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誤字・脱字等を修正いたしました。27.5.6

『貴方の名前はアヴリーベ。私の子どもだから族長になれるのよ。そしてあの人に逢える時、幸せになれるわ。楽しみね』


 そうやって微笑んだのは私と同じようにストレートな夕日色を腰へ流した、瑠璃色をした瞳の女性。これは………嫌な夢の、序章だわ。すぐにわかる。


 見たくもないのに夢が終わらない。私は初めから道具だったのだから………母は笑いながら言った。ハーフエルフでもエルフの里の長になれると。最初はなんの意味かわからなかったけど、大きくなるにつれ母はエルフの里で族長の娘である事がわかった。そして、母は私にその族長の座を譲りたかった事も―――


 私は母から―――女なら愛をもらっていない。女が遊び人と言うわけでもないけど、私を族長にさせるために家を出て里から少し離れたところに一人で暮らしていた。女の噂は明るくて優しくて、里の中の人気者。そうみなが言ってるけど、私にはそれか理解できない。子どもを放って人気者って、なにかしらね。


 それから私が十になった頃。族長としての義務を叩き込まれて三年ぐらいだったかしらね。ある男がきた。その男は見たことのない立派な服を来て、女の前で笑う光り輝く金糸に青い空の色。そして、悲劇の始めりの呼んだ男でもある。


 簡単なこと。女は初めからその男………この国の王子に惚れ込んでいた。相手はどうやら一夜限りのお遊びみたいだったけどね。迎えに来てくれたと喜んだ女に笑みを浮かべる男。私は遠くでそれを眺めて一人になるんだと、気にも止めることなく見送るだけ。族長が割り込まなければね。


 女の見目を買って妾に連れていこうとした時に族長だった女の父、私からみて祖父が『私』という存在を告げた。女は知らぬ存ぜぬ。男は私を見つけてしまって女をその場で捨てた。女の髪色は………エルフでその女だけの色だったから。子どもの存在はいらなかったんですって。男もまた、綺麗な女としか見ていなかった。


 必死に食らいつく女に嫌気がさした男は次第に私も巻き込み、最終的には男と女から―――酷く、汚く、言葉と呼べない不協和音が私の耳を潰す。これでも半分は同じ血を繋ぐ生き物なのか、疑いたくなるくらい。散々言ったあげくに女は捨てられ私も捨てられた。その男には発言力がかなり強い部類だったらしく、その男が言い放った言葉のおかげで『ハーフエルフ』は“ そういう存在 ”となり、広まって迫害………ハーフエルフか迫害される始まりである。


 そして私の居場所はどこにもなくなり、ここにようやくたどり着いて隠れたのに………あと三千年以上も………静かに暮らすつもりだったのに………うまくいかないものね―――…











 なんとなく………首が痛い。ぼうと呆けてしばらくそのままで動かなかった。そこでようやく………私が今、どういう状態なのかを考えたわ。そうよ。熊男の手刀で意識を持っていかれたのよ―――…


 動く気にもならなかったからそのまま眼を開く。視界はいつものように暗いからたぶん、私の顔を覆っていたフードは取られなかったんだと思う。それともハーフエルフとバレて見たくなかったから被せられたのかしら。とりあえず透視の魔法を使えば右側からガタンと音がしたわね。誰かいたの?さすがに不用心すぎたわ………


 今思えば手首が固い。少し動かせば縛られているのだと気づく。子どもたちはどうなっているのかしら………それより目の前に熊男―――毛むくじゃらを取った顔で覗きこんで来たことに驚いてしまった自分が不甲斐ないわ。


「起きたのか?」


「最悪な目覚めで起きたわ」


「気分はどうだ」


「最悪ね。子どもたちは?」


「下で殿下の話を聴いている。手荒な真似はしていない」


「そうでしょうね。大人が子どもに武力行使に出られたら誰もなにも出来ないわよ………ミミルが泣いてるわ」


「泣き止まない。困っているんだが頼めるか?」


「この腕で?」


 覗きこんでくる顔を殴る勢いで両手を前に掲げた。呆気なく避けられた事に少し腹を立てながら上下にふる。そして掴まれたから頭突きをっ………私の方が不利なのは当たり前よね。肩を押さえつけられてあえなく動けなくなる。後は足だけね………男女の力なんて歴然としているからやりませんけど。


 肩を押さえていた右手が顔に伸びてきたので抵抗する。と、言っても、両手は熊男の左手によってビクリともしないから顔を逃がすしかないのだけど………逃げられない、わよね。ここで止めて、と叫んだらどうなるのかしら?私が取り乱さなければ解放してくれるの?それはいつなんでしょうね………


「何をする気?触らないで」


「顔を見るだけだ。ホルティーナの顔を」


「ミミルが泣いているのよ。早くミミルのところに行かせて」


「………ホルティーナはまず自分を大切にしてくれ」


 よく、わからないわ。自分を大切に?大切にしていてわ。だからこうやって身を潜めていたのよ。だから、捲ろうとしないで。隠蔽の効果が付いているとは言え、今まで顔を隠していたのだから顔を見せることはする必要がないのよ。


 でも両手は塞がれているし、結局は去勢の声と頭を横に動かすことしかできなくて虚しかった。そして顔を暴かれるのよ。なぜか全部は………取られなかった。代わりに私の左目が強制的に閉じなくてはならなくて、目尻のよくわからない固いような、でも柔らかい何かが当たる。意味が、わからない。しまいには右目の目尻も、やられた。


「泣いてる」


「泣いていないわ。勝手に口付けないで」


「俺は―――ホルティーナが、好きだ」


「いつぞやに顔を見て惚れたとか抜かすなら、退いて。トッティまで泣き出しているじゃない」


「違う。お前だけなんだ………落ち着けるのも、こうして対等に話せるのも。ホルティーナだけだ」


 だからって、口付けるものでもないでしょうっ―――でも、今回は啄むように触れて離れての繰り返しだった。と思ったら深くなってきたわねっ。油断させる意味だっなの!?迷いなく手を動き回るも、いつの間にか覆い被さっていて身動き一つも出来ない。唯一、動かせる足があるけど―――どうやら熊男は横から覆い被さっているだけ。つまり上半身しか覆い被さっていなくて、足を使うには自ら腰より上まで振り上げなくてはならない。………腹立つっ!


「おいゼフ!さっさとホルティーナとやらを起こして止めて………くれ………………………邪魔した。すまん」


「んーっ!!っ、いいからこの熊男を退けなさいよ!!」





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