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誤字・脱字を修正いたしました。27.4.12

 絶句。それは突然の事に言葉がでないこと。出てこないこと。間違ってはいないわ。


 テテラと一緒に朝食の下準備が終わったところでみながバラバラに下りてきた。私はその一人一人の体調を聞いて回って健康管理。いつもと変わらない。


 それから今日は女の子たちで料理をしてもらう事にして、男の子たちで洗濯をする事にした。熊男の警戒を疎かにするわけにはいかないので洗濯の方に私はついていく。


 少し大きめのたらいと石鹸をもって井戸の方へと歩いていけばそこにはあの熊男の背。無防備にも広い背を向けて蹲っている。たぶん屈んで顔の毛を削いでいるのでしょう。熊男がそこを使うなら私たちは魔法で水を出すことにする。一応声はかけておいたわ。


 それからざっとシーツと服を手早く洗って干せばちょうどよく呼ばれるのでたらいを片付けて家の中に入る。熊男はまだ屈んだまま。カトレーとイーグが背中に突進していったけど、気にしないようね。むしろ刃を使ってるから危ないって注意してるわ。


 今のところ、子どもたちに害を出そうという素振りはない―――いつ、仮面が外れるのかしら。とりあえずイーグとカトレーを回収して朝食の席につく。ちょっと焦げ目のついたパンはまた違う味を出して美味しいのよね。


「俺、パパ呼んでくる!」


「あっ!僕もー!!」


「バナル、お願い」


「はい」


 バナルってロロと一緒で面倒見がいいのよね………………アーテと一緒で十四。この中で一番背が高くて力のある男の子。色々な子どもをお世話したけど、ここまで子どもたちの世話を文句言わなかった子はいないわね。


 怒ったりすることはあるけど、ちゃんとやってはいけない理由とか付け加えてやらせないようにする。騎士になりたいって、言ってたわね………バナルの人生ですから私もそのお手伝いをするけど、騎士か………


「まだー?」


「もう少しよ。トッティは食いしん坊ね」


「だって、みんなが作る料理はおいしいもん!」


「そうね」


 わいわい楽しく作って一緒に食べる料理は美味しいわ。だけど仲間はずれは可哀想でしょう?そういえば「しないもん!」と頬を膨らませてちょっと怒る。可愛いわ。


 そして呼んできてくれたカトレーたちが戻ってくると………静かなのよね。熊がどうとかパパがどうとか、まだ二日しか経っていないのに。あんなになついて………いたのにね?


 すごく残念そうな顔で席についてため息。なにがどうなってるの。あら、バナル。貴方まで………微妙な顔ね。表現しづらいわ。苦笑い………?かしらね。


 よく分からないけど目を合わさずに席へ移動。ちゃんと熊男も連れてきたらしいんだけど………きっと、バナルの顔と同じ顔をしてると思うわ。それはここにいる全員が同じ。誰も音すら出さずに一点を見つめていた。


「………どうした?」


 私がどうしたか聞きたいわ。バナルたちと戻ってきた熊男。ええ、熊男が私たちの目線の先にいる。目線を集めている本人ですからね。ただ、見慣れないそれにこちらは誰も動かなくなってしまった。


 毛むくじゃらを刈り取った顔から覗く輪郭は顎のラインがしっかりとあり、少し高めの鼻筋にすっきりとした頬。眼はエメラルドグリーンのようで少し癖のある前髪から眠そうな眼が私たちを見ていた。




 はっきりと言ってしまえば………………あなた、誰?




 この問いは間違いではない。さっきまで毛むくじゃらで肌は見えなかったし、瞳の色さえも分からなかったのよ。だからみなが『熊』と呼んでいたのだし、熊だから珍しがった。それが少なくとも青年?に化けてみなさい。誰だって疑うわ。


「さあ………朝食にしましょう」


 ようやく取り戻した私が言うのもあれだけど、これはなかなかショックだわ。巨体で熊っぽく顔を覆うほどの毛むくじゃらに厚い筋肉………………服は王国騎士の上下黒い服に腰回りと胸当てと籠手当てと身軽な装備。


 いつも騒がしいイーグとモルフィーリでさえ、熊男の変身は驚いてるようね。固まって驚いたままよ。しかし、このままではせっかく作った朝食が冷めてしまうわ。そんなの駄目よ。


 手のひらを打って音を出せばなんとか動き出してくれたけど―――熊男の衝撃は大きいようね。ようやくカトレーを始めイーグとモルフィーリ。エーラまでもが熊男を確認しにいって騒ぎ始めてしまったわ。それは後にして座りなさい。


 それでも驚きは静まることなく、今日の朝食はずっと質問攻めと好奇心。今日の予定は町とお肉………熊男にくぎ付けのこの子達の采配をどうするか、悩みどころだわ。





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