4.
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街道を歩く。
森を切り拓いて作られた道は土ながらも固く踏みしめられていて、人通りが多いことを伺わせた。
道の端を歩き、少しでも木陰に入る。日差しが強かった。なるべくベラルドに涼しいところを歩かせたく、ナターシャは手を引いた。だが、ベラルドはナターシャこそを木の陰に押し込む。
「もう……変なところで頑固なんですから」
ナターシャが頬を膨らませてみせるが、ベラルドは目線さえくれぬ。それがつまらなく、しかし、この男の気遣いを自身が受けていることが少し誇らしかった。
街道を歩くのはナターシャたちだけではなく、旅人や行商人の行き来が特に目立ち、彼らが道端で言葉や金銭を交わしているのが見えた。
「どうだい、光の神の神官様。何か見ていかないか?」
目ざとい行商人がナターシャに気づいて呼び込む。ナターシャは外向きの笑顔を浮かべながら近寄ろうとしたところで、ぐいと襟首を引かれた。
それがベラルドによるものだと理解するのと同時に、背後から格子のついた二頭立ての馬車がナターシャとベラルドの眼前をそれなりの速度で過ぎ去っていった。
「あ、ありがとうございます」
ナターシャの礼に、ベラルドはほんの一瞬だけ目を動かした気がした。行商人が悪いときに声をかけてしまったことを詫びながら、
「ありゃ、罪人の護送馬車だな」
と言った。ナターシャは少し値の張る干し葡萄の小袋を買い、「護送馬車?」と聞いた。
「ああ、何か大物でも捕まえたんじゃないかね。領都へ罪人を連れて行く時に出される馬車さ」
行商人は代金を受け取り、もう一袋を「オマケだ」と押し付けてよこす。
「ありがとうございます」
それをナターシャは素直に受け取り、その場を辞した。
再び、ベラルドと連れ立って木陰を歩く。ナターシャは先ほど買った干し葡萄をひとつまみベラルドの口に運んだ。
干し葡萄がベラルドの唇に当たると、初めてそれに気づいたかのようにしてわずかに開く。ナターシャはそこに指を押し入れた。わずかに男の唾液が付く。
「美味しいですか?」
ベラルドはただ咀嚼をした。ややもして喉が動く。ナターシャはそれを見て満足げに頷き、自身もまた干し葡萄を口にした。
「あら」
と、今更ながらベラルドの唾液が付いたままであったことに気づき、ナターシャははしたなくもその指を舐めて見せた。ベラルドへ、見せつけるようにして。
「……もう、見てもくれないんですから」
しかし、案の定というべき結果にナターシャはつまらなそうに干し葡萄をさらに頬張った。
道行きは、穏やかだった。
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