土の章 序章 おぞましき王の記録
"Anima crystallus mentis est."
魂は精神の結晶
(本章)
その高潔な美しさは、
彼女が負うべき「呪い」そのものであった。
足首に食い込む鉄の鎖、泥に汚れたボロ布……。
過酷な奴隷の身にあっても、
母の肌は真珠のような光沢を失わず、
伏せられたまつげの先には、神聖なまでの気品が漂っていた。
領地の視察に訪れていた王が、
その異質な「輝き」を見逃すはずもなかった。
獲物を定める鷹のような目で彼女を射抜いた王は、
迷うことなくその細い顎を汚れた手で掬い上げる。
その瞬間、王の心に宿ったのは愛ではなく
、その神性を完膚なきまでに蹂躙したいという狂気であった。
王は自ら、母の手首に繋がれた鎖を乱暴に掴むと、
怯える彼女を強引に引きずり、
黒塗りの馬車の中へと放り込んだ。
扉が閉まる鈍い音とともに、
彼女の自由は永遠に失われたのである。
連れ去られた城の奥深くで始まったのは、
ただの種付けを目的とした、
言葉にするのもおぞましい凌辱の記録である。
王は彼女を、意志を持つ人間として扱うことは一度としてなかった。
ただの器、あるいは声を出すことも許されない家畜として、
その欲望を幾度も、幾度も叩きつけた。
一年という月日は、あまりにも残酷に彼女を塗りつぶした。
繰り返されるおぞましい行為の果てに、
母の心は完全に死に絶え、彼女はもはや、
光を失った瞳で虚空を見つめる「壊れた人形」へと成り果てていた。
王がその身体をどのように穢そうとも、
彼女はただ、冷たい石床に横たわるだけの動かない肉の塊に過ぎなかった。
だが、その死んだ人形の胎内に、
王の執着は皮肉にも根を下ろした。
拒む術すら持たぬ空虚な身体に、
忌まわしき命が宿る。
その子こそが、後の「あい」であった。




