第48話 カーラ武闘大会
カーラ共和国有数の大都市グアド。アガットと同様他の港への中継地点となる港街で、特別なイベントが無くとも大勢の人が行き交う街だ。ある日ある時、その街で近接戦闘の強さを競う大会、カーラ武闘大会が開催される事となった。
多くの人で賑わい、祭りとはまた違った熱気の中、ニーリェがワクワクと気を高ぶらせていた。
「ついにこの日が来たか、カーラ武闘大会!武術の祭典!!」
よっぽど待ち遠しかったのだろう、大げさなポーズ等を決めて、明らかにテンションが高い。普段大人びているニーリェだけど、今は童心に帰っているって感じだ。
「なんだか上機嫌ですね、ニーリェさん」
「だねー。ここに来るまでもずっとソワソワしてたもんね」
普段しっかりしているニーリェが無邪気にはしゃいでいるのだ。つられてこっちまで楽しくなってくる。
そうとう気が乗っているんだろう。ニーリェは自分から楽しみにしている理由を語り出す。
「この大会は、この国で最強は誰かを決める、そんな大会だ。一対一、正々堂々、そんな状況で誰が強いのかを競うんだ。そんでな。オレの兄ちゃん、前回この大会で3位だったんだぜ?スゲーだろ!」
よっぽど兄が誇らしいのだろう。兄の功績を自分の事の様に自慢するニーリェ。
それを聞いたリディルカは感心の表情を見せる。
「ほぅ。前の変異種討伐でかなりの実力者である事は分かっていたが、まさかそれ程とはな。道理で、このリディルカの大魔法に匹敵する威力を出せる訳だ。すると、目的はディクスの応援といった所かね?」
「応援もするけど、大会はオレも参加するよ。前回はオレ、あと一歩で本戦にいけなかったから、今回は本戦に出場して、出来れば兄ちゃんと一対一で戦いたいって思ってるんだ」
ニーリェの瞳には闘志が宿っている。
ニーリェは兄の強さを尊敬している。だからこそ、その兄と正々堂々と戦えるだけの力を持ちたい。同じ地平に立ちたいと強く思っているのだろう。
「なるほどー。ニーリェにとってのリベンジでもあるんだねぇ」
「おう!」
そうして僕達は雑談をしながら大会の会場へと向かった。
大会の会場は外観だけだとコロッセオ的な歴史を感じる建物。けれど中は結構新しい。古い建物を活用しているというより、歴史的建造物っぽいのを新しく建造したって感じだ。中は受付があって、休憩所があって、配信の映像を見る場所があって、まるでダンジョンの入り口がある探索者ギルドの様な内装だった。
(なんかダンジョンみたいだねー、ここ)
と考えていると、
(ダンジョンかー、まぁあながち間違ってないかもねー。この大会の会場は疑似的なダンジョンみたいなもんだからねー)
どうやら神様はその理由を知っている様子。
(疑似ダンジョン?)
(うん。ダンジョンの様な異界を作り出す魔道具があってね。ここではそれを使って大会の会場としているんだー)
(へぇー、じゃあここでやられちゃったら裸で転送されたりすんの?)
(そうそう。死んだ場合だけじゃなく、戦闘不能や降参とかの敗北でも飛ばされるって感じかな)
と本の神の説明に続き、祭りの神がしゃしゃり出る様に語り出す。
(この会場。最初は兵の訓練目的で使われてたんだがな、次第に探索者とかがどっちが強いのか競う時に使われる様になってな、次第にそれを見る観客とかも出てきだして、どうせなら大きな大会にしちゃおうってんで、この大会が開かれる事になったんだ。歴史がありそうで、案外新しい大会なんだな、これが)
(ほぇー)
別に大会の歴史とかはあんまり関心がない。なんだか興味の無いショート動画が流れてきた気分だ。
神様とそんなやり取りとしていると、受付に並ぼうとしていたニーリェは僕にある提案を投げかけてきた。
「そうだ。可奈芽も一緒に出ないか?」
「えー?僕もー?そこまで近接戦闘ってタイプでもないよ?僕」」
嫌という訳じゃない。けれど、武術の祭典的な大会で僕の様な感知スキル担当みたいなのが出場すると、浮いちゃうんじゃないかと思ってしまうのだ。
しかしニーリェは食い下がってくる。
「大丈夫大丈夫。この大会、参加だけなら気軽に出来るし、あまり接近戦とかしない人でも記念に参加したりするもんだからさ、可奈芽もせっかく来たんだし、一応剣も使えるんだし、な?」
この感じ。何かのオーディションとかで、一人で応募するのが心細いからと一緒に応募しようと友達を誘う感じだろうか。気持ちは分からなくもない。なんなら僕にも経験がある。
正直カーラ武闘大会には興味はないのだけど、ニーリェが一緒に参加しようと誘ってくれるのは嬉しい。僕の存在が浮く様な事はないというのであれば、迷う必要もないだろう。
「うーん。それじゃあ、いっちょやってみるかな」
と、ニーリェに誘われる形で、僕はこのカーラ武闘大会に出場する事となった。




