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誤字・脱字を修正いたしました。27.4.12
熊男の言葉の意味がわからなかった。とりあえずどうなるか考えもせずに上半身の体重を支えていた左手で熊男の顔に一発なにかを当てたかった。しかし、なにもできずに終わって胸に頭突きしに行っただけ。
そのまま倒れこむように体重は全部前に行ってしまって私は悲鳴を………あげたかは覚えていないわ。驚いてもうわけが分からなかったのよっ。
ゴン。と言う鈍い音を片隅に聞きながら視界は真っ暗。なんだか左手は握られて手を伸ばされている。腰に置いてあった温もりはと言うと、今度は背中から頭。まるで私を守るような………………
「は、離れなさい!」
「ちょ、待て色々と動けん」
「う~ん。これはお邪魔と言う奴だね!アーテ、部屋でやりましょう?トッティ、ミミル、おいで。一緒に遊ぼ」
「え?でも………」
「パパとママと二人っきりにさせてあげようね~」
「テテラ!?」
ちょっ、待ちなさい!!まずこの熊男をどうにかしていってちょうだい!!なぜ私はこの熊男に抱えられている状況のまま放置されているの!?ア、アーテ!ちょっと助けて!
「ええと、ごめんなさい!」
「謝るなら助けていきなさい!」
て、え?え?なぜ足音が遠ざかる音がするの。待ってちょうだいアーテ。罪悪感があるならまず私を助け起こすのが謝罪でしょう!?トッティは?ミミルは?あれ、静かなのはなぜ?
パタン。
「え?え?ちょっ、なぜ?どうなってる!?」
「俺が抱えてる」
「そんな実況いらないわよ!」
「まあ、落ち着け」
「あなたから離れれば落ちつけれるわ」
だからっ―――………………びくともしない。押し退けようにもなんだか抱えられる腕に力が入った気がするわ。どうしてこうなったのよ………倒れこんだおかげで完全に体重は熊男の上。熊男が離してくれないと、私は上から退くこともできない。
足に力を入れても、熊男を跨いでいるせいで下半身だけ起き上がろうにもうまくできない………ああ、もういいわ。説得して、さっさと腕をなんとかしてもらいましょう。
「いつまでこのままでいさせる気なの?早く離れて」
「………痛みが引くまで、待て」
「怪我?それならこんな事してないで見せなさいよ」
「倒れて頭を打っただけだ。酷いものじゃない」
「だからって、なぜ私が抱き抱えられてままなのよ」
「………………なぜだろうな?」
私が聞いてるのよ。それと何?急に両手に力を入れるの止めてくれる?私は早く退きたいのよっ!それでもなぜか緩まることはない。本当にどうなってるの。離しなさいって!押しても押しても巻き付いてくる腕。しまいには私の体力が尽きてしまって動く気力がなくなってしまう。不覚だわ。
はぁ………幸い、耳を見られていないからよしとしましょうか。顔はローブの下とかならたまに見えるだろうから気にしなかったけど、耳は駄目よ。隠蔽の効果が消えてハーフエルフだとバレてしまうから………
「ホルティーナの体は柔らかいな」
「今すぐ離しなさい!なんだか危険を察知したわ!さあ離しなさい!!」
「もう少し」
「駄々っ子じゃないのだから離しなさいよ!それとも頭を打ったせいで何か思い出して混乱でもしてるの!?よかったわね早く離して!!」
「………ああ、確かこうんな風に………」
ぐうんと起き上がって両足を拐われたと思ったらいつの間にか私は床に下ろされた。手を捕まれている方は高くあげられて袖が捲れる。そして空いた手は私の唇をなぞったかと思うと―――首を撫でられた。絞め殺される!?
瞬時に理解した私はありったけの腕力で熊男の頬をひっぱたいた。毛むくじゃらのせいでそんなに痛みはなかったのか、それとも私の力をもってしても敵わないのか、熊男の顔は揺らがない。
目線が近い。そう思うとフードが取れているのではないかと錯覚して余計に焦った。首にある手は顎を撫で始めればなおさら。このままでは危ないと右手が動く。でも、また平手をやろうにも、撫でていたはずの彼の左手が私の右手を付かんでとめた。
「女を助けた気がする。薄暗い部屋で頭上からくる衝撃を守るために………」
「く、首を絞めようと思ったんじゃなかったの!?」
「違う。誰かを守ってた記憶」
その守ろうとしている対象の首を熊男は触るのね?危険だわ。しかも相手は女。危険しかないわ!落ちてくるものに守られても熊男と一緒にいるのも危険。二重の危険が目の前に起きるだなんてその女に同情を送るわよ。
でもそれを私で再現しなくていいわよ。言葉で表しなさい、言葉で。もういいから離しなさいよね。解決したのならもうじゅうぶんでしょう。
「ただいまーああ!?」
「あら、お帰り。早かったわね」
「今日は新鮮なのいっぱいだったん、………え?」
「バナル兄ちゃん、ロロ兄ちゃん重い!早く入って!」
「待て!いったん出ろ!!」
「わー!出て出て!!」
………………………………………………しまった!?




