Intermission 〝魔神殺しの夢幻少女〟
今から四ヶ月ほど前。
悪魔殺しを生業とする村があった。
その村は、誰しもが神を信じ、神の力を借りて悪魔を倒していた。
悪魔はそんな彼らを邪魔な存在、我々の最大の敵、天の力を借りる人間など呼び、潰そうと考える悪魔が山ほどいた。
悪魔を倒せるのは神の力を少しでも借りた者だけ。
もしくは神自身。
低級悪魔から上級悪魔まで、何度も強襲をかけて潰そうとして来た悪魔は、村に住む者達にすべて殺されてきた。
ある日、村を襲った、悪魔の中でも魔神級と言われる上級悪魔がいた。
幻魔が飛び交い、村の大人達は珍しく、幻魔をなんとか防いでいるという状態で悪魔が断然有利だった。
徹底的に潰そうと考えた魔神級の上級悪魔は次々と幻魔を放つ。
幻魔を討伐すれども数が一向に減る気配もなく、増加するばかりで、ついには村を占拠されてしまった。
森に逃げた人間達は力を使い尽くした大人達と子供達ばかり。
幾多の人が死に、誰しもがもはや人に勝機は無いと思われた時だった……
――ある少女が右手の甲にギリシャ数字が時計にならんだ光を浮かばせ、光とギリシャ数字を纏った大太刀を持って立ち上がった。
無論、他の大人は止めたが少女は聞かず、笑顔であしらうだけで大人達を無視して森を抜けて戦場を一人で突っ切った。
上級悪魔の作り出す幻魔は決して弱い訳ではない。
強さは中級悪魔ほど、数も上級悪魔が作り出せる幻魔、つまり750体の三分の二ほどを村に、残りの三分の一を上級悪魔の傍らに控えていた。
だが少女はその幻魔をものともせず、千切っては投げ千切っては投げの繰り返し。
村を意図も簡単に取り戻し、虐殺ともいう言葉が当てはまる鬼神の如き進撃に大人は驚き、そして……、
――彼女を見る目は恐怖に染まった。
彼らも神の力を借りて悪魔と戦っていたが、神の如き力を出す彼女は常識の範疇を越えている。
上級悪魔は村のベテラン達でも、十人は必要だった。
そして中級悪魔を倒すためには五人以上が必要だ。
中級悪魔の強さを持つ幻魔を一人で倒す事など不可能なのだ。
遂に少女は幻魔をすべて倒し、魔神級の上級悪魔と対峙し、苦戦を強いられながらもなんとか勝った少女に、子供達はヒーローだ、英雄だ、と言って駆け寄ろうとしたが大人達は止めて少女を問い詰めるだけでなく、虐げもした。
『その力はなんだ! 何処で手に入れた!』
『上級悪魔は俺達でも人数が居ないと倒せない! 事前に悪魔と交渉でもしたんじゃないのか! そうすれば簡単に倒せるもんなぁ!』
『上級悪魔を引き入れるなんて……あなたこそ悪魔だわ!』
『バケモノ!』
『出て行け!』
軽蔑、畏怖、恐怖、怨み……。
ただ、村を救いたいと願い戦っただけなのにすべてを押し付けられた少女。
(それで……みんなの気持ちが晴れるなら……)
村の事を何よりに考えていた少女は大人に何を言われようと黙ったままだった。
それを肯定と取った大人達は更に暴言を浴びせる。
子供達は何で? と大人達に聞いていたが、大人達は子供を家に連れていった。
その日の夜。
少女は村を出るように村長に言われ、荷物をまとめた。
ほとんどは自分専用の四次元へ入れ込んだため、傍から見れば何の荷物も持っていない。
村長に礼をして、少女は村を出た。
村の者は処刑をするべきだなんだと言っていたが、それは村長によって黙らされた。
そこで少女は知る。
村を出ろと言われたのは、村長から唯一の、少女への村を救ってくれた感謝の現れだった。
『守ってやれなくてすまなかった』
出るときにかけられたその言葉。
泣かずには居られなかった……。
それ以降、悪魔達は少女の存在を何処からか聞き入れ、興味本意で見ようとした悪魔が、人に化けたりしながら村に侵入。
だが光とギリシャ数字を纏う大太刀を使う少女は見当たらない。
悪魔はただの夢見、幻だと言った。
悪魔の間では初め、『魔神殺しの少女』と知名度が上がったが、『魔神殺しの夢幻少女』と言われ、作り話と捉えられた。
そして……、
――これが閃蒼嘩来の村を出た理由だった……。
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