第82話:古い名前
宇宙都市ハルモニア。
朝と定められた時刻になると、居住区の天井にゆっくりと光が広がっていく。
本物の空ではない。
それでも、薄い青から始まった光は時間とともに明るさを増し、街路には通勤や通学へ向かう人々の姿が増えていた。
制服姿の学生。
子供の手を引いて歩く家族。
企業区画へ向かう会社員。
夜間便で到着したらしい旅行者が、荷物を引きながら港湾区画から姿を見せる。
頭上を走る案内表示には、絶えず船の到着と出発が流れていた。
《第三区画――旅客便到着》
《火星圏航路――乗継案内》
《月面都市便――出港予定》
地球圏、月面都市、そしてその先へ伸びる火星航路。
複数の交通路が交わるハルモニアには、毎日のように無数の人と船が出入りする。
接舷する船は船籍を照合され、乗員情報と積荷、入港目的を確認される。商船も旅客船も例外ではなく、都市へ入った記録は管制へ残った。
それは、この都市では当たり前のことだった。
都市そのものも、初めから人が暮らす場所として設計されている。
港湾区画。
居住区。
商業区。
教育施設。
医療施設。
そして複数の企業と研究機関が集まる企業研究区。
誰かにとっては目的地であり、誰かにとっては長い航路の途中にある中継地。
その日もハルモニアは、ごく普通の朝を迎えていた。
「遅れますわ……!」
その整然とした街路を、一人の少女が小走りで横切っていく。
◇
ASTERIA LIFE SCIENCE
企業研究区に建つ白と淡い青を基調とした施設。
正面ゲートを抜けた少女は、壁面表示の時刻を確認すると、何事もなかったように歩調を戻した。
「……間に合いましたわね」
「三十秒前です」
ゲートを抜けた先で、待っていた女性が答える。
エリシアは乱れた髪を指先で整えた。
「間に合ったことに変わりはありませんわ」
「ええ。今日は」
それ以上、サフィナ・ローディスは何も言わなかった。
淡い金色の髪は左右で大きく巻かれ、肩から胸元へ柔らかく垂れている。走ってきたせいで僅かに崩れた縦巻きを直すと、エリシアは灰青色の瞳を何事もなかったように前へ戻した。
「おはようございます、エリシアさん」
「おはようございます」
受付の女性へ挨拶を返す。
その横を、サフィナも軽く会釈して通った。
エリシア・ヴァレイン。
アステリア・ライフサイエンスを経営するヴァレイン家の娘であり、現在の最高経営責任者を父に持つ。
一般的な言い方をすれば社長令嬢という立場になるが、本人はその肩書きを好んで使わなかった。
月面都市にある月兎大学を飛び級で卒業し、宇宙生体工学の博士号を取得。
現在はアステリアの研究企画部門に籍を置いている。
もっとも、博士号を持っていることと、企業の経営を任せられることは別の話だった。
外部研究機関との連絡。
研究企画。
過去の研究資産や知的財産の確認。
各研究部門との調整。
エリシアはいま、研究者としてだけではなく、アステリアという企業そのものを覚えている途中でもある。
その隣を歩くサフィナは、研究企画部門の社員だった。
研究内容を直接追うよりも、技術評価、契約、共同研究先との調整、研究資産の管理といった実務を得意としている。
エリシアとは上司と部下というより、同じ案件を扱う同僚に近い。
ただし、エリシアの父親から何かと気に掛けるよう頼まれているらしいことを、本人も隠してはいなかった。
「午前は人工器官部門の更新案です。午後に共同研究案件が一件」
「確認しています」
「昼は空いています」
エリシアの歩みが僅かに軽くなる。
サフィナはそれを見た。
「発掘報告書ですか?」
「続きを少しだけ」
「時間だけは確認してください」
「分かっていますわ」
そう答えながら、エリシアは既に別のことを考えているようだった。
「第六次調査で出た年代測定が、以前の結果と合っていませんの。表層だけが後から形成された可能性が――」
途中まで聞いたサフィナが静かに返す。
「その分野については、私ではお役に立てません」
エリシアは一瞬だけ黙る。
「……そうでしたわね」
少し残念そうに答えた。
サフィナは何も言わず、会議の予定を端末で確認していた。
◇
午前の仕事が一段落した頃。
エリシアは自席で飲み物へ口をつけながら、仕事用画面の端に小さく別の資料を開いていた。
《外縁遺構群――追加調査報告》
内容を追い、指先で一部を拡大する。
その時、仕事用端末へ新しい通知が入った。
《旧研究資料――照会確認》
エリシアは遺構の資料を閉じ、新しい通知を開く。
「サフィ、これは?」
少し離れた席にいたサフィナが端末を確認する。
「管理部からです。旧研究所時代の在籍記録について、外部照会が来ています」
「旧研究所?」
「連合軍経由の正式照会ですね」
エリシアの視線が止まる。
「連合軍?」
「要求されているのは在籍確認だけです」
送られてきた記録を開く。
《旧研究員在籍記録照会》
《照会元――連合軍》
《対象――ADELHEID ROSEN》
見覚えのない名前だった。
「アーデルハイド・ローゼン……」
「ご存じですか?」
「いいえ」
エリシアは首を横へ振った。
「いつ頃の方ですの?」
「アステリア・ライフサイエンスへの再編以前です。旧研究所時代ですね」
旧アステリア生体工学研究所。
現在の会社の前身。
エリシアはもう一度、表示された名前を見る。
「でしたら、管理部へ任せれば問題ありませんね」
「通常ならそうですね」
「通常なら?」
「古い在籍記録ですので、研究企画側にも照合依頼が回っています。研究資産の権利関係を確認するためでしょう」
「なるほど」
一度画面を閉じる。
そのまま次の仕事へ移ろうとして。
僅かな間を置き、もう一度照会記録を開いた。
サフィナは特に何も言わない。
「……ずっと前の研究員一人を、連合軍が今になって確認する理由は何でしょうね」
「古い契約整理かもしれません」
「でしょうね」
答えながらも、エリシアはしばらく名前を見ていた。
◇
昼休み。
エリシアとサフィナは、本社地下にある旧資料保管区画へ降りていた。
保管区画の前で、サフィナが確認する。
「昼食は?」
エリシアは手に持った小さな包みを見せた。
「持っています」
「なら問題ありません」
それだけ確認すると、サフィナが認証を通す。
扉が開いた。
内部には、現在ほとんど使われていない紙資料や旧式記録媒体、初期型の記録端末が整理されていた。
アステリア・ライフサイエンスの前身。
旧アステリア生体工学研究所。
現在の会社ほど大きな組織ではなかったが、人工臓器、宇宙環境医療、生体適応研究では早い時期から実績を残している。
今使われている技術にも、そこから引き継がれたものは少なくない。
「ローゼン……」
旧端末を起動する。
検索欄へ名前を入力。
《ADELHEID ROSEN》
一件。
「あった」
表示された職員記録を開く。
《アーデルハイド・ローゼン》
《生体適応研究部門》
《人工器官》
《宇宙環境適応》
《エーテル生体反応》
エリシアは画面を追う。
「思っていたより普通ですわね」
「現在のアステリアにも近い分野ですね」
サフィナが答える。
次の資料へ移る。
人工器官の長期定着。
低重力環境での身体機能維持。
長期航行時の生体負荷。
エーテル利用環境における人体への影響。
どれも現在のアステリアへ繋がっている。
「こうして見ると……」
エリシアが一つずつ資料を送る。
「思っていた以上に、昔の研究がそのまま残っていますのね」
今使われている人工器官。
宇宙都市の病院へ納入されている医療設備。
長期航行者向けの身体維持技術。
それらが突然生まれたわけではない。
名前も知らない研究者達が積み上げてきたものが、形を変えながら現在の会社へ残っている。
アーデルハイド・ローゼンも、その一人だった。
少なくとも、ここまでは。
「在籍記録としては十分ですね」
サフィナが言う。
「ええ」
エリシアも頷いた。
もう一つだけ。
関連資料を開く。
《共同研究――外部移管》
指が止まった。
《管理区分――連合軍》
「……あら」
「連合軍との共同研究ですか」
「そのようですわね」
珍しいことではない。
現在のアステリアも連合軍へ医療機器を供給し、研究協力や共同開発も行っている。
エリシアは続きを開いた。
《研究責任者――A. ROSEN》
《研究名称――閲覧制限》
《移管先――非公開》
それ以上は表示されない。
「古い機密指定でしょうか」
「その可能性が高いですね」
サフィナは表示されている管理番号を確認した。
「こちらの権限では開けません」
「なら、ここまでにしておきます」
エリシアは素直に端末を閉じた。
閲覧権限がないものを、興味だけで開く理由はない。
その時、保管棚の端に古い職員記録が残っていることに気づいた。
「写真もありますのね」
一つ開く。
研究所時代の集合記録だった。
白衣を着た研究員。
技術者。
管理部門の職員。
若い者もいれば、年配の者もいる。
識別表示を重ねる。
一人ずつ名前が浮かんでいく。
その中。
《ADELHEID ROSEN》
「この方ですわね」
エリシアは画像を少しだけ拡大した。
白衣姿の女性。
特別目立つ服装ではない。
カメラへ向けられた表情も穏やかだった。
昔、ここで働いていた一人の研究者。
連合軍との共同研究へ関わった人物。
今になって、その連合軍から在籍確認が来ている。
それだけなら、いくらでも理由は考えられた。
古い研究契約の確認。
過去資料の整理。
退役した研究計画の監査。
エリシアは画像を閉じる。
「戻りましょう」
「午後の予定まで、まだ少しあります」
「十分ですわ。調べたいものが増えたわけでもありませんし」
端末を終了させ、資料を元へ戻した。
保管区画を出る直前、エリシアは一度だけ振り返る。
「アーデルハイド・ローゼン……」
隣でサフィナが待っている。
「名前だけは覚えておきます」
「それでよろしいかと」
扉が閉まった。
連合軍から届いた一件の在籍確認。
それはまだ、エリシアにとって日常の中へ紛れ込んだ小さな疑問に過ぎなかった。
◇
午後。
研究企画部門へ戻ったエリシアの前には、昼まで見ていた古い研究記録とはまるで違う資料が並んでいた。
《長期使用型人工器官――第四次更新案》
《低重力環境下連続稼働試験》
《生体適合制御――更新項目》
会議室中央に、人工肺と周辺制御系の立体図が表示される。
「今回の更新では器官本体の基本構造は変更しません。主な対象は、センサーと装着者側への補正制御です」
担当技術者が旧型と新型の差分を表示する。
「回収された十二基のうち、三基で測定値の偏差が確認されています。ただし、使用者への直接的な健康被害はありません」
「三基とも使用期間は同じですの?」
エリシアが尋ねた。
「一基だけ交換推奨期間を超えています」
「でしたら、その一基は分けてください。期間内の二基と一緒に扱うと、製品側の異常か、長期使用による劣化なのか分かりにくくなります」
「再集計します」
「使用者の勤務環境もお願いします。月面勤務と長距離船では条件が違いますから」
「分かりました」
説明が進む。
人工器官。
宇宙環境下における人体の変化。
生体と人工物の長期適合。
その辺りなら、エリシアの専門に近い。
だが、表示が細かな制御系へ移ると、途中で手を上げた。
「すみません。こちらはもう一度お願いします」
技術者が制御図を拡大する。
「この値は装着者側の生体変動を一度平均化してから、器官側へ戻しています」
「では、こちらが逆補正?」
「はい」
説明を聞き、エリシアは小さく頷いた。
「分かりました。ありがとうございます」
「こちらはヴァレインさんの専門から少し外れますからね」
「ええ。ですから専門の方に聞くのが一番ですわ」
エリシアは自然に答えた。
月面都市にある月兎大学。
それが彼女の母校だった。
月兎と書いて、読みは――げっと。
月に兎が棲むという古い伝承。
そして、人類が宇宙へ進出し、ついに月を手に入れた――GETしたという開拓時代の言葉遊び。
その二つを重ねて付けられた名前だった。
英字では《G.E.T.》とも表記される。
GraduateInstituteofEngineeringandTechnology
校章には、ルナラビット系教育機関を示す《LR》を崩した意匠が用いられていた。
エリシアはその月兎大学を飛び級で卒業し、宇宙生体工学の博士号を取得している。
だからといって、人工器官を構成する電子回路や制御機構の細部まですべて専門というわけではない。
「先ほどの再集計は明日の午前で構いません」
エリシアが担当者へ言う。
「急いで数字を取り違える方が困りますから」
「助かります」
「こちらこそ。お願いします」
会議はそのまま続いた。
その間、サフィナは必要な修正項目と担当部署を淡々と整理していた。
エリシアが研究内容を見る。
サフィナが、それを仕事として繋ぐ。
二人の役割は自然と分かれていた。
◇
会議を終えた頃には、ハルモニアの人工照明も僅かに色を変え始めていた。
エリシアは自席へ戻り、残っている通知を順番に確認する。
共同研究先。
大学関係。
社内確認。
その中に一件だけ、仕事用とは別の通知が入っていた。
《ILYA》
「あら」
画面を開く。
数日前、外縁遺構群の年代測定について送っていた質問への返信だった。
《表層測定だけで年代を決めるな。内部構造の形成順を先に確認しなさい》
その下には、過去の調査記録が一件添付されている。
「……やはり、そこですのね」
エリシアの口元が僅かに緩んだ。
サフィナが横を通りながら画面へ一度目を向ける。
「イリヤ教授ですか」
「ええ。以前送った質問の返事です」
「では、そちらは勤務後に」
「まだ何も言っていませんわ」
「先ほどまで会議でしたので」
サフィナはそれだけ言って、自分の席へ戻った。
エリシアは返信画面を開きかけ、少し考える。
結局、添付資料だけを保存して画面を閉じた。
その瞬間。
昼に見た名前が頭をよぎった。
アーデルハイド・ローゼン。
昔のアステリア。
エーテル生体反応。
連合軍との共同研究。
イリヤなら、あの時代の研究者について何か知っているかもしれない。
けれど。
「……まだ、そこまでする話ではありませんわね」
小さく呟く。
連合軍から古い在籍照会が来た。
閲覧制限された共同研究があった。
今分かっているのはそれだけだ。
エリシアは連絡画面を閉じた。
◇
夕方。
その日の仕事もほぼ終わり、エリシアとサフィナが翌日の予定を確認していた時だった。
端末に通知が入る。
《旧研究員在籍記録照会――追加確認》
「ローゼン?」
エリシアが開く。
連合軍への回答を作るため、管理部が古い人事記録を追加で照合した結果だった。
《対象――ADELHEID ROSEN》
《在籍確認――成立》
《最終所属――生体適応研究部門》
《所属変更――共同研究部門》
《管理移行――連合軍指定》
そこまでは昼に見た記録と同じ。
その下。
《退職処理――確認できず》
「……退職記録がありませんわね」
サフィナが自分の端末にも資料を表示する。
「旧研究所時代の人事台帳は一部欠損していますね」
《共同研究部門移行後――所属確認不能》
《連合軍側資料――照会権限外》
「連合軍側へ移った後の記録がないだけかもしれません」
「ええ。その可能性が高いでしょうね」
エリシアはすぐに頷いた。
「連合軍から求められているのも、在籍していたかどうかだけですし」
「回答には確認できた範囲だけ載せますね」
「お願いします」
それで終わるはずだった。
サフィナが画面を閉じようとした時、資料下部の関連記録に一件だけ別の表示が残っていることに気づいた。
「エリ」
「何です?」
「こちらを」
画面が転送される。
《関連旧資料――一件》
《本社保管――該当なし》
《創業家管理資料――該当あり》
エリシアが眉を寄せる。
「創業家?」
さらに開く。
《ヴァレイン家旧保管記録》
「……うちですの?」
「そうなっていますね」
《媒体――物理資料》
《電子記録――なし》
《詳細――未登録》
表示されるのは管理番号だけだった。
アステリアの創業家である以上、旧研究所時代の契約原本や経営資料がヴァレイン家側へ残されていても不思議ではない。
だが、ローゼンの名前から関連資料として一件拾われている。
エリシアは管理番号を見つめた。
「保管場所は分かりまして?」
「この記録だけでは。家側の資料管理を確認する必要があります」
「では、明日にしましょう」
サフィナが少しだけエリシアを見る。
「今からではなく?」
「別に逃げませんもの」
エリシアは管理番号を自分の予定へ加えた。
《旧ヴァレイン家資料――確認》
その下へ、名前を一つ。
《ADELHEID ROSEN》
「これで十分です」
「では明日、必要なら保管先を確認します」
「お願いします、サフィ」
それ以上、二人はローゼンについて話さなかった。
◇
本社を出る頃には、ハルモニアの街は夕暮れを模した光に包まれていた。
頭上に広がる人工の空は、昼の青から淡い橙へ変わっている。
仕事を終えた人々が駅や居住区へ流れ、反対側からは夜間勤務へ向かう者たちが歩いてくる。
エリシアとサフィナも、人の流れに混ざって企業研究区を抜けていく。
途中、大通りに設置された大型表示がニュースへ切り替わった。
《宇宙公共ニュース》
『月面では現在、次世代型エーテルクリスタルの研究開発が進められています』
画面に月面の研究施設と、試験用の結晶が短く映る。
『従来型より安定した新型結晶の実現を目指すもので、研究にはエーテル研究者ドクター・レオン氏も参加しています』
映像が切り替わる。
《研究協力――Dr. LEON》
「あら」
エリシアの歩調が少しだけ緩む。
「レオン博士」
それだけ呟いて、画面を見る。
ニュースは研究内容へ深く踏み込むことなく、月面で開発が続いていることを簡単に伝えた。
すぐに次の話題へ切り替わる。
《火星圏航路――大型貨物便運航再開》
エリシアも再び歩き出す。
その横で、サフィナは特に何も尋ねなかった。
学生時代からエリシアがレオンと面識を持っていることは知っている。
それだけだった。
少し歩いたところで、エリシアは端末を開いた。
明日の予定。
その一番下。
《旧ヴァレイン家資料――確認》
《ADELHEID ROSEN》
朝には知らなかった名前だった。
今も、分かっていることは多くない。
昔、アステリアにいた研究者。
人工器官や宇宙環境への人体適応を研究していた。
連合軍との共同研究へ移り、その後の記録が曖昧になっている。
そして何故か、ヴァレイン家にも関連する古い資料が一件残っている。
「アーデルハイド・ローゼン……」
エリシアは名前を確かめるように呟いた。
答えを急ぐ必要はない。
明日、資料を確認する。
何もなければ、それで終わる。
端末を閉じる。
頭上では、月面都市から到着した便の案内が流れ、その隣では火星圏へ向かう船の出港時刻が更新されていた。
人も。
船も。
情報も。
ハルモニアでは絶えず行き交っている。
その流れの中へ。
長い間埋もれていた一人の研究者の名前が、静かに戻り始めていた。




