表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
砥石の聖女―その聖剣は命で輝く―  作者: 無屁吉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/6

4.

 ■


 街道を歩く。

 森を切り拓いて作られた道は土ながらも固く踏みしめられていて、人通りが多いことを伺わせた。

 道の端を歩き、少しでも木陰に入る。日差しが強かった。なるべくベラルドに涼しいところを歩かせたく、ナターシャは手を引いた。だが、ベラルドはナターシャこそを木の陰に押し込む。


「もう……変なところで頑固なんですから」


 ナターシャが頬を膨らませてみせるが、ベラルドは目線さえくれぬ。それがつまらなく、しかし、この男の気遣いを自身が受けていることが少し誇らしかった。

 街道を歩くのはナターシャたちだけではなく、旅人や行商人の行き来が特に目立ち、彼らが道端で言葉や金銭を交わしているのが見えた。


「どうだい、光の神の神官様。何か見ていかないか?」


 目ざとい行商人がナターシャに気づいて呼び込む。ナターシャは外向きの笑顔を浮かべながら近寄ろうとしたところで、ぐいと襟首を引かれた。

 それがベラルドによるものだと理解するのと同時に、背後から格子のついた二頭立ての馬車がナターシャとベラルドの眼前をそれなりの速度で過ぎ去っていった。


「あ、ありがとうございます」


 ナターシャの礼に、ベラルドはほんの一瞬だけ目を動かした気がした。行商人が悪いときに声をかけてしまったことを詫びながら、


「ありゃ、罪人の護送馬車だな」


 と言った。ナターシャは少し値の張る干し葡萄の小袋を買い、「護送馬車?」と聞いた。


「ああ、何か大物でも捕まえたんじゃないかね。領都へ罪人を連れて行く時に出される馬車さ」


 行商人は代金を受け取り、もう一袋を「オマケだ」と押し付けてよこす。


「ありがとうございます」


 それをナターシャは素直に受け取り、その場を辞した。

 再び、ベラルドと連れ立って木陰を歩く。ナターシャは先ほど買った干し葡萄をひとつまみベラルドの口に運んだ。

 干し葡萄がベラルドの唇に当たると、初めてそれに気づいたかのようにしてわずかに開く。ナターシャはそこに指を押し入れた。わずかに男の唾液が付く。


「美味しいですか?」


 ベラルドはただ咀嚼をした。ややもして喉が動く。ナターシャはそれを見て満足げに頷き、自身もまた干し葡萄を口にした。


「あら」


 と、今更ながらベラルドの唾液が付いたままであったことに気づき、ナターシャははしたなくもその指を舐めて見せた。ベラルドへ、見せつけるようにして。


「……もう、見てもくれないんですから」


 しかし、案の定というべき結果にナターシャはつまらなそうに干し葡萄をさらに頬張った。

 道行きは、穏やかだった。


お読みいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけたら、ブックマークや★ポチをください。寂しいので励みになります(´・ω・`)


あと感想なんかもお気軽に。絡まれるの好きです(´・ω・`)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ