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37 プラージャの街

プラージャの街には、三十基の小ぶりな塔と、結界が張ってあった。


今まで見た二つの街には結界は無かった。ここの魔法使い達が張っているのだ。その為、飛行魔法で塀を跳び越えることが出来ない。


「門から堂々と入るしかなさそうだ」

「身分証とか、確認されないかしら……」

「その時は何とか誤魔化すしかないな」


門には、人族の門番がいる。濃い緑の肌色の門番だ。髪は黒く目も黒かった。

――大丈夫だろうか、僕らとは色味が違い過ぎる。

ルシオ達が近づくと誰何された。

「何処から来た」

「北下区からです」

「ん? 北下区に人族がまだいたのか……お前等は討伐隊だな。街へ入ったらすぐに討伐隊組織に登録しろ。そうすれば仕事が出来る様になるぞ」

「はい、分かりました」


討伐隊組織の場所を探す振りをしながら街の中を見て回る。

住人の肌色は様々だったが白い肌色はいない。

一様に髪は黒く目の色も濃い色だった。


それほど大きくは無い街だが、街の東側には海岸が見えて、海風が吹き込んでくる。海を半円に取り囲んだ街だ。

海まで続く通りを真っ直ぐ進み岸壁に辿り付くと、そこには多くの小舟が舫っていいて、魚が水揚げされていた。


そこにいた漁師は青の肌に黒い髪黒い目だ。

「済みません。討伐隊組織の場所、教えてくれませんか?」

「あ゛ー? 何でここまで来た? あそこは西門のすぐ側だぞ。お前等、余所もんだな」

「はい、北下区からです」

「ああ、あそこはもうお仕舞いだっちゅう話だった。そうか、よくこの街まで辿り着けたな、街がなくなる何ざぁひでぇ災難だ」


彼は意外に友好的だった。鬼人なら絶対この街には入れて貰えなかったようだが、人族に対しては、門戸は開かれていると言うことなのだろう。


討伐隊組織の建物は何となく予想は付いていたが、ここの看板の文字がよく分からない。以前見て回った北区や北下区には文字が書かれた看板など無かった。鬼人達は文字が読めないためだろう。


「文字が読めないのはネックだな」

「そうね、何とか、覚えたいわ」


漁師から聞いた場所は、やはり目星を付けた建物だった。

討伐隊組織の門の前には、大勢の男達が五,六人ずつの隊列を組んでいた。

これから門外へ出て、魔物を討伐しに行くのだろう。


彼等を避け、討伐隊組織のドアを開けると、奥まったところにカウンターがあり、カウンターの奥では数人が忙しそうに仕事をしている。


――まるで市役所や銀行のようだ。


「こんにちは、登録をしたいのですが……」

「……え? あなた方、どちらの方?」

「北下区からのものです」

「まあ、珍しい、あそこに人族がいたとは。仕方が無いわね、こっちへ来て」


動物の皮で出来た紙を渡されたが、そこに書かれた文字が微妙に分からない。似ている文字もあったが、意味が同じとは限らないのだ。


「……あの、文字が……」

「ああ、そうね。外の街の人達は殆ど文盲だったわね。全く、魔物擬き達は知能が低くて嫌だわ! いいわ、口で言ってくれれば、私が書いてやるわ」


図書室に詳しく規約が書いた小冊子が置いてある――と言われたが、ルシオ達が文字が読めないと今知ったはずだ。

受付係はそれ以上の説明はしたくないようだった。その代わり討伐隊のグループに加わって教えて貰えという。


この受付係は不親切ではないだろうか。外の街から来た者に対して高圧的だ。鬼人達に対しても偏見があるようだ。

聞かれたのは名前と年齢、得意な武器。それだけだった。

銀色のドックタグを渡され、それで登録完了だった。

ソフィアが隣で質問している。


「え、字を習いたいの? ここに図書室はあるけど、文字は教えていないのよ。学校へ……ああ、その年では入れないわねぇ」

「ここの図書室へは入れますか?」

「え? ええ、登録していれば誰でも入れるけど……文字が読めなくては意味が無いでしょう?」

「何とか自力で覚えます!」


ソフィアならすぐに覚えるだろう。

二人で図書室に入り、本を写し始める。勿論、宝玉ヘだ。宝玉に入れ込んだ言葉に連動して次々に宝珠から解析できた文字が伝わってくる。


「これくらいで良いわね」

「ああ、やはり違いは少しだったな。これほど離れた場所なのに不思議だ。話し言葉も似ているし、どう言うことなのか……」

「魔導師の始祖は、大陸から来たのでしょう? ペケーニョの言葉は始祖が広めたのよ、きっと。これほど似ている言葉だと言うことは、その頃のペケーニョは未開人ばかりだったという事かもね」


小冊子を漁り、討伐者規約が見付かった。規約には、討伐グループのメンバーは二人から十人と決まっているようだ。

魔物を食べてはいけないとか、素材の三十パーセントは税金として納めるとか載っている。


「見て! 魔法鞄の貸し出しをしている。魔法鞄は使っても怪しまれないようね」

「魔法鞄はそれほど高価ではないようだな」

「魔法を使う者は、という項目があるわ。魔法使い以外でも使える者がいると言うことかしら?」

「魔法を使う者は、申請しなければならない。もし子どもに魔力があれば、すぐに申請しろと書いてある」

「ここでも、魔導師のように魔力が大きければ子が出来ないと言うことではないの?」

「そうかもな」


二人で此処にあった三十冊の本を機械的に写し取って行く。

数時間籠もってやっと終わりそうだ。


「もうここではめぼしいものは見付からない。魔法使いの情報がもっと欲しい」

ルシオ達は、今夜は宿を取ってそこの酒場で情報を集めようと話し合ったが、その時になって、漸くここの通貨を持っていないことに気が付いた。ロマゴの貨幣はここでは通用しないだろう。


「宿は諦めるか、だが何かあっても困る。金は魔物を討伐して稼ぐしか無さそうだな」


もう日も暮れてしまった。物陰に隠れ異空間に入る。木の洞の転位陣まで歩きアレハンドロに連絡をする。彼等はすぐに来た。

アレハンドロとお金のことを話し合うと、


「ふーん、そう言えばこっちの金がなかったな。魔物を狩るのは俺達に任せろ。取り敢えず今日狩った魔物を持って行け」

「そうだ、ルシオさん、魔物退治は私達にやらせて欲しい。高値が付く魔物を聞いてきてくれれば良いんだが」

「分かった」

 

魔物の本もあったが、まだ詳しくは見ていないし、買取額など分からない。

あの受付係は多分教えてくれないだろう。

優しかった門番なら教えてくれるだろうか。

 

次の日、門から入るとき、昨日と同じ門番に会えたので声を掛けた。


「昨日はありがとうございました」

「登録出来たようだな。ん、外で寝たのか?」

「はい、僕達一文無しなので。少し魔物を狩ってきました。でも、高値が付く魔物はどんな物か分からなくて」

「あの森の奥へ行けば幾らでもいる。特に高い値で取引されているのはグサノデセダと言う蛾の繭だ。三メートル位ある。それからは高価な糸が取れるんだ。後はアラエナという蜘蛛の魔物だ。これからも糸が取れる。だが、凶暴な魔物も沢山いるから、二人ではキツいぞ。どこかのメンバーに加えて貰え……って難しいか……外の人族だったな、だがお前達なら十分二人でやっていけるさ」


門番が何を根拠にやっていけると思うのか疑問だったが、彼の思いやりには感謝した。


「ああ、僕達二人で頑張ってみるよ、色々教えてくれてありがとう」

「何、大した事は無いさ。まあ、頑張れよ」


討伐隊組織の建物に入り、受付に魔物を取ってきたというと、


「左のドアの前で待っていて」


左側の奥まった場所にドアがありそこで待っていると受付係がやってきて付いてこいという。

大人しく後を付いていくと、中庭に出た。

中庭を抜けると、加工所と書かれた看板がある建物の前に着く。


「魔物をここに出して」


大人しく魔法鞄から狼の魔物を三体出す。


「三百ポトね」


ポトというのはこの国の貨幣だ。三十ポトあれば屋台で朝食が食べられるがロマゴの貨幣に換算するのは難しい。ここでは食事は高く付きそうだ。

もっと街の物価を調べてみないと何とも言えない。


「あの……ここから税金を引かれるのかしら?」

「え、そ、それは。今回は見逃してあげるわ。初回だもの……はい、お金よ。後は私に任せて」


討伐隊組織を出て、宿屋の料金を調べたが、一泊五百ポトだった。これでは全く足りない。


「森へ行くか」

「……そうね」


森の奥深くに入り、アレハンドロ達に今朝、門番に聞いた情報を教えると、アレハンドロ達が森の中へ走って行った。

彼等が魔物と戦っている間、ルシオ達は異空間で移してきた本を詳しく見ることにした。

片っ端から本の内容を入れ込んだため、まだ整理出来ていない。

二人で、じっくりと読み込んでいく。

討伐隊の成り立ちや、魔法使いの役割などを見ていると、この街での彼等の立場が分かってきた。


魔法使いは貴族のような位置にいるようだ。

そしてこの街は近隣の街を治めている中心と言うことで、王都のようなものだと分かった。

ここはヌエボトニス国と言われている東岸沿いの細長い国ようだ。

ドルから聞いたトニス国から逃れてきた国民が起こした国なのだ。この街は識字率が高い。教育が行き届いている。


子どもは十歳になると二年間文字や計算、歴史を学び、各人の能力で仕事を振り分けられるようだ。

魔力があれば、適性の有無は関係なく良い仕事に就けるようだ。中には与えられた仕事が嫌で、討伐隊に入る者もいるようだが、少数派だ。


一番多いのは農民だ。農民は塔の農地を管理している。次に多いのは討伐隊の人口で、その次が漁師、商人と続く。

一番上は役人、と言う風にピラミット型の一般的な社会構造だ。

ここではトップは魔法使い達だ。

仮に子どもがいたとしても魔力が無ければ、親と同じ仕事には就けない。

世襲制ではないようだ。

魔法で農地や結界を保っているのだから当然だろう。

だが、一番のトップ、国王の立場の人は百十年前から変わっていない。


「ここの国王は凄い長生きなのか、それとも呪いの術を施した魔法使いなのか?」

「では、かの大陸の魔法使いが国王と言うこと?」

「分からないが、そうかもしれない。会うことは難しそうだな」


アレハンドロ達から連絡が入った。異空間の外に出てこいという。

ソフィアと二人、森に出て結界を張った。間もなくアレハンドロ達が現れ、異空間収納から、狩ってきた魔物を次々と出してみせる。


「異空間の中でも良かったのに何故ここに出した?」

「魔物の悪影響が、異空間にどんな影響があるかも知れないと考え直したんだ。念のためだ」


ソフィアは、彼等の狩ってきた魔物を見て、


「この繭の魔物とアラエナという蜘蛛の魔物、それとこの狼三体だけでいいわ。沢山持って行っても無駄に注目を浴びてしまいそうよ」

「そうだなそうしよう」

ルシオは自分が作った魔法鞄へ三体の魔物を入れ、後はアレハンドロにまた収納して貰った。


「じゃぁこれから別行動で良いか?」


アレハンドロ達はまだ、この森で魔物を狩りたいという。

彼等の目的は、出来るだけ多くの種類を狩って、鬼人達に魔物の名前や性質を聞くためのものだ。

ここの魔物は、ロマゴの知識の魔水晶にはないものなのだ。

出来るだけ多くの知識を集め、知識の魔水晶に入れ込むことも神官魔導師の役目なのだ。


彼等とは、一週間後の待ち合わせ場所を決め別行動と言うことになった。

アレハンドロやクリステルは自前の異空間があるから森の中でも楽勝だろう。だが、ソフィアは、


「アレハンドロ魔導師は、調子に乗って魔物の肉を食べたりしないかしら。心配だわ」

「一度や二度食べたからと言って、魔物化はしないと思うよ。僕も一度くらいは食べて見たいと思っている。美味しいらしいよ、魔物肉は」

「まあ、そうなの? じゃあ、私も食べて見ようかしら」


ルシオは魔物肉の魔素がどのように人体に影響しているのか調べたいと思う。出来れば、折角狩った魔物肉を無駄にしたくない。

命を狩っているのだ。幾ら魔物といえども、この世界の生きものなのだから。魔素を浄化出来れば身体に影響なく食すことが出来る様になる筈だ。


鬼人達の身体が強いのは魔素の変質のせいだが、彼等は人間からかけ離れていくことを恐れてもいるのだ。何とかしてやりたいとルシオは思った。


ソフィアとルシオの知識欲は大いに膨らんでいる。

二人で、それぞれの考えを言い合う愉しい時間が過ぎていった。

そろそろ街へ帰る時間だ。

ルシオ達は魔法鞄を抱え街の門へ歩いて行った。




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