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トカゲといっしょ  作者: (=`ω´=)


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結婚関連の諸問題

 その後、しばらく時間をかけて学園都市計画関連について細々とした内容を一方的に説明をされた。

 この時点で計画案はかなり詳細まで作り込まれていて、ほぼハザマの承認待ちに近い状態であったらしい。

 そうして説明にいちいち相槌をうちながらハザマは、

「おれ、要らないんじゃないかな?」

 などと思いはじめる。

 この件についてもほぼ事後承認に近い形であり、計画の立案と実行はハザマ抜きでも完全に遂行できるような体制が整っているのであった。

 それだけ洞窟衆という組織が、組織として成熟してきたというわけであり、ハザマとしては喜ぶべきなのかも知れなかったが。


「この事業はかなり規模が大きく、洞窟衆の資産や人手も集中させる必要があります」

 そうした説明が一通り終わった後、メキャムリム姫がいった。

「これ以外に、森東地域への干渉も平行して行っているわけで、しばらく洞窟衆はこの二つ以外に大きな事情を手がける余裕がなくなると思います」

「それは別に問題にはならない」

 ハザマはそう返した。

「これまでに手がけていた事業だって、ほとんどの物は拡大期にあるわけで。

 新しい事業に手を出さなくても、しばらくは忙しくなるはずだし」

 あまり手を広げすぎて収拾がつかなくなるよりは、手堅く出来る範囲に絞って注力している方がいくらかはマシなのであった。

 そもそもハザマとしては、別に洞窟衆にこれ以上大きな組織になってくれと願っているわけでもない。

 むしろ今の点でも組織として、そして影響力を見ると、洞窟衆は想定外に大きくなりすぎたきらいがあった。

 もっとささやかでもよかったのに、というのが、ハザマの本音でもある。

「ただ、これから公爵位の受領とか帝国との提携、それに婚礼などなにかと物入りになって来ますから、相応の出費が続くことは今のうちに覚悟をしておく必要があるかと」

 タマルが、そう続ける。

「ちょっと待て」

 ハザマはタマルに平手を見せて、そういった。

「前の二つはともかく、最後の婚礼というのはなんだ?」

「男爵のですよ」

 タマルはそういって肩を竦める。

「もう事実上決まったようなものですし、やらないとなるとそれはそれで面倒なことになる。

 すぐにどうこうしてくれとはいいませんが、早めに婚約発表くらいはしてくれるとありがたいですね。

 むしろ、男爵の立場とかを考えるとここまで放置をされていた方がおかしいと思いますが」

「あー。

 それなんだがな」

 ハザマはいった。

「どうしても、やらなけりゃ駄目?」

「この後に及んでなんで拒否をするのか、理解が出来ません」

 タマルはぴしゃりといった。

「ニョルトト公爵家、ブラズニア公爵家。

 両家との関係はこれまで良好でしたし、今に至るまで多大な協力を得てきております。

 その関係性を強めることを、なんで忌避するのですか?」

「いや、政略結婚としての性格が強いというのは理解はしているんだ」

 ハザマは弁明をし出した。

「ただその、おれのところでは婚姻をそういう発想で行う習慣がなくて戸惑っている部分が大きくて。

 おれのところでは両方の意思とか好意の有無が重要視されていて、だな。

 っていうか、お姫様たち!

 あなた方はおれなんかでいいんですか?」

「男爵以上の男性がいらっしゃるようでしたら、是非に紹介していただきたいくらいですね」

 マヌダルク姫はそういって微笑んだ。

「公爵家としての都合もありますが、それ以前にわたくしがあなたを選んだのです。

 もう少し光栄に思っていただきませんと、こちらの沽券にも関わるのですが」

 こちらの意思はかなり硬そうだった。

「では、メキャムリム姫の方は?」

「ニョルトト姫がおっしゃいますように、男爵以外の男性が見劣りするというのはあるのですが」

 メキャムリム姫はいった。

「それを除いても、家長である公爵が決めたことですからそれは絶対です。

 今後のブラズニア公爵家の浮沈にも関わってきます。

 自分個人の意思などという薄弱な根拠によって婚姻関係を否定するなどということは、あってはなりません。

 それはあまりにも不経済的なわがままです」

 こちらは、ハザマに好意を抱いているというよりはブラズニア公爵家の視点から判断をしているらしかった。

 貴族という人種は。

 と、ハザマは内心で歯噛みをする。

「ニョルトト公爵家とブラズニア公爵家の領地は、ハザマ領と隣接しています」

 諦めの悪いハザマの態度に呆れたのか、タマルがそんな風に口を挟んで来た。

「同盟を結ぶ相手としては、決して悪くはないと思うのですが。

 この関係を男爵のわがままで白紙に戻したとしたら、かえって求婚の申し込みが増えて手が着けられないことになりかねませんよ」

「今までだって、そうとうにしつこい申し込みがいくつかあるわけですから」

 これまで静観をしていたリンザが、この件についてはじめて口を開いた。

「男爵の様子から望みなしとみて、これまで一律すべてを取り次ぎしてこなかったわけですが。

 両家とのおはなしが広まってから自然とその手間も減ってきたのに、ここで男爵がお断りになられますと、せっかく沈静化してきたそちらの申し込みが以前にもまして増えるのではないかと」

「というか、なにが不満だというのですか?

 両姫様とも容姿にも家柄にも問題はなく、実家のことを考えても洞窟衆に益がある婚姻になりますが」

 タマルが、ハザマに詰め寄った。

「貴族同士の結びつきは個人の思惑なんかよりもずっと重いし、後の影響も大きいんです。

 不満があるのならばこの場ではっきりとおっしゃってください」

 ハザマの個人的なわがままを叱責する形であったが、それはこの世界の人間の感覚であり、ハザマとしては到底受け入れられない。

 でも、説明することが難しいとも、思った。

「ふと疑問に思ったのだが」

 そこでハザマは、話題を逸らすことにした。

「おれがこの件を拒否しなかったとして、その場合、どちらが正妃になるんだ?

 そういう序列ってのは、こちらではかなり大事に思われていると思うんだが」

 この世界では、成功者であれば複数の人間と婚姻関係となることは別に珍しくはなかった。

 洞窟衆の首領であるハザマなどは、何人かの妻を娶ったとしても誰も不思議には思わない。

 今回の場合、マヌダルク姫かメキャムリム姫、どちらかを妻にしてもう一方を袖にするような形が一番害があった。

 下手をすると戦争にまで発展しかねない。

 だから、同時に二人を妻にするか、二人とも断るかの二択になるわけだが。

 仮に周囲の意見を入れて前者の、二人と同時に結婚をするという選択をしたとしても、その後に問題が残っているのではないか。

 ハザマは、そう指摘をしたのである。

 マヌダルク姫とメキャムリム姫は決まりの悪い表情で顔を見合わせ、その後になにもいえなくなった。

 背後の控えている実家のことを考えると自分から引くわけにはいかないが、かといって自分を正妃として推すにしてもその根拠がない。

「それをいわれると困りますね」

 タマルが、真面目な表情でいった。

「ニョルトト公爵家とブラズニア公爵家。

 どちらも、元はいえば王国公爵家であり、家格からいえばほぼ同格です。

 後はそれ以外の要素、そうですね。

 男爵の個人的な好意のいかんによると……」

「お前、そんなことをこの場ではっきりさせちまったら、それこそ戦争になるぞ!」

 思わず、ハザマは叫んでしまった。

「家庭内戦争だ!

 お前はおれに、そんなにギスギスした新婚生活を送らせたいのか!」

 新婚の妻二人に歴然と差をつけてしまったら、自然とそうなる。

 ハザマの想像は、そんなに的外れではないはずだ。

 この世界のように複数の伴侶が認められている世界でも、普通は一度に二人を娶るということはしないのではないか。

 とか、ハザマは思った。

 先輩後輩とか年の差とが、妻同士の間で序列の感覚が自然と形成されるような環境であれば、そんなに問題はないように思える。

 しかし今回の場合は、そうではなかった。

「それをいわれると、弱いんですけどね」

 そういって、タマルは頭を掻いた。

「でも、実際に苦労をするのは男爵お一人ですから。

 洞窟衆全体に累が及ぶよりは、はるかにマシでしょう」

「お前、他人事だと思って適当にいっているだろう」

 ハザマは半眼になって、タマルの顔を睨む。

「では、こうするのはどうでしょうか?」

 突然、ルアが大きな声でいった。

「マヌダルク・ニョルトト姫とメキャムリム・ブラズニア姫。

 そのお二人が認めるような人物を正妃として迎えるというのは!」

「それ、なんの解決にもなっていないじゃないか」

 ハザマは頭を抱えたくなった。

「むしろおれにしてみれば、さらに問題が大きくなったも同然だ。

 結婚する相手をさらに増やしてどうする!」

「二人も三人もたいして変わりはないじゃありませんか」

 ルアは、ハザマの反発を意に介した様子はなかった。

「それに、外部勢力の影響力が大きくなりすぎても、将来的に洞窟衆にとっていいことはありません。

 妻を娶るのでしたら、正妃一人くらいはそうした紐付きではない人を据える方が勢力比として安定するかと思います」

「外部勢力の紐つきではない」

 その言葉に、ハザマは思案顔になる。

「なんとなく想像はつくが、具体的に誰のことをいいたいのか。

 名前を出してみろ」

「領主代行の、リンザ様を」

 ルアがそういうと、ハザマとルア以外の者がいっせいに大きな声をあげた。

「これ以上に適格な人選はないものと思われます」




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