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41sideガトラ(仮)

誤字・脱字を修正いたしました。27.4.15

 俺は誰だ。誰なんだ?


 闇に囚われた体は次第に重く冷たく俺の体を蝕む。もがけばもがくほど絡み付いてくるそれはどうあっても逃げだせれない。あのお方は無事に逃げ出せたのだろうか。それだけが、気がかりだ。


「目を冷ましたようね。覚えているのかしら?」


 ぼうっとした視界から見えるのは灰色のローブを着た………女。ここで教会のように孤児を養い、育てていると言う、素顔を隠して俺を睨み付けるような視線を送る女だ。名はホルティーナ。ここで………記憶をなくした俺は世話になっている。


 今でも自分の事は思い出せない。ただ強い使命があり、それが殿下を守ることで命に変えてもそれを遂行すると契約していた。殿下は無事なのだろうか。殿下が生きていなければ………生きていなければ?そこまで思い出せない。ただ、その使命だけが俺の命を繋ぐ。


「ホルティーナ。これは、なんだ」


「結界魔法よ。何をしても壊れないわよ」


「違う。ロープの方だ」


「それについては先程の質問に答えてほしいわ。貴方、覚えているの?」


 その意味はどういう事なのだろうか。覚えているとは?俺が覚えているのは―――殿下をお守りすること。ただそれだけ。そのためにこの結界が張ってあるらしい森まで抜けて刺客を迎撃し………その、後は。


「言い方を変えるわ。気を失う前の記憶は?」


「………気を、失う………」


「水でも被せてあげましょうか?私はまだ怒っているのよ」


「すまない」


「今さら謝ってもね。逆に腹がたつわ」


「少しだけ、思い出した。自分の事はまだだが、俺は殿下をお守りするためにこの森まで一緒に逃げてきた」


「そう………………………………それで?」


「俺は殿下を守るために刺客を返り討ちにし、力尽きてあそこで倒れていたのだろう」


「そ・れ・で?」


「………それくらいしか覚えていない」


 なんだか怒っているな。ここまでしか思い出せないのだからしかたないと俺は思う。殿下の事を思い出せたのだから俺は殿下に高い忠誠があったはずだ。自分の事より殿下のこと。たぶん間違いはない。今だって心配だと心から気がかりだ。


 しかし、なぜ俺は体が縛られているのだろうか?後ろに両手も縛られている。足もだ。そして足はなぜか寒い。どうなった?なぜこうなった。まさか俺は刺客に囚われたのか?いや、奴等はそんな事をしない。捕らえても俺は殿下の心を揺るがすほどの繋がりはないし、運ぶだけで荷物となって邪魔だ。まて、何か忘れている。なんだ?


「熊男。毛むくじゃら。変態。痴漢。露出狂。自己中心的。馬鹿。脳筋。不潔。節操なし。最っ低」


「おい、待て。なんの事だっ」


「思い出せないなら思い出さなくてけっこうよ。この、木偶の坊っ!」


 ホルティーナが怒ってる。酷く、怒ってる。いつもはからかっても結局は諦めて腕に収まるのに。それで抱き締めてみても口では文句を言いつつ抵抗するが封じて終わる。今回はかなりご立腹のようだ。俺が縛られているせいか、枝を束ねた箒が俺をつつき始めた。地味に痛いな。


 身をよじってなんとかそれを避けるがこの結界魔法とやらが俺の逃げ道を塞ぐ。どうやら俺は出れなくてもホルティーナには出入りが自由らしい。箒が痛い。顔はやめてくれ。


「だいたいなぜ貴方をここに止めておいたのかしらっ!別にどっかの洞窟でもよかったんじゃない!なんだったら私が転移で道端に捨ててもよかったのよ!それなのにこいつと来たら結界には出れないしイーグたちになつかれるし腕はいいみたいだし!探ろうとしてた私が馬っ鹿みたい!!」


 や、やめろ。その箒で叩くのはさすがに痛いっ。不格好な枝が地味に痛くてかなわん!ホルティーナの力も微力なだけに強打しないが地味に同じところに当たれば痛い。なんとか態勢を建て直してホルティーナから距離を取ろうとすれば回り込まれて意味がなかった。しかし、当たるのはもういい。遠慮したい。


 なんとか避けつつも、しかしながら両足が縛られて思うようにいかず転がればはだけたがなんだホルティーナが足を狙って攻撃をしてきた。どうやらなぜか下は下着とシーツを巻き付けているだけのようだ。寝る間に俺は何をしていたんだ?―――あ。


「ホルティーナ、待て、話せばわかる。思い出した。お前に服を作ってもらおうと頼んでいた!」


「知ってるわよそんな事!いいからさっさとその足を隠しなさいよっ!そんなの見せられたら私が困るのよ」


「手が塞がっているのだから無理だろうっ。ロープをほどいてくれないか?」


「なんで私がほどかなきゃならないの!縄脱けくらいどうせ出来るでしょ!謝罪がないなんて本当に最低よ!!」


 もう意味がわからん。縛られてどう抜け出せと言うのだ。縄脱けの技術など俺は知らんぞ。箒を振りかざすからやはり当たりたくないが故に避ける。足が寒くなるたびにホルティーナが叫ぶ。その繰り返しをしているおかげで俺も少しは考えられた。ようやくホルティーナが怒っている理由にたどり着いたときは………ホルティーナが疲れた表情で荒い息を吐きながら箒を握りしめていた。





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