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誤字・脱字を修正いたしました。27.4.12
「ホルティーナ様ー。ご飯ですよー」
「ごめんなさい。体調を崩したようだから私の分はいらないわ」
「………………わかりました。明日の朝は食べてくださいよ?約束ですよ?」
「ええ。約束するわ」
アーテは心配性ね。一食くらい抜いても死なないわよ?………でも、体裁としては悪いわよね―――でもあれは熊男が悪いのよ。なんであそこでフードを取ろうとするの!子どもたちでもやらない事をっ!!思い出しただけでも腹が立つ!!
バナルたちが帰ってきた時にはなぜか一瞬で熊男の事を忘れた。「ただいま」と無事に帰ってきた子どもたちが心配だったからだと思うわ。特にカトレーとイーグはやんちゃすぎで。マティクなんかいつの間にか姿を消してそうで………まあ、杞憂に終わったのだけど。
問題はその後よ!あそこでなぜ私のフードを取ろうとするのよあの熊男っ!顔が見たい!?それは毛むくじゃらを剃ってから言うものね!!………………まったく。こんな事をしていても意味なんてないのに………
ただ気を散らしてるだけ。それだけにしかすぎないのに。なんであんなに近くにいたのに気を許したのよ!!………………そういえば、熊男の毛って一日で映えてきたのよね?あれって獣人にそんな種族がいたと思うのだけど………でもあれはけっこう特殊な部類だから違うわよね。それに手の甲とかは毛むくじゃらではないもの。
顔だけが毛むくじゃら………んー。わからないわ。でも一部だけとなると先祖帰りと言うものかしらね。あの熊男の先祖に獣人の血が混ざったと考えればほんの少しだけ納得いくわ。
先祖帰りでたまにいるのよね。ずっと人族だと思っていたけどエルフのように魔力が高くなるとか。寿命が少し延びる、やお酒が弱い家系だったはずなのに飲んでも飲まれない子どもが出来たりするドワーフ系。今はハーフが嫌われて純潔の血族が増えている。とくにエルフ。
私のせいではないけど、きっかけは私なのでしょうね。決して私のせいではない。私は好き好んで人間とエルフの間に生まれたかったわけじゃないわよ。
いつの間にか外は暗くなってる。今日の月は満月より少し欠けているのね。………そうだわ。ちょっと王都の様子でも見てみようかしら。もし熊男がマーデクのいった王子なら追い出さなきゃ………あり得そうにないけど!
そう思って瞼を閉じたら出てくる熊男の顔―――腹立つわね。別に出てこなくてもいいのよっ!まったく………久しぶりに、自分の顔を見せた事になるのかしら。まあ、今後も見せる気はないのだから放っておきましょう。隠蔽効果も毎日かかけているから大丈夫よ。
それより―――王都………………ここから北西中央に。一応手前の城下街から。そうね。やはりこういうのは酒場よね。目の裏に誰かの目を借りているかのように景色を映す。街の外壁が見え、さらに近づいて町並みが見えてくる。まだ賑やかね。目はやめようかしら?でも声だけじゃ分からないのよね………今日ぐらいいいでしょう。
それからさっと見渡して一番大きな酒場へ。むさい男の中で騎士団所属を探し出して―――いた。腰に標準型の剣。動きにくそうに鎧を来ている男とまだ軽装装備をつけた男。こっちは見習いかしら。王子の話をしてくれそうにはない雰囲気ね………まあ、一応。
『で?お前どうするんだよ』
『どうするって………先輩が誘ってくれるって言ったじゃないですか』
『誘っただろ。だからあっちで騒いでんじゃねーか』
『男がいるなんて知らなかったんですよっ。なんで一人じゃないんですか………告白する前に失恋です』
『お前、だから弱いんだろ?奪ってこいよ』
『僕は先輩と違うんです!そんなこと、出来ませんよ………』
はい、次いきましょう。女の子ならまだわかるけど男の恋愛話はちょっと遠慮したいわ。さすがにそんなものは細かく聞きたくない。でも相手は気になるわね。騎士の中って不定休日と警備ぐらいしか宿舎から出られないから王城内の恋愛が高いわよね。騒いでるって言ってたから………
と、あれかしら。まあ、盛り上がってるけど。………飲み比べて騒いでるだけだし別にいいかも知れないわね。この人たちは騎士………じゃないわね。筋肉がついているけどこの人は手に火傷があるから鍛冶師かなにかね。それが数人とあらドワーフ。確定じゃない。
限界に近づいたから一度魔法を切る。王都はここから遠いからかなり魔力を使ったわ。このまま収穫なしと言うのも嫌ね………でも王城って敏感な魔術師がいたらバレちゃうのよね。水晶はさすがに専門外だし………誰か来た?
「ホルティーナ、寝てるか?」
「寝てます」
うっかり声を出した私は馬鹿なんじゃないかしら。寝てますと返事を返して………もう。わけが分からなくなってる。熊男のせいよ。熊男のせいでなにかが狂い始めてる。なにが、かは分からない。でも、少しだけ家の雰囲気は変わり始めてる。
幸と不幸―――どちらの雰囲気かしら………熊男が遠ざかる音を聞いて少しだけ眠りましょう。まだ平穏でありますように。不快な闇が遠ざかりますように………願いを、こめて。




