18 お宝ハンター桃! その3
菊子が立ち止まり、ゆっくりと振り返る。
「わざわざ、挨拶に来てくれたんだね。菊ちゃんは、最後まで律儀だ。お頭さんや、鬼さん達にもよろしく。菊ちゃんも今からが、大変だと思うけど元気でね…………わ、私の可愛い妹、菊子姫……」
左六女は、嬉しいのか悲しいのか、複雑な表情をしていた。手に持ったタブレットPC『スーパーモンキー』には、金の小粒が貼り付けられている。
「はい。鬼ヶ島には、洞窟がまだまだあります。新しい洞窟に移って、これからも平和に暮らしたいと思います。左六女、お姉様! ずっと私のお姉様でいてくださいね」
菊子は、左六女の手を、ぐっと握った。
「また、菊ちゃんをいじめるやつが来たら、絶対助けに行くからね!」
詩乃は、横髪の一部を束ねて、金の小粒を付けたゴムで結んでいる。
「ありがとうございます。その金の髪飾り、とっても似合ってます!」
「えへへへ、そう。エイトの分は、首輪に付けたんだよ」
「エイトにもたくさん助けられました。菊子が礼を言っていたと、お伝えくさい」
金の飾りのついた詩乃の髪を手に取り、ほほ笑む菊子。
「こういう飾り方ってかわいいですね。私もやってみよう」
「うん、やって、やって。菊ちゃんはお姫様だから、いっぱい付けたらいいよ!」
「はい。ありがとうございます」
もう角を隠す必要はないと思ったのだろう、菊子はツインテールをほどく。
二本の小さい角が現れた。
「菊子ちゃん、僕は鬼ヶ島の戦いで、自分を信じることができたよ。僕の戦い方は決して暴力じゃないって、確信できた。これからも、正義の戦士フラワーエンジェルチェリーとして、自分の戦い方を貫く覚悟だ。勇気をくれて、ありがとう菊子ちゃん」
吹雪は、持っていたチェリーバトンで、大きく円を描く。
「よかった、風吹さん。わたしもフラワーエンジェルチェリーを、いつも信じています。あ、金の粒はチェリーバトンに付けたのですね」
「そう。なんか、パワーアップした感じ!」
吹雪が、バトンのスイッチを押す。チカチカと光る花びらが、いままでより明るく、それでいて優しく輝く。
「桃さんは、首飾りに付けたんですね。とっても良くお似合いです」
もはや菊子の目からは、涙がポロポロと落ちていた。
「あ、ありがとう。アクセサリーなんてしたことなかったんで、ちょっと恥ずかしかったけど。これ、大事にするよ」
「も、桃さん……。本当にありがとう。私の声に応えてくれて。みんなも……。そして、私を友だちと言ってくれた……。とても嬉しかった」
「菊ちゃん、言葉で言っただけじゃないよ。僕たちは本当に友だちだよ!」
「はい! 鬼ヶ島に今度は、遊びに来てくださいね。観光大洞窟でお待ちしています。では、みなさんこれで失礼いたします」
菊子得意の礼だ。深々と頭を下げる。
みんなもそれに倣って頭を下げた。
再び頭を上げた時、菊子の姿はどこにもなかった。
「この地に、また一つ桃太郎伝説ができたな」
左六女が、遠く海に浮かぶ、鬼ヶ島を見て言った。
「これは、伝説じゃないよ。僕のリアルだ。また、行こうな! 左六女!」
桃子が、親指を立てる。
左六女も、親指を立ててウインクする。
「おう! お宝ハンター桃!」
空は青く、海は更に青い。
戦士たちの髪が、鬼ヶ島からの潮風に、ふわりとなびいた。
『お宝ハンター桃! 守れ! 鬼ヶ島の財宝!』
おしまい




