第65話 ようやくAランク
討伐を終えた僕は帰還の宝珠でダンジョンの入り口まで帰還した。
ダンジョンの内側からドアを開けると、そこにはリディルカ、ニーリェ、シシルーの3人が居て、僕の帰りを待っていた。
「やったな可奈芽」
「うん!」
僕とニーリェは手慣れた感じでハイタッチを交わした。
「すごいです可奈芽さん。あそこから一人で倒しきるなんて」
「うむ。見事であった。流石はこのリディルカが認めた仲間だ」
シシルーとリディルカからの賞賛の言葉。僕は照れと自慢の混じった顔で返す。
「へへーん。でしょでしょー」
そうこうしていると、なにやら僕達の元に大勢の人が集まってきた。
「すげえぜ嬢ちゃん!」
「かっこよかったよー」
「私ファンになっちゃいましたー」
見ず知らずの人達から歓声が飛んでくる。まるで英雄の凱旋だ。きっと配信で僕達の活躍を見てくれた人達だろう。変異種による街の襲撃という大事件を解決したからか、僕は突如として有名人になったらしい。これがバズるというやつか。
僕達に向けられる賞賛の声、感謝の声、尊敬の声。それらの言葉から彼らの意思が伝わってくる。突然のモンスターの襲撃で不安だった。もし討伐が失敗していたらと思ったら気が気でなかった。討伐部隊が壊滅状態だった様を見て、追加のボスが現れた事態を見て、半ば絶望もしていただろう。この世界のダンジョン内ではやられても死なないから普段はモンスターも大した脅威として扱われていないのだけれど、ひとたびダンジョンから出てしまうとそれは市民にとっての命の危機にもなる。普段檻の中にいた猛獣が解き放たれた様なものなのだ。それが今回の一件でよく分かった。
僕達は集まってきた人達と握手をしたり、せがまれてポーズを決めたり、ファンサービスをしていった。
しばらく時は経ち、その場の熱も次第に冷め、僕達の元に集まっていった人もはけていく。
熱狂も落ち着いた所で、リトライズと極炎の光星とブレイドファングの3パーティーはギルド内の休憩所に集まった。
皆は動画で今回の戦いを見直した後、感想を語っていく。
「それにしても、まさか可奈芽ちゃんが止めを刺すとはねぇ」
「だよなぁ。あそこで攻めるガッツ。いつも後方に居るから前に出て戦うタイプじゃねーと思ってたぜ」
「うちのお嬢も、ダンジョン内の変異種が消えた時にはリディルカさんがやってくれたって思っていましたしね」
「リディルカさんがやってくれましたわーって大はしゃぎでしたもんね」
「もう!そういう事は言わなくていいの!」
「ほんと凄かったですよねー。変異種を倒して進む姿なんて一人前の戦士の風格でした。最後の止めを刺す瞬間なんて、つい熱中して画面の前でいっけーって叫んじゃいましたもん」
皆からすごいすごいと言われてちょっぴり照れくさくなってきた。僕はほんの少し謙虚な姿勢を見せる。
「いやぁ、僕があそこまでやれたのもシシルーのお陰だよー。オーバーリミットがなかったら僕もああまでやれなかったしさ」
シシルーの活躍にリュートは自分の事の様に誇らしげだ。
「確かに、シシルーも大活躍だった。あの奥の手のお陰で形勢逆転できた訳だしな。シシルー、いつの間にあんな魔法を使える様になったんだ?」
「私、強化魔法しか上手く使えないから。せめて強化魔法だけは負けない様にしなきゃって思って、結構前から習得のために頑張ってたんです」
「でも、オーバーリミットって前衛の多いパーティーでこそ真価を発揮するやつだよね?魔法火力を主軸にするリトライズとは相性悪くない?」
レイラの質問にシシルーは照れた様子でモジモジしながら答える。
「私達、ブレイドファングの皆とも一緒にダンジョンへ行ったりするじゃないですか。だからその時に皆が活躍する魔法が欲しいなって思って。本当はお披露目もブレイドファングの皆と一緒の時にしたかったんですけど」
「って事は、私達のために?」
フィルシィの質問にシシルーは頬を赤らめてコクリと頷いた。
「シシルー!!」
「アタシらのために頑張ってくれたんだねー、ありがとー」
感極まってシシルーに抱き着くレイラとフィルシィ。
そんな様子を見て、リュートはシシルーに微笑みを向けて言う。
「じゃあ、また一緒にダンジョンに行く時に改めて見せてくれよな」
シシルーも同様に微笑みを返しながら答える。
「うん」
シシルーとブレイドファングの面々がわちゃわちゃと盛り上がっていると、
「よぉ」
ディクスがやって来て気さくに声をかけてきた。
「あ、兄ちゃん」
「リトライズの皆さん。この度は討伐の協力本当に助かりました、ありがとう。そして、すまなかった。もう少し冷静に対処していれば、あの時点で可奈芽さん1人きりせずに済んでいたかもしれない。我々も精進が足りなかった様だ」
頭を下げるディクスにいいよそれくらいと言葉を返す。
「あれはしゃあなしだよ。能力とかも分かんない相手だったんだしさ」
「それと、ニーリェ」
「ん?」
ニーリェは首を傾げた。
「本当に強くなったな。一緒に変異種と戦っていて、とても心強かったぞ」
兄として妹を褒めるディクス。大してニーリェは誇らしげな様子。
「へへん。当然だろ?オレは騎士団長ディクスの自慢の妹なんだからさ」
とディクスとニーリェが話していると、今度はニルスンがやってきてディクスに告げる。
「団長。そろそろお時間です」
ディクスはやれやれといった感じにため息をつくと、
「俺は報告書とか今後の対策の会議とかあるから行くとするよ。今回の報酬は出来る限り奮発するつもりだから、楽しみにしておいてくれよ」
と言い残し、去って行った。
そこから僕達は少しの間雑談をし、ブレイドファングの皆が用事があるとの事で去っていくと、じゃあわたくし達もこの辺でと極炎の光星も席を立つ。
そして去り際にロザリンは僕達に向けて言う。
「そうそうリトライズの皆さん」
「む?どうしたのだ?ロザリンよ」
「今回の件、結構な功績として扱われる事になるでしょうし、Aランクの申請も通るのではなくて?そろそろAランクパーティーになる頃合いじゃない?リディルカ」
探索者パーティーのランクは、そのパーティー全体の戦力と功績によって評価される。僕達は元々戦力は十分で、実績不足でBランク止まりだった。今回の件で功績は十分だろうから、そろそろAランクになったら?とロザリンは煽ったのだ。
「うむ。我らリトライズは後日Aランクへの昇進を申請するつもりだ。功績も十分であるし、順当に申請は通るであろう。」
「では、わたくし達の勝負はこれからという事ですわね、リディルカ」
「あぁ。Aランクパーティー同士、切磋琢磨していこう、ロザリンよ」
そんな言葉のやり取りの後、ロザリン達極炎の光星は去って行った。
そして後日。僕達は討伐の報酬を受け取るついでにAランク昇格の申請をする事にした。
いくつかの書類を提出し、しばらく待っていると。
「お待たせしました。リトライズの皆様」
ギルドの職員が僕達を呼び、そして告げる。
「おめでとうございます。探索者パーティーリトライズはこれよりAランクパーティーとなりました。より一層の活躍を期待しております」
昇格の通知。それを聞いた僕は傍にいたシシルーに抱き着き「よっしゃー!」と叫び、シシルーも同じく僕に抱き着き「やったー!」と声を上げ、ニーリェは「ようやくAランクだな」と感慨深い表情を浮かべ、リディルカは「当然だな」と余裕の表情で落ち着いている。
これにて僕達は探索者パーティの最高ランク、Aランクへと昇格したのだった。




