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月桂樹の下で  作者: 飴目
第2章

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20/32

始まりの円環

 ——

 

 部屋の明るさを、瞼の裏から感じて意識が覚醒しだす。

 あの後、そのまま朝まで眠っていたようで、 数時間おきに起きていた分の身体の疲れが、いくらかマシになっているのを感じた。


 ふと、人の気配を感じて、目を開ける。

 

 ナナセが眠るベッドの隣の椅子で、本を読んでいるセレンの姿。

 起きたのか、と本を閉じながら言うセレンと目が合う。


 「……ずっと居たの?」


 「あぁ」


 「起きてたの?」

 

 「そうだな」

 

 ここ数日、目が覚めた時は大体一人か、キサの物音で起きるかだった。

 寝る時も、起きた時も人が居る状態は、少し不思議な光景だった。

 

 嬉しい、と思った。

 眠っている間も保たれている世界、保とうとしてくれている人が居ること。

 安心できる場所が、少し広がったような気がした。

 

 「……ふふ」


 ナナセは、小さな笑みがこぼれた。


 ——


 昨晩、ナナセの部屋に向かう前。セレンは1階の医療室に居た。


 「……2階、寄っていったら?ナナセ起きてるよ」

 

 治療道具を手に持って降りてきたキサに言われ、意識を2階に向ける。

 

 「昼間、なんか寂しそうにしてたから」

 

 その言葉を聞いて、気付いたら部屋に向かっていた。

 

 この階段を上る度、ナナセが目覚めた日を思い出す。

 

 あの時、あのまま部屋へ入らずに、扉の前で立ち続けていたら。

 今頃、行かないでと弱々しく言うナナセの熱い手を握ってやれなかった。

 そう考えると、過去の自分の罪悪感が、自分勝手なものに思えた。

 

 そんなことを考えていると、目を閉じるナナセに握られた手の力がふっと抜け、眠ったことを悟る。

 さっきまで泣いていた彼女の睫毛《まつげ》はまだ濡れていた。


 次にナナセが目を覚ました時、朝日でぼんやりと明るくなった部屋の中心で笑う彼女を、セレンは静かに見つめていた。


 なぜ笑っているのか、問う必要はないような気がした。

 答えを求めるより、彼女の笑う顔を、今は止めたくないと思った。

 

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