小雨の導き
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今日は雨。外はしっとりと雨が降り、時折雨粒がコツ、と窓ガラスを鳴らしている。
窓の奥に見える庭園では、自然の恵みに喜ぶように小さな妖精たちが飛び回っていた。
あれから、3日ほど経っていた。
医療室の2階。
ナナセは診察台からベッドへ移動され、眠り続けている。
医療班の妖精たちによって不均一だった髪は整えられて、薄汚れた身体は綺麗に洗われ本来の肌の色を取り戻していた。
キサの魔法によって一定に保たれた魔力の部屋、運ばれてきた当初よりも随分と落ち着いた呼吸が寝息のように聞こえる。
青白い肌がほんのわずかに血色を取り戻している。
彼女の細い魔力が、ガラスにあたる雨粒たちと跳ねるように揺れる。
「……ん……」
ナナセの魔力を見ながら、キサがバイタルを記録していると、ナナセがわずかに目を開けた。
「……やぁ。目が覚めたかい?」
もうそろそろだっただろう、とでもいうように。
特に驚く様子もなくキサはナナセに静かに声をかけた。
羽が痛むのか、虚ろな顔のまま、ナナセは身体をわずかに捩らせている。
ナナセに繋がれた管たちが、ゆらゆらと揺れている。
「今、痛み止めを入れるから。少し待って」
キサはそう言いながら、揺れる管の1つに指をかけ、痛み止めの薬を注入し始めた。
ナナセは自分の置かれている状況を理解しようとしているのか、キサを静かに目で追っていた。
「これは、君の中の毒や呪いを取り除こうとしてる。ここは医療室。俺はキサ」
「君は運ばれたんだ。君が来てから、3日目くらいかな。目が覚めてよかった」
視線に気づいたのか、キサはナナセにゆっくりと説明をし始めた。
安全な場所だと判断したのか、危害を与える人間ではないと感じたのか、ナナセは一呼吸置いた。
「名前は覚えてる?」
「……。……なな、せ……」
「ナナセ?いい名前だね。此処まで運んだのは俺じゃないんだけど……」
そう続けようとして、痛み止めが効きだしたのか、うとうとしている彼女に気づいて止まる。
「……薬のせいで少し眠くなる。ナナセ、ゆっくり休んで。おやすみ」
その声を最後まで聞く前に、ナナセは再び眠りについた。
キサは、ナナセの声を聞いてほっとした。
掠れていて弱々しい声だったが、それは、ナナセの生きている確かな声だった。
窓ガラスにあたる雨粒が、先ほどより強くなり、雨水がガラスを伝っていた。




