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月桂樹の下で  作者: 飴目
第2章

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18/32

青年の懺悔

 ——


 少し間が空いた。


 「…………本当に、そう思うのか」


 セレンの言葉は、ナナセにとって意外なものだった。

 

 「え?」

 

 セレンは目を伏せながら、まるで赦(ゆる)しを請うように続けた。

 

 「……あの時、助けなければ、逃げ切れていた」

 「あの場に倒れていたのは、俺のミスだ。既にほとんど死んでいたも同然だっただろう。助かる怪我ではないと分かっていた」

 

 彼の視線は冷たく、ナナセの手を一点に見つめていた。

 

 「……この半年間を、過ごすことはなかった」


 握る手の力が、少しだけ強まるのを感じた。

 

 今どんな気持ちで手を握っているのか、いままでどんな気持ちでこの部屋に来ていたのか。

 セレンの言葉を聞いて、罪悪感や自責の念が彼の手の熱に乗って伝わってくるようだった。

 

 「……必要だったんだと思います。……私も」

 「それに……あなたを助けないまま、私も捕まっていたかもしれない。あなたを助けて、今ここに居る。……それだけです」


 それは、ナナセの本心だった。

 彼の人生が、あのまま終わらずに続いていたのだと、過去の自分が少しだけ救われたような気がした。


 「……セレンのせいじゃない」

 

 ナナセは、それ以上の言葉が見当たらなかった。

 

 ナナセの言葉を聞いて、セレンは肯定も、否定もせず、静かに手を握り続けていた。

 

 しばらくして、キサが部屋に戻ってくる。

 セレンはそっと手を離した。


 「また来る」


 ナナセにそう告げて、入れ代わるように部屋を出ていった。


 ——


 「二人は知り合いだったの?」


 キサが投薬をしながら、ナナセに問いかけた。


 「……知り合い、なのかな……」


 「あいつから何も聞かされなかったんだ?」


 「……ううん。そうじゃないんだけど……」


 先ほどのセレンの言葉を思い出し、言い淀む。

 セレンとの関係を、何と呼んだらいいのか分からなかった。

 

 「そうなの?……まぁ、元気になったら少しずつってことで。ちょっと寝たほうがいいかな」


 キサは、ナナセの様子を見ながら少し笑うと、ナナセの肩にシーツをかけた。

 

 セレンに感じていた違和感が消え、残ったのは少しの寂しさだった。

 

 ナナセは、手に残るセレンの手の感覚をそっと抱きしめて眠りについた。

 

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