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誤字・脱字を修正いたしました。27.4.11
「どうして戻ってきたのかしら。まさか、道に迷ったなんて言わないわよね?」
刺々した口調になったのは今さらだと思う。部屋では距離を取っていたし、子どもたちを理由にこちらが一方的に追い出したのよ。熊男を必要としていないと、態度でもうわかっていると思う。
熊男と言えば………………先ほど別れた格好で佇んでいる。水をかけたから熊男もずぶ濡れ。余計に毛むくじゃらが水で押されて怖い事になっている。仕方ないから魔法で水を飛ばそうとするけど、それでも反応するから止めておいた。鍛えてる熊男なら風邪を引かないわ。たぶん。
「真っ直ぐ、行ったんだが」
「折り返してきたんでしょう?手荷物以外で忘れ物でもしたの?」
「いや、ない。ただ真っ直ぐ歩いていたら、戻ってきた」
は?そんな分けない。確かに私の結界に気づかれる前に、向こう側はいつの間にか反転させるループの魔法をかけている。でもそれは外側の話であって、一旦出てループで戻れる話ではない。結界から出てしまえばもう外の世界と変わらないわ。
いくら熊男の結界を破る宝石を身に付けていても、この前強化したのだから簡単に破られるものではないのよ。そうすれば私の魔法になんの意味もない。
陽が高く登っているところからそろそろお昼。朝に出ていってもらったから間は長いわね。木陰に隠れていて今出てくるタイミングはおかしい。そんな事をしていれば私だって気づくし、まず熊男が気持ち悪いわね。想像しただけで鳥肌が立つ。
仮に熊男か本当に歩いてたら勝手に戻ってきてならば?欠点はなにかしら。彼の指輪?あれはそこまで力は強くないはず。結界を破るだけだし、戻るに関して不必要。嘘を言っているにしても、ここに住みたい理由が分からない。子どもたちを狙ってる?それとも私………なわけはない。まさか―――…
「貴方、何を考えているの?」
「何を?………とりあえず逃げることを、考えている」
「その中に『生き延びる』って含まれるのかしら」
「当然だろう。今は―――記憶はないが俺は殺される。だが、生き抜かなければならない」
―――理由は、たぶんこれね。熊男は記憶がないけど強く願ってるんだわ。『生きたい』と。記憶をなくしても強く願えるほど、強く。
そう考えると帰ってくる意味も分かる。つじつまが合う。この結界の条件は『生きたいと願う者が入れる』仕組み………子どもでも稀に強く思う願いなのに。大の大人がそれを願うなんて未練がましいのね。
大人が願うのは欲が強すぎる。でもその大人は切に『生きたい』と願う者はいない。だからここは生まれて恵まれず、それでも『生きたい』と願う子どもが集まる。
この熊男にそれが見合うものがあると言うの?切に『生きたい』と願う思いが?記憶をなくしているから純粋に願えるかもしれない。どうしようかしら………
イーグル、モルフィーリ、カトレーはもう熊男になついていると見てもいいわね。アーテ、バナル、ロロ、テテラ………マティクも気にしないでしょう。むしろ警戒してくれている。問題は臆病なエーラ。泣き虫のトッティ。まだ怖さが抜けていないミミル。
ミミルやトッティたちを泣かせるくらいなら、私が盾になる―――だが、まだ決められない。こんな事でぐだぐだしてるわけにはいかないのにっ。あーもうっ!
「ここに居座るには、貴方は子どもたちを説得しなくてはならないわ。もう少ししたらお昼よ。貴方がここに住まうと言うなら食べ終わってから説得して」
「………いいのか?」
「いい返事が返ってくると思わないで。私は認めていない。いいからとっととその濡れ鼠をなんとかしなさい」
井戸の前に大きなたらいがあるから、そこにお湯をはっていく。まあ、熊男では小さすぎるでしょうけど案内はしたんだから後は適当になんかしてて。私は子どもたちにこの事を説明してくるわ。
後ろからお礼が聞こえるけど、受け取ってやらないわよ。熊男がどうなるのかなんてしらないし。魔法を使えば掴みかかってくるのだから乾かせもしない。私が濡らした責任とか思ったけど、風邪をひかれて動けなくなるのも嫌だし。
家に戻ればみなで暖かいスープとパンを並べている最中だった。食事の質も冬に近くなると蓄えが少なくなって出すものがなくなる。やっぱり近々町行き決定ね。
「食べながらでいいわ。聞いてくれる?」




