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【明けぬ獄夜に縋る糸】~少女の愛が届かない 異世界と繋がる人外暗躍復讐譚~  作者: 三十三太郎
3章ー運命集う魔法学島

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魔戦の終わり


 ≪うおーー!! ヴィトーラ選手が初代魔導隊・墨谷七郎を叩き落としたーッ。突然乱入したカッコイイ魔物とも息ピッタリー!≫


 闘技場の砂埃が徐々に晴れると、観衆の目に飛び込んだのは大槍の()によって地面にめり込む黒鎧。ヒビだらけのヘルメットから漏れ出ていた火も消沈し、もはや暗い影が覗くのみである。


 「……、――」


 しかし仰向けに倒れる黒鎧はおもむろに片腕をあげた。


 「あんっ!? まだやるってかッ?」


 ヴィトーラは息も絶え絶えで、体力魔力ともに使い果たしていた。それでもよろめきながら鷲獅子(ワーギット)スキルークの背で槍を構え直すが、墨谷七郎が手で振るモノを見て……力が抜ける。


 「――降参で」

 「用意がいいなテメェ」


 それは純白に輝く布地を結んだ、手作り感溢れる小さな“白旗”であった。


 ≪墨谷選手リタイアーッ、それに黒騎士も水に落っこっちゃってるし……ということは――っ、闘技場に残るヴィトーラ選手と伽藍(から)選手の勝利ーー!!≫


 ――うおおおおおおおお!

 ――初代魔導隊に勝ちやがったーッ

 ――期待ハズレだぞ黒騎士ぃーッ


 フレイヤの宣言を皮切りに大歓声が巻き起こる。闘技場の殆どを焦土へ変えた戦い(エンタメ)に、観客達は総立ちで拍手を送るのだ。


 「え……伽藍たちの、勝ち?」

 『オレが……こんな……嘘だ』

 

 そして反比例するように、無様な姿をさらした黒騎士への失望も大きくなる。

 

 日本が推す英雄へのバッシングを避けたい政府関係者は、アリーナの損傷と観客の安全確保を理由に大慌てで魔戦大会の閉幕を宣言。

 予定されていた閉幕式も行わず、激戦に彩られた魔戦大会3日間の全日程を終了する。


 「アタシが勝ったからには洗いざらい吐いてもらうぜ。文句は無ぇな七郎」


 「…………獣牙種(オーク)達が暮らす場所を教える……その槍も持っていってくれ……俺の代わりに、皆に会いにいってやってほしい。守れなかった俺の代わりに……」


 闘技場に残される2人の会話は(ささや)くように交わされ、互い以外の誰にも届くことは無い。


 ・

 ・

 ・


 エキシビジョンマッチ翌日――魔法学島の記念式典は半ばを迎え、受け入れ上限一杯まで訪れていた観光客数もやや落ち着き始めていた。


 ――最後スッゴかったねー!

 ――やっぱ本場の魔法は違うわ。てか烈剣姫(れっけんき)の聖剣もさ……

 ――わたし黒騎士の事ショックだったなー

 ――初代魔導隊って、2人以外も生きてるのかな?


 季節は移ろい始め、午後の温暖な海風にも寒々しい気配が混じり始めている。しかし道行く人々に凍えを与えるにはまだ遠い。

 引き続き学島のメインストリートには、食べ物や異世界由来の小物を売る露店が立ち並ぶ。日本と異世界問わず、訪れる人々の表情は彩り豊か。

 概ね楽し気な表情が多いが、中には先日の魔戦大会を語り、派手な戦闘への興奮や黒騎士への怒りを語る者も少なくなかった。


 「うー……動きにくい。せっかくメセル気を使って送り出してくれたのに……」


 と、活気づく主要通路のはずれに不満を(こぼ)す影がひとつ。帽子を目深にかぶり顔を隠す(しろがね)伽藍(から)である。

 今日は魔法学園の制服でなく私服姿。落ち着いた色のインナーに青のジャケット、上品なデザインのスカートとタイツを合わせたファッションだ。

 日本刀の形をした聖剣も布袋に納め違和感のない様相となっている。


 「制服じゃないから大丈夫だと思ったのに、結構気づかれる。なんで伽藍が逃げ隠れしなきゃならないのっ」


 やはり魔戦大会、そして聖剣の威光は凄まじいと評するべきか。

 烈剣姫・銀伽藍は一躍時の人となっていた。外で顔を見られれば声を掛けられ、握手にサインにツーショット……遠慮のない者に至っては交際や手合わせを強請(ゆす)られる始末。昨日の今日で、である。

だから人目を忍んで路地の隅に逃げてきた。


 「もううんざり」


 正確には、魔戦大会で特に活躍した金冠クラスの少年少女全てが注目の的。冷泉院(れいせんいん)(ちょう)由利(ゆり)光臣(みつおみ)などは鼻高々にわかりやすく調子に乗っていたが、伽藍を含め他の面々にとっては喜ばしくない状況だ。


 「墨谷七郎……どこに居るの?」


 それは目的を持つ少女にとってなおのこと。

 本来は聖剣適合者としてウィレミニアと日本双方に召喚され、検査や解析と称しあらゆる面で拘束を強いられる手はずであった伽藍であるが、幸運にもまず彼女はメセルキュリアの保護下に置かれ自由を得ている。

 伽藍が現魔導隊最強“一輪挿し”藤堂(とうどう)(かなめ)の養女であり、養父である彼の剣気を伴った“要請”があったこともこれの一助であるが、当の伽藍は知る由もない。

 彼女は今日、メセルキュリアの計らいで魔法学園の外へ繰り出している。


 目的はもちろん、先日明らかになった事実の確認。


 「(予想はしてたけど、あの人は魔戦大会の後また姿を消した。毎回幽霊みたいに消える……気配……というより魔力をぜんぜん感じないのよ。これも魔導隊で培った技術(わざ)?)」


 聞かなければ。聞いてみたい。

 少女は、使命感というには欲に傾いた熱に浮かされ、自身の憧憬(どうけい)(にな)うと知った男の影を追う。


 しかし、そんな男の行方を追うのは伽藍だけでは無かった。


 「……伽藍ちゃん?」

 「 ! リンカッ 」


 路地に身を隠す少女を呼び止めたのは、ジーンズとシンプルなブラウスで闇肌の殆どを隠すリンカ。


 「なんだよ、(シロガネ)の嬢ちゃんじゃねぇか。んなトコでかくれんぼか?」

 「ヴィトーラまでっ!?」


 さらにダメージジーンズとレザージャケットを着こむヴィトーラまでもが、リンカに隣立って現れたのである。


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