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月桂樹の下で  作者: 飴目
第2章

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購入品

 ——

 

 「……アスレイ」

 セレンがアスレイを呼び止めた。

 アスレイは振り返ると、珍しく何かに興味を持った様子のセレンほうへ戻る。

 

 「この妖精……、あの時俺を救ってくれた妖精だ」


 そう続け、檻の前に身を屈《かが》める。

 アスレイも近付いて檻の中の妖精をそっと覗く。


 隣の檻に押し込められた小さな妖精たちより、人の背丈に近い妖精。

 

 妖精の種族には、生まれ方や羽の大きさ、魔法、魔力に個体差がある。

 本来は小さな生き物たちだが、生まれ持つ魔力量によって大きさが変化(へんげ)している。

 人間たちは、その魔力量で、下級、中級、上級と区別している。

 

 アスレイは、彼女は上級妖精にあたる、元は力のある妖精だったのだろうと推察する。

 闇市場ではあまり見かけない、珍しい妖精だった。

 

 眠っているのだろうか、彼女はゆっくりと呼吸を繰り返している。


 「そうか、この子が……」

 

 半年前、セレンの傷を治療している間に捕まえられたという妖精。

 任務から帰還した時に話は聞いていたが、正直まだ生きているとは思っていなかった。

 

 妖精狩りや妖精売買は今時、珍しいことではない。ある意味、世界の均衡の1つとして存在している。

 その歯車の間にまた一人妖精が落ちた、そういう生涯だったのだと。


 セレンを視察に連れだすたび、妖精をいまだに探している様子なのは知っていた。

 例の妖精がまだ生きていることにも驚いたが、普段は世間にほとんど興味を持たない彼の、この妖精に対する執着心にも驚いていた。

 

 あきらかに健康状態が悪そうな彼女を見ながら戸惑いを感じているのか、自分のせいでという罪悪感でもあるのか、妖精を観察するように、じっと視線を送っているセレン。

 

 檻の前の二人に気づいたのか、店主が近づいてくる。


 「まぁ弱ってますがねぇ。素材は、もうちょっと採れますんで」

 そんな話を遮り、金を支払った。


 セレンが彼女を檻から出し、抱え上げた。

 片腕で支えられてしまうほど軽い彼女の身体から生える破れた羽が、力なく重力に沿って垂れ下り、そよ風に揺れる。

 

 彼女が一瞬目を開けたようだが、少しずつ力が抜け出しているのを感じる。

 彼女に声をかけてみるが反応がなく、再び眠るように目を閉じる。


 「……アスレイ、どうしたらいい」


 セレンが彼女に上着を被せながら、言葉だけをアスレイに投げかけた。


 身体が冷たいのだろうか。呼吸はしている。

 セレンの衣服に羽の欠片がはらはらと落ち、街灯の光を反射させている。


 「……まずいな、急ごう」

 

 二人は任務を切り上げ、急いでその場を後にした。


 

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