18 お宝ハンター桃! その2
教室の引き戸が開く。
いつものように担任が、ヘラヘラ笑いながら脳天気な顔で入ってくる……と思いきや、今日は全く無表情。
「この状況、以前にもあったような……」
日直が号令をする。担任はここで一発、親父ギャグをとばすのだが、それもなし。
「確かに前に見た、この風景……これってデジャヴ?」
桃子が身構える。
「えー、今日は転校生が転校します」
「はあ? 意味分からん」
「どういうこと?」
あちらこちらで騒ぐ生徒たち。担任は、廊下にいる生徒に声をかけた。
担任に呼ばれて、奇妙なツインテールの、小柄な女子生徒が教室に入ってくる。
「菊ちゃん!」
教室がどよめいた。
菊子は、初めて教室に来た時と同じように、おずおずとしている。以前と違うのはセーラー服ではなく、この高校の正規の制服であるブレザーを着ていることだ。
「あー、えーと、小鬼 菊子さんは、家庭の事情で、本校に転校してきたばかりだが、また家庭の事情で、転校することになった。突然だが、どうしてもみんなに挨拶だけは、きちんとしたいそうだ」
担任が、教壇の前に菊子を立たせた。
「みなさん。短い間でしたが、私を受け入れていただいて、本当にありがとうございました」
菊子が、丁寧に頭を下げる。
この綺麗な礼を見たのは、何度目だろうか。なんと言っても菊子は、お姫様だからな。桃子は、いまさらながらに合点がいった。
「何言ってんだよ菊ちゃん。ここに来たときから、菊ちゃんはもう仲間だよ」
「そうだよ、せっかくもっと仲良くなろうと思ったのに、もういっちゃうの?」
生徒たちが、口々に別れを惜しむ。
菊子は、涙を流し始めた。
「み、み、みなさん、ありがとうございます。私は嫌われてきた一族の者なので、みなさんの言葉が、とても心に染み渡ります。私は、転校しますが、みなさんのことをいつも、いつまでもお守りいたします」
「何か、へんな挨拶だね。でも、元気でね!」
瀬戸内海の女花島で、起こったことなど何もしらない生徒たちは、お気楽に挨拶をする。
菊子と桃子の目が合った。一瞬、微かに口が開く菊子。だが、どちらとも声を発することはなかった。
菊子は、最後にもう一度、深々と頭を下げると教室を出て行った。
桃子が窓に飛びついて外を見た。校庭の真ん中を、校門に向かって歩く菊子の後ろ姿。もう、いてもたってもいられない。
「先生! 小鬼さんに最後の挨拶をしてきます」
叫ぶように担任に言った。
「お、おお。ええよ」
脱兎のごとく教室を飛び出す桃子。走りながら上靴を脱ぎ、履き替えるのももどかしく、激しくつま先を地面に蹴りつけて下靴をはく。
菊子を追って走っているのは、桃子だけではなかった。
桜森 左六女、里見 詩乃、桜町 吹雪も、別々の方向から、大きく肩を振って、菊子に駆け寄って行く。
「菊ちゃーん!」




