青年の懺悔
——
少し間が空いた。
「…………本当に、そう思うのか」
セレンの言葉は、ナナセにとって意外なものだった。
「え?」
セレンは目を伏せながら、まるで赦しを請うように続けた。
「……あの時、助けなければ、逃げ切れていた」
「あの場に倒れていたのは、俺のミスだ。既にほとんど死んでいたも同然だっただろう。助かる怪我ではないと分かっていた」
彼の視線は冷たく、ナナセの手を一点に見つめていた。
「……この半年間を、過ごすことはなかった」
握る手の力が、少しだけ強まるのを感じた。
今どんな気持ちで手を握っているのか、いままでどんな気持ちでこの部屋に来ていたのか。
セレンの言葉を聞いて、罪悪感や自責の念が彼の手の熱に乗って伝わってくるようだった。
「……必要だったんだと思います。……私も」
「それに……あなたを助けないまま、私も捕まっていたかもしれない。あなたを助けて、今ここに居る。……それだけです」
それは、ナナセの本心だった。
彼の人生が、あのまま終わらずに続いていたのだと、過去の自分が少しだけ救われたような気がした。
「……セレンのせいじゃない」
ナナセは、それ以上の言葉が見当たらなかった。
ナナセの言葉を聞いて、セレンは肯定も、否定もせず、静かに手を握り続けていた。
しばらくして、キサが部屋に戻ってくる。
セレンはそっと手を離した。
「また来る」
ナナセにそう告げて、入れ代わるように部屋を出ていった。
——
「二人は知り合いだったの?」
キサが投薬をしながら、ナナセに問いかけた。
「……知り合い、なのかな……」
「あいつから何も聞かされなかったんだ?」
「……ううん。そうじゃないんだけど……」
先ほどのセレンの言葉を思い出し、言い淀む。
セレンとの関係を、何と呼んだらいいのか分からなかった。
「そうなの?……まぁ、元気になったら少しずつってことで。ちょっと寝たほうがいいかな」
キサは、ナナセの様子を見ながら少し笑うと、ナナセの肩にシーツをかけた。
セレンに感じていた違和感が消え、残ったのは少しの寂しさだった。
ナナセは、手に残るセレンの手の感覚をそっと抱きしめて眠りについた。




