表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
7/18

ある少女の嘆き4

(スポットライトがバッと当たる。

ボルドーのパーカーのフードを深く被った「私」が、

舞台中央でスマホを片手に、天を仰いで絶叫する。)


「……あーあ、マジで最悪! 全人類、

今すぐ視覚を遮断してくんない!?

見てよ、この並木道! どこまで続いてんのこれ。

フルマラソン? 私、いつからアスリートになったわけ?

2キロ? 3キロ? いや、体感的には地球一周分はあるね。


(一歩、大げさに足を引きずりながら歩く)


このヒール、選んだ自分を殴りたい。


足首の靭帯、今ごろ悲鳴を通り越して絶唱してるわ。

一歩歩くごとに、

私の細胞が数千個単位で死滅していく音が聞こえる……。



で、隣にいるこの『幸せの権化』

みたいな男を見てよ。


なんて言ったと思う?


『あぁ、このままずっと、君と一生歩いていたいな』

……だって。


(客席に向かって、心底軽蔑したような顔で)


正気? あんたの脳みそ、この電飾の熱で溶け出した?


『一生』って何?


あんたの寿命、あと5分なの?

こっちは一秒でも早く座りたいんだわ。


駅前の、あの安っぽい赤いビニール張りのパイプ椅子でいい。

そこが今の私にとっての天国エデンなの。


(スマホを顔の前に突き出し、ライトを浴びるポーズ)


しかも、見てよこの自撮り! ライトの当て方、

致命的にセンスなさすぎでしょ。下から煽りすぎて、

私の顔、完全に事故物件の地下室に潜む怨霊になってんだけど。


『あ、可愛いね』


じゃないんだわ。眼科行く? 予約してあげようか?

私のベスト角度をミリ単位で把握してない時点で、

あんたの『愛』なんて、その辺のコンビニで売ってる

賞味期限切れのチキン以下の価値しかないのよ。


(スマホを激しくスワイプしながら、客席を睨みつける)


ハッシュタグ、『#クリぼっちの方がマシだった説』。

送信。ポチッとな。


あーあ、スッキリした。 画面の向こうで


『えー!幸せそうじゃん♡』

ってリプしてくる自称・親友たち。

あんたたちのその無責任な羨望が、

私のこの虚無をさらに研ぎ澄ませてくれるわ。


(隣で歩く「架空の彼氏」に向かって、

一瞬で『営業スマイル』に切り替える)


『……あ、ホントだね。私も、一生一緒がいいな♡』


(再び客席に向かって、死んだような魚の目で)


……ねえ、聞こえる? 私のOSが刻む、

この完璧な茶番劇のログ。

幸せっていうのはさ、感じるものじゃない。

こうやって、足の痛みに耐えながら、

死ぬほどブスな自撮りを量産して、


『私は今、世間が定義する幸せのど真ん中にいます』

っていうアリバイを作るための、拷問なんだよ。


さあ、あと何キロ? 地獄の並木道、アンコールはお断りよ。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ