影に隠れた。
「やっと来たか!」
「えっ、敵じゃ無いの?」
私はお兄様の声に目を凝らした。
「オーガスト様!」
先頭の白髪の大男がお兄様に声をかけてきた。
その顔に見覚えがあった。
「バージル!」
私は驚いた。
それは国境のノルディン族に備えていた我がダンブリーズ公爵家の騎士団長だった。
「これはこれはアデライン様。綺麗になられましたな」
迎えに出た私はぽかんとしてバージルを見上げた。
「でも、なんで国境にいるはずのバージルがここにいるの?」
「はああああ! そんなのは決まっておりまする。俺達はアデライン様があのポンコツエドワードの婚約者だから国境の警備に任じておったのです。婚約の時の約束事でしたからな。それをあのボケナスがアデライン様を振ったとか。信じられませんな。向こうが約束を破ったのです。我々が聞く必要はありますまい。国境警備の奴らの制止を振り切って、出てきました!」
平然とバージルが言ってくれるんだけど、今まで国境の蛮族ノルディン族はわが公爵軍がコテンパンにやっつけていたので、大人しくしていたのよ。それがいなくなって大丈夫なんだろうか?
「ふん、そんなのはアデライン様を振ったエドワードが考えることでしょう。聖女とやらを使って押さえたら良いんではないですか? 男を取っ替え引っ替えしているみたいですから、ノルディンの奴らも喜ぶでしょう!」
バージルが凄いことを言ってくれたけど、それもそうだ。私がわざわざむかつく聖女の事を心配してやる必要もないか! そうか、聖女は男を取っ替え引っ替えしていたのか! じゃあ、お兄様も聖女の大きな胸に癒されていたのかもしれない。本当に最低だ!
私がムッとして、お兄様を睨み付けると、
「おい、アイン! 俺は聖女とそんな関係になっていないぞ」
お兄様が慌て出したが、どうだか判ったものではないわ! 本当だ、セイラの言うように私も気をつけよう!
私はお兄様を睨み付けたのよ。
「おいおい、バージル、お前が余計なことを言うから」
「そう言われましても、聖女が淫乱なのは事実ですからな」
「アイン! 俺と聖女は何もないぞ。」
お兄様が必死に言い訳してくれたが、そんなの判ったものではなかった。
私はふんっと明後日な方向を見てやったのよ!
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
この国最強騎士団がアデラインの元に馳せ参じました。最強騎士のお兄様に最強の騎士団が合流しました。ひょっとして、領主のアデラインは最強?
そして騎士団が抜けて国境は果たして大丈夫だったのか?
続きをお楽しみに!








