外の香り
——
少し湿度を感じる道を二人は歩く。
【使役妖精 販売中】 乱雑に置かれた看板の文字が目に留まる。
「やっぱり、どこの夜市にもあるもんだなぁ」
前を歩くアスレイが看板を見ながらつぶやく。
使役妖精。
人間を助けるために存在しており、妖精たちは力を貸す代わりに金銭や住居などの対価を受け取って人間と共存するといういわば契約関係にある。
本来は妖精からの合意につき契約を結ぶのだが、力関係によっては強制的に契約を結ぶこともできる。
妖精狩りはその主従関係に漬け込み、ある程度の素材を搾取され弱った妖精たちを闇市で破格の値段で販売しているのだ。
檻の中に、力なく座り込む妖精たちが押し込められている。
セレンは歩く速度を緩め、檻の前を通る。
ゆっくりと檻の中の妖精たちに視線を流す。
(いないか……)
あの妖精は、居なかった。
——
すでに売り払われてしまったのだろうか?
それとも、捕まった先で逃げ切ったのだろうか?
人探しによると、店に流れ出すならそろそろじゃないか、と言っていた。
”生き残った分”として表に出るのは一部だけだが、とも。
しかし、セレンの中では死んだという気もしていなかった。
どこか心の奥で、黄金色の小さな光が灯っているのを感じていた。
絶対に生きている、理由は分からないが、不思議とそう確信していた。
今日も手掛かり無しか。そう思いながら、檻から路地へ目線を前へ向けようとした時。
少し離れた場所に、もうひとつ。その檻はあった。思わず足を止める。
暗い影の下、鉄格子の奥で、白い塊が透けて浮き上がっている。
トクン、と心拍数が上がった。
静かに檻へ近づく。
「……いた」
彼女が、小さな檻の中にひとり、光をなくして横たわっていた。
髪は不均一に短くなっており、羽は身体に隠れているのかよく見えない。
あの時見た、線の細い身体はさらに細く、青白くなっていた。
黄金色、と表現するにはあまりにも遠く、彼女はほとんど”抜け殻”だった。
しかし、わずかに感じる魔力は、間違いなく、あの時森で会った妖精だ。




