お約束の展開
ソフィアの合図で闇の眷属達は一斉に姿を消した。驚くほどあっさりと、騎士に噛みついていた魔蜘蛛も太った貴族を囓っていたホーンマウスも、一瞬で姿を消した。
痛む身体を抱えて命拾いした者達はぽかんとした顔でそれを見送った。
実際、魔蜘蛛やホーンマウスに集られ、生きたまま囓られた兵士も大勢いた。
魔法結界でそれらをやり過ごした魔術師も多いが、ドーム型の結界にわんさか集られて、小さく蹲っているしかなかった。
また剣を持つ騎士は足下からチクチクと囓られ、血を啜られながら次々と倒れていくしかなかった。蠢く魔蠧達は魔術師の魔法攻撃や騎士の剣に打たれ何万と死んでいくが、その側から新たな魔蠧が次々と参戦するのだった。
その魔蠧達はソフィアの合図で一斉に姿を消した。
「あ、帰ろっかって思ってたけど、フェルナンデスおっさんの始末がまだだったわ」
とソフィアが言ったので、ローガンは「仰せのままに」とパチンと指を鳴らした。
次に彼らが現れたのは魔法塔の門扉の前。
この塔は国家魔術師達が古今東西の魔術を研究、修練する塔で五階建。
「おっさん、ここにいるの?」
「はい、国家魔術師軍団、皆で逃げ込んだ様子です」
「は? 魔蜘蛛たちの攻撃に戦いもせず、逃げ込んだの? 国家魔術師って国で一番とか二番の力を持ってるんでしょ?」
「まあ、そうですね」
ローガンはそう言って肩をすくめた。
「五階建てって、もしかして。一階のボスから攻略していかなきゃ、次の階に行けないやつ? ふざけんなよな。こちとら八歳だっつうの。もう疲れたしやっぱり帰ろっか。気になる事もあるし」
ソフィアがうーんと伸びをした途端、目の前の扉がバンッと開いた。
中から現れたのは、まだ若い少年のような男だった。特有の濃紺のローブを着ているので、若くとも選ばれた魔術師だった。
「貴様! よくもカトリーヌ様を!!」
男は怒りと憎しみに満ちた目でソフィアを睨む。
「彼は最年少で国家魔術師に選出された、伯爵家の三男、アスラ・クレメント。水属性の魔法が得意です」
ローガンがソフィアへ耳打ちをした。
「え、何、やっぱ戦うの? カトリーヌって誰?」
ソフィアの言葉にアスラの顔色がぐっと赤くなった。
「貴様!」
黒髪に華奢な体つき、上品で美しい顔は男装の麗人のようにも見える。
「ソフィア様、カトリーヌはさっきソフィア様が石にしちゃったあの女ですよ。しかも粉々にしちゃって」
とエリオットが言った。
「石にしたのはワルドのゼレンティ嬢でしょうが」
とソフィアはのんきに言い返す。
「ソフィア様、このような下っ端は私が駆除してご覧にいれますが」
とワルドも言った。
「そのカトリーヌとかの仇討ちなんでしょ? だったらお相手しなくちゃね」
とソフィアは笑った。




