42sideガトラ(仮)
誤字・脱字を修正いたしました。27.4.15
落ち着いたところで―――俺の話を聞いてくれ。というよりは体力がなくなって動けなくなったホルティーナに再び攻撃が再開される前に俺は謝った。
思い出したのだ。殿下の事もだが、殿下を狙った魔術師がいた。そのため俺はその魔術師が放つ魔術を防ぐために早く動けるこの体を使って奴等の喉を掴んでいた事を。錯乱していたとはいえ、回復をかけようとしていたホルティーナに襲いかかろうとした事は覆せない。あれはリカバリーの詠唱だ。
掴んだような気がするがそこで意識が途切れてしまっているので思い出せなかったが、時間を置いて思いだし、今さらながら罪を認め謝罪した。フードで顔を隠しているのでわからないが、荒い息の中、睨んでいるのだけは分かる。さて、どうしたものか。
「まったく………貴方、ねえ………居候の、くせにっ!癒してあげようと思った私がっ浅はかだったわっ!!………………」
「本当にすまない。自分の不甲斐なさに謝罪を口にしても許せないだろう」
「はあ………許すはずがないわよ。元から貴方は警戒対象。子どもたちの危険にさらすかもしれない、そんな危ない人間を側に置いているのよ?絶対に償わせるわ」
「………なんでも言ってくれ。出ていけと言うなら出ていく」
「そう。じゃあ―――といきたいところだけど少し気が変わったわ。私が勝手に決めるのもあれだし、ここに留まれるかは子どもたちに決めさせる」
「なぜだ?」
「貴方、このコインの意味を知ってるの?」
見せられたのは誰かの横顔が掘られているコイン。金貨のような。それでも少し大きい気がする。確か俺のズボンにそんな物が入っていた気がするが………なんだっただろうか?
「その顔じゃあ知らなさそうね。いい、このコインは国王と忠誠を交わした者に与えられる勲章みたいな物よ。これが、貴方が所持していたと言うことは王と貴方は繋がりがあるわ」
「違う。俺は殿下に尽くしている」
「記憶喪失が何を言ってるのよ。それはいいの、私が言いたいのは貴方の殿下が王の味方か、敵か。どちらか分からないのよ」
「どういう、事だ?殿下が追われている理由に何か関係があるのか?」
「そこは知らないのね。貴方の殿下が第一王子かは知らないけど、第一王子は迫害を受けて姿を消したそうよ」
殿下、が、迫害―――待て、記憶が………捕まっては駄目だと誰かが言っていた。誰にだ?あいつとは、誰だ?殿下は何から逃げていた………?
「まあ、その辺はいいのよ。問題は貴方。この忠誠を誓った王がどう転ぶかわからない。記憶があるなしに貴方が城に戻られるのは色々と困るわ」
「………なぜだ?俺は殿下に仕えているなら帰る場所は城しかない。困ることはなにもない」
「貴方がどれほどの人物かは知らないけどこっちは困るのよ。私が危惧してるのは王の元に戻った貴方の処遇。仮に貴方の殿下が第一王子であれば貴方は死ぬし、違うとしても記憶のない貴方は扱いやすい駒になる。でも、貴方が生きて帰ってきたとなればまず『どうして生きているのか』『なぜ帰ってきたのか』『王子はどうしたか』が問われるわ。貴方は逃げている殿下と一緒にいたんですもの。姿を隠して殿下を連れ出したなら、城を開けてれば誰が手引きしたのかわかる」
「俺が何かしたことになるのか」
「内城なんて知らないわよ。私が言いたいのは少なくても殿下が一人消えているの。それと同時に消えた貴方が戻ってくれば疑われるわ。そこで記憶がない貴方でも絶対の尋問が待ち受けているでしょうね。そこでうっかりにでもここを口外されると困るのよ」
「俺は喋らない」
「宛にならない言葉ね。尋問と言っているけど、聞き出す方法なんて他に色々とあるわ。手っ取り早くは自分から喋りだしたくなるような薬かしらね」
確かに、そうだな。世の中すべてが綺麗事で埋め尽くされているわけではない。姿を消した俺が戻ればまずは聞き出すだろうな。ホルティーナが言うように薬で言わされるのかもしれない。俺は未だに自分がどんな存在か知らないから、無闇に城に近づくのはやめた方がいいだろう。
しかし、ここに留まれるのは子どもたちが決める。もし、俺がここにいる事を否定されたらどうなるのだろうか?ホルティーナは俺を城に戻らせることを否定してる。今では殿下を探しだしたい。腕には多少、自信がある。一人旅は出来るのだろうか?
「どちらになるかまだ分からないけど―――留まるにしても、出ていくにしても貴方には契約魔法を付けさせてもらうわ」
「契約魔法?」
「口封じよ。それも厳重に。ここの事を喋れないようにように。子どもたちが決めたらやるわ」
「それがあれば城に戻っても大丈夫じゃないか?」
「貴方、魔法は万能ななにかだと思ってるの?私だけが魔術師じゃないのよ」
それもそうか。束縛もあれば解放もある。魔法も結界があればそれを破る術がある。契約でもそれを解く魔法があるのだろう。魔術師は恐ろしいものだ。それにしても………
「………………俺はいつまでこの格好なんだ?」
「さあ。貴方が私の首を折ろうとしたのよ。防衛は必須よ」
「それは分かる。そうじゃなくてだな、下が寒い」
「もう少し待てないの?もしここに留まる事になったらほどいてあげるわ」
「留まらなかったら?」
「契約を交わして放り出した時にほどいてあげる」
いや、絶対にほどかないだろう?なんだかそんな気がするぞ。
それからしばらくしたらバナルが入ってきた。俺の姿を見て目を点にさせていたが、なんどだか哀れんだ顔で見てくるようになった。そんな顔で見るなら助けてほしい。
子どもたちの結果は―――俺が自分自身で決めてほしい、とのことだった。少し拍子抜けで今度は俺の眼が点になる。そしてホルティーナは俺に出ていけも、残れとも聞かずに決めろと言う。俺は殿下を助けに生きたい。この思いだけは変わらない。ただ、厄介な事に顔が浮かんでこない。
俺は………どうすればいいのだろう。分からない。分からないなら悩むしかない。時間を、少しくれないだろうか?




