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誤字・脱字等を修正いたしました。27.5.6
どう―――にか、熊男から脱出した私は手首を縛られていたロープを解いてもらって速攻で熊男の頬をひっぱたいておいた。なぜかうまくいった事にすごく歓喜してもう一発と私の左手も仰いだけど、さすがに二発目は止められたわ。まあ、顔をあの入ってきた騎士に見られないようにしてくれたから少しだけ許してあげるわよ。少しだけね。まだ私の怒りは収まっていないわ!
とりあえず、騎士の男―――アーバンが言うには私が熊男の手によって気絶させられて、ここに………私の部屋ね。に、運んだらしい。殺さず穏便に、が思い浮かばず気絶させたんですってね。通りで首が痛いわけだわ。
それから私が倒れた事によって警戒心むき出しの子どもたちは後から来たアーバンと殿下に距離を取って逃げ出そうと思ったのだけど………ミミルが泣き出してしまったらしい。ずっと。朝の出来事からお昼は過ぎているんですって。窓から太陽が西に傾いているのがわかるわ。すごい長く泣いているのね。
それがまた厄介で、鳴き声が響いて頭が痛くなるんですって。それがずっと続いていて、今ではみんなが倒れるんじゃないかと言うくらい床で踞っているらしい。ただ個人差があるようで、アーバンはまだ平気な方。殿下はぐったりしてるそうよ。子どもたちも数人踞っているそうね。こうしてはいられないわ!
「止められるのか?アーテとか言う女が必死に宥めていたが聞いちゃいねぇし。他の少女らがなんか色々やってても泣き止まなかったぞ?おまけに似たようなガキもつられて泣くし………」
「そりゃあ、知らない男がドタバタ来れば小さい子は泣くわよ。貴方、息子とかいないの?」
「いねーよ。俺らは一人を選ぶのに裏を片っ端から探って探り合いしてようやくなんじゃねーか?」
「………一応聞くけど、熊男も?」
「ゼフォンドだ。殿下と俺とアーバンは王家の血筋を受け継いでいるから、迂闊に女を迎えられない」
「貴方、矛盾してるわよ」
「あれはアーバンの基準だ。俺はホルティーナがいい」
「私の裏を調べたら一瞬で手を引っ込めるのでしょうね」
まあ、障害はハーフエルフと言うだけでしょう。王家の血筋なんて時効よ。調べられるもんなら調べてみなさい、と挑発したらすぐに二つ返事が返ってきてアーバンと一緒に呆れたわ。本気なのかまったくわからない。
そんな事を言っていたらすごい大声で泣き叫ぶ二つの合唱が中にいる部屋にたどり着いた。なぜか壁に皹が入っているのだけど………これは?指を差したら首を横に振られたのだけど、朝はなかったわよ、こんなもの。貴方たちもじゅうぶん、原因に含まれてると思うわ。
さて、躊躇いなく扉を開ければ一枚隔てていた壁がなくなったせいで頭に直接、響くような泣き声が木霊していた。………すごいわね………殿下と―――テテラも駄目だったのね、きっと耳もよかったのね。後はマーデクはお年寄りだからわかるとして、あらバナル、貴方もダウンしたの?それにカトレーもね。シェルカは獣族だからしかたないわ。
なんだか意外なようなそうでもないような数人が踞っていて驚いたものね。とりあえず私たちの声はかき消されているので、肘を突っついてきたアーバンがミミルを指差して拝み始めた。でも耳は塞ぎたいらしい。必死ね。まあ、別にいいけど。私で収まらなかったら他の手段なんてないわよ。
とりあえず顔が酷いから濡れた布を―――二個ね。これを用意して………あら。ここの壁も皹が入ってる。すごいわね。もしかしてミミルがやったのかしら。だとすると確か声で物を壊せるのはハーピーか夜族ね。吸血の類いの。そのどれかの混血の可能性があるわね。後で背中を見てみましょう。
絞った布を持って戻ってくればアーバンが必死に何かを伝えてきたわ。ミミルを何度も指をさしてもね、教育に悪いじゃない。止めてちょうだい。それを丸っきり無視して私はミミルの前に立った。こうしないとわからないでしょうね。でも、涙をいっぱい流したおかげで私は見えないみたい。トッティはさっき泣き始めたからすぐに私に突進してきてローブを濡らし始める。くぐもった声がすごいことになってるわ。
ミミルはまだ私に気づかない。だったら触って気づかせるしかない。いつもやっているように………の前に、顔を拭きましょうね。鼻水とかで凄いわ。少し強引に鼻を拭いてやればいやいやと顔を振られたけど、拭かなきゃ口に入って大変な事になるのよ?もうなってるかも知れないけど。
暴れだしたから頭を撫でてあげる。ゆっくりと髪を撫でるように、頬も一緒に撫でて。たまに頬をつついてやって涙を拭う。それでも続けてやれば私がようやく見えてきたのか、少しだけ声が収まってようやく私だと確認出来れば飛び付いて泣き出す。ローブでくぐもっているけど、また泣き出してしまったから収まったのか分からないわね。でも、声の大きさは小さくなってきたと思うわ。
それから頭と背中を撫でて、リズムもつけて撫でてやる。トッティはもう落ち着いたらしいわね。疲れて寝てしまったわ。ミミルはもう少し。まだぐずってて涙は止まらない。私の名前………ホルティーナを舌足らずながらも、何度も呼ぶ。きっといきなり倒れたから、怖かったのよね。よじ登って抱きついてきたから、トッティを蹴る前にその体を支えて、体も少し揺らしながら言葉をかけていく。
「おじさんたち、怖かったわねー。酷い人たちだったわねー。最低な人たちよねー」
「…………………………ようやく静まって何を言うのかと思ったらっ―――さっきのがあるから無闇に反撃ができないのが辛ぇなっ」
「アーバン、そうやって悔しそうな顔を出してると怖いって言われて泣かれるんだぞ」
「やけに知ったような口ぶりじゃないか、ゼフ」
「毛深い方でただ立っているだけなのに泣かれた」
「っ―――………………おいっ、俺を笑わせるなっ!声にでるっ」
ずいぶんと楽しそうね。ミミルが疲れて眠りに入りそうだから、ちょっと静かにしていなさいよ?もう少しで強ばっていた体に力が抜けそうなんだから。こうして抱き締めて心音を聞かせてあげると子どもは静かになる。きっと、お腹の中でいる時を思い出すのでしょうね。こうやって静かじゃないと聞けないもの。
ゆっくり。時間をかけてミミルをあやしたおかげでようやく寝息が聞こえてきた。本当は水を飲ませたかったのだけどね。後で飲ませなきゃ………ローブがこんなにぐちゃぐちゃになるなんて凄いわね。
「やっと………話ができる」
「話す気なんて、ないのだけど」
「そんなわけあるか。だが、少し待て………気持ち悪い………………なんなんだ、そのガキ」
「さあ」
言ってしまえばここには迷いこんで来た子どもたちを私が拾って世話をしているようねものだもの。素性なんて、本人が言ってくれなきゃわからないわ。私の言った言葉が気に入らないのか、それともまだ体調が悪いからなのか。すごいしかめっ面でこちらを見てきた。でも私にはミミルがいる。起こしたらどうなるか、眼に見えているでしょうね。
「このまま話すのか………ゼフォンド、水をくれ」
「お帰りいただければ、話すこともないでしょうね」
「余は諦めておらん」
「残念だわ」




