第61話 開戦
中央広場に入ると、その場を埋め尽くさんと言わんばかりのモンスターの群れ。その群れの中に鎮座する大本を思われる巨大な変異種。既に感知スキルで見てはいたけれど、直接目で見るとその巨体とその軍勢は圧巻。見ただけでも気圧される圧力だった。
そんなモンスターの軍勢に向け、挨拶代わりと言わんばかりにリディルカを含めた魔法組は先制攻撃をかます。
火炎、暴風、電撃、氷気、4人の魔導士から放たれる魔法が幾重にも折り重なり、僕の眼前に局地的大災害が作り出された。火炎と暴風が合わさり火炎の渦となってモンスターの群れをを飲み込んだかと思えば、凍てつく冷気によって急速に冷凍、幾多のモンスターを氷漬けにし、氷像となったモンスター目がけて雷が落ち、氷もろともモンスターを砕いていく。今回のモンスターの群れに引けを取らない、圧倒的なインパクトだ。
そんじょそこらの相手だったらオーバーキルであろう魔法の連撃。だけど今回の相手はそんな軽い相手じゃなかった。
「『倒しきれてません!来ます!』」
ニルスンが叫んだ。
いくつもの魔法が撃ち込まれていてもなお倒しきれてはいなかった。攻撃を受けたモンスターの群れはこちらに向かって来ている。
だけど先制攻撃で倒せないのは想定済み。前衛組が前に出て迎え撃つ。
盾持ちの前衛が突撃を受け止め、他の前衛が近接攻撃で止めを刺していく。突撃してきているとは言え、相手は魔法攻撃を食らって手負いの状態。この場に居る手練れの戦士であれば次から次へと倒していける。
「状況は?」
華麗な槍捌きでモンスターを倒しながら、ディクスは僕を含めた感知スキル持ち達に聞いてきた。
魔法で弾幕を張っているという事もあって今は視界が悪い。こういう時も僕達の様な感知スキル持ちの出番なのだ。
「先制攻撃で半分くらいは減らせてる!数が多いから突破されてるけど、このまま戦えば進化済みの取り巻きは倒しきれそう!」
「『本体が魔法を発動!アイシクルメテオです』」
巨大の変異種は片手に持った杖を掲げる。すると頭上にその変異種と同じくらい巨大な氷塊が現れた。
「魔法で迎撃は可能か!?」
「無論!」
ディクスの問いにリディルカは流れる様に答え、迎撃のための魔法を発動させた。
巨大な氷塊に対し、リディルカの頭上には燃え盛る光星の様な巨大火球。ロザリンが使っていたのと同じ魔法バーンフレアだ。ロザリンの使うものよりも一回り小さいものの、それでも十分大きい。
変異種が氷塊を放ち、それに合わせる様にリディルカは火球を射出。二つの魔法は衝突し、相殺。周囲に生暖かい風だけを残して消え去った。
「『本体が向かってきます!』」
魔法が防がれたからなのか、大本と思われる変異種は剣を振り上げ、こちらに向かって来る。
「任せろ!」
そう言ってディクスは前に出た。
それによって大本らしき変異種のヘイトはディクスに向き、巨体の猛攻がディクスを襲う。
変異種は手に持った剣を無造作に振り回すが、ディクスはそれを最小限の動きで掻い潜り、続いて変異種はディクスを踏みつけようとするが、ディクスはひょいひょいとかわす。歴戦の経験がなせる業なのだろう。初見の相手の攻撃にもかかわらず見事に避けきっている。
そしてディクスは変異種の腹めがけて槍の一突きを繰り出した。
「固いな」
攻撃は当たった。だけど浅い。殻の装甲にちょっとした穴が開いた程度で奥まで届かず、言わば薄皮一枚といった所。
変異種はディクスを振り払う様にがむしゃらに暴れ、ディクスは背後にステップして変異種から距離を取った。
そしてディクスは槍を構えながら皆に指示を出す。
「こいつは俺が引き受ける!皆は進化個体の殲滅を!」
「おう!」
「はい!」
「了解!」
敵の大まかな戦力は分かった。
大量に居た取り巻きは一体一体強力ではあるけれど、大勢の手練れが居る今の状況であれば倒しきる事ができる。本体らしき巨大な個体もディクスであれば抑えておける。進化前の個体は湧き続けているけれど、弱いので巻き添えで倒せている。このまま強い取り巻きを倒しきって大本を集中攻撃すれば倒せそうだ。
ディクスが大物を引き付けている間、皆は各個撃破を進めていく。




