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誤字・脱字を修正いたしました。27.4.12
激しく動揺してしまったけど、なんとか表に出さずに笑って誤魔化せた。頑張ったわ。今思えばこの『パパ』が呼ばれるなんて決まっていないじゃない。そうよ。大丈夫。
それから少ししたらみんな満足そうな顔で考えた名前を口々に声に出して、首を捻ったり、笑ったり。名前が似ているからとちょっと喧嘩してみたりする。まだまだしっくりくるものが決まらないみたいね。また悩み始めて字を書いていく。時々わからなければアーテたちに教わる。いつもの光景。
でも違うのはテーブルの角を陣取る大きな熊男。ゆっくりとした動作で単語を書いているようね。確認でもしているのかしら。ミミルには悪いけど、ちょっとここで大人しくしていてね?
ミミルはまだ慣れないみたいだし。いつの間にかトッティとお絵描きに集中してしまってる。これなら離れても大丈夫だわ。さて、熊男は何を書いたのかしら?なにか記憶を思い出させる単語でも出てくれればいいのだけど………
「思い出したもの、だいたい書けたかしら?」
「………今は、これだけ」
と、言っても―――けっこう書いてあるじゃない。上の方は生活用品ばかりね。それから食べ物………………ケーキ?ケーキなら貴族ぐらいしか口に出来ないわね。でも肉はなんだから安もの。果物は多いけど野菜類は少ない。あら、紅茶の類いも豊富ね。貴族の線が高そう。
後は………魔物の名前ね。でもこれと言って多くの魔物と戦ったわけじゃないのかしら?まあ、記憶ならインパクトがあるものしか覚えてないわよね。でもこの名前、王都であまりいないわ。辺境貴族?それにしてもあの動きは対魔術師用の動き………
生まれは辺境貴族、成人はしてるわよね。男だから成人して王都へ移動、部隊に入隊。動きを見込まれて狙撃隊に入ったか、魔術師を憎んでいるか………私の魔法をことごとく消そうとしたのなら後者ね。
後は―――っ、嫌ね。この二つを並べるなんて。つらつらと書いてある紙の最後になんてものを書いているのかしら。紙から顔を動かさずに視線だけで見るけど………やっぱり毛むくじゃらで分からない。とりあえず顔がこっちを向いているって事だけはわかるわ。
まさかね。『ハーフエルフ』に『アヴリーベ』が並ぶなんて………それに『学者』『騎士』『魔術師』『Sランカー』『貴族』おまけに『商人』や『宿』まで。これは聞いた方がいいわね。『ハーフエルフ』はどうせ教え込まれたと考えて、『アヴリーベ』に関してここまで書いてあれば気になる。
「ねえ、なぜ最後にこれを書いたの」
「最後………ハーフエルフのところか?」
「そうよ。生活用品、食べ物、魔物と来て種族かと思いきや職業柄。意味はあるんじゃない?」
「分からない。ホルティーナを見てたら思い付いた」
「私?」
頷くのね。そう、私を見てハーフエルフを思い出すのね。記憶喪失って嘘なんじゃないの?まず、書き出しが気持ち悪い。ハーフエルフから始まってなんでアヴリーベがくるの。このアヴリーベは私の名前であって孤児(あの子たち)の姓名。今ではアヴリーベは孤児であると意味が付いていて、この職業の順番は過去500年の間にアヴリーベの名をもらったあの子たちが功績をあげた順よ。
確かに孤児が名前を持つのはおかしいから目立つ。血の繋がりがない、面識がない子どもたちが数年に出てくるのですから。騒がれたり混乱もあった。私もそれを知っていて付けている。でも、あの子たちは賢いのよ。その混乱を避けるためにある言葉を作った。
『私たちは捨てられたが生き抜く力を身に付けて帰ってきた同胞たちの名だ。この名は生き抜いた証拠である』
それがなに?と思うでしょう。でもあの子たちはそれを掲げて王都でも難しいと称えられた魔法学校。騎士学校。商学学校。冒険学校。の四つの学校をそれぞれ得意分野で制覇してしまった。どうやら私の知恵で教えたものは王都の学力知識を貴族でさえも上回っていたみたい。おかげで数年も経てば『アヴリーベ』は天才の称号まで付けられたものになっている。
目立っている。目立っている事はわかってる。だけど過去500年の歴史を調べて『アヴリーベ』の過去を振り替えるのは難しいわ。別に『アヴリーベ』が歴史に残るほどの偉業をやってのけてる訳じゃないもの。あの順番はただ『アヴリーベ』がどこにでもある魔石解析に成功した、とか。総指揮官に任命されていた、とか。Sランカーになったとか、それぐらいしかやっていない。細々とした偉業をやってのけただけ。
最後の『宿』なんかあの子がちょっと可愛くて人気になった。それだけなのよ。その子はもう30歳だったかしら。王都から離れた普通の領地の宿で働いている。どうしてそれを知っているのかしらね?最近であり、それは王都まで広まるほどの噂ではないわ。細かく『宿』まで調べて、ここまで順番に並べといて偶然なんてもの、おかしいわよね?




