始まりの円環
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部屋の明るさを、瞼の裏から感じて意識が覚醒しだす。
あの後、そのまま朝まで眠っていたようで、 数時間おきに起きていた分の身体の疲れが、いくらかマシになっているのを感じた。
ふと、人の気配を感じて、目を開ける。
ナナセが眠るベッドの隣の椅子で、本を読んでいるセレンの姿。
起きたのか、と本を閉じながら言うセレンと目が合う。
「……ずっと居たの?」
「あぁ」
「起きてたの?」
「そうだな」
ここ数日、目が覚めた時は大体一人か、キサの物音で起きるかだった。
寝る時も、起きた時も人が居る状態は、少し不思議な光景だった。
嬉しい、と思った。
眠っている間も保たれている世界、保とうとしてくれている人が居ること。
安心できる場所が、少し広がったような気がした。
「……ふふ」
ナナセは、小さな笑みがこぼれた。
——
昨晩、ナナセの部屋に向かう前。セレンは1階の医療室に居た。
「……2階、寄っていったら?ナナセ起きてるよ」
治療道具を手に持って降りてきたキサに言われ、意識を2階に向ける。
「昼間、なんか寂しそうにしてたから」
その言葉を聞いて、気付いたら部屋に向かっていた。
この階段を上る度、ナナセが目覚めた日を思い出す。
あの時、あのまま部屋へ入らずに、扉の前で立ち続けていたら。
今頃、行かないでと弱々しく言うナナセの熱い手を握ってやれなかった。
そう考えると、過去の自分の罪悪感が、自分勝手なものに思えた。
そんなことを考えていると、目を閉じるナナセに握られた手の力がふっと抜け、眠ったことを悟る。
さっきまで泣いていた彼女の睫毛はまだ濡れていた。
次にナナセが目を覚ました時、朝日でぼんやりと明るくなった部屋の中心で笑う彼女を、セレンは静かに見つめていた。
なぜ笑っているのか、問う必要はないような気がした。
答えを求めるより、彼女の笑う顔を、今は止めたくないと思った。




