ムーンバレルにて
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庭園を少し歩くと、花壇の先に賑やかなロッジアが目に入る。
セレンやキサが時々話題にする、例のダイニングバーだ、とナナセは目を輝かせた。
店を遠巻きに見ていると、こちらを見つめるいくつかの視線に気が付く。
「あれがムーンバレル?……あの人達は、セレンの知り合い?」
「……あぁ。仲間だ」
「戦闘班の人たちってこと?……なんだか、すごく見られてる?」
「……そうだな」
セレンが視線を送り返すと、仲間だという戦闘班の面々がセレンに手を振り、手招きをしていた。
「おーい、セレン!俺たちにも紹介してよ!」
集団の中にいる一人の青年。ふわりとした薄香色の髪を揺らしながら、セレンに向かって声をあげている。
「……あいつはナギ。魔法が使える。……怖いなら、今会わなくてもいい」
セレンは、にこやかな笑みを浮かべるナギを見ながら言った。
アルカ内の人たちとはいえ、初対面の人に会うのは緊張する。
医療室に居たときすら、他の医療班たちとほとんど会わず、キサとしか話したことがなかった。
しかし、セレンと同じ訓練服に身を包み、表の席で談笑している彼らをみると不思議と緊張が解れていくようだった。
「……ちょっとだけ、会ってみようかな?」
ナナセの言葉に、セレンは頷くと、二人はどちらからともなくムーンバレルへと歩きだした。
——
「え、近くで見ても小さい……」
「セレンが連れてきたって子だよね?妖精の!」
「外に出てるってことはもう大丈夫ってことですか?」
「あ、あの……」
ムーンバレルの、一番庭園から近い席に、三人の青年がテーブルを囲んで座っていた。
自分が医療室にいることは多少知れ渡っていたらしく、興味津々といった感じで声を掛けられる。
ナナセが側まで来ると、ナギという人ともう一人の銀髪の青年から思い思いに話されて、少し圧倒されていた。
「おい、自己紹介が先だろ。……ごめんね、俺はフィリス。戦闘班の隊長をしてる」
返答に困っていると、他の二人を遮って、金髪の少し大人びた雰囲気の青年がナナセに話しかけた。
「あ……な、ナナセです。皆さん、セレンと同じところに所属しているってことですよね」
「そうそう!俺はナギ。ナナセちゃん、よろしくねー。こっちはリツ!」
「あ、リツです。セレンさんの部下ってやつです」
訓練終わったんですね、とセレンに話しかけていた銀髪の青年が、ナナセに視線を移して挨拶をした。
「あ……、あなたがセレンの。時々、話を聞いてました。……よろしくお願いします」
「セレンさんが僕の話を?へぇ……」
リツが珍しそうにそう言うと、隣でナギがセレンを見て面白そうに笑った。
「てか、セレンが誰かと庭園を歩く姿を見られる日が来るとは思わなかった」
「ははっ、確かに。あんな顔初めて見たし」
フィリスもつられて笑う。
「……」
ナナセが不思議そうにセレンを見つめると、セレンは少し気まずそうに目を逸らしていた。




